最推しの僕の妻こそが、やっぱり最強でした。
本編完結まであと4話!
「ハ、ハル様!?」
「攻撃を防ぐのは、僕の役目だ」
サンドラに駆け寄った僕は、マリオンの神速の突きを防いでみせた。
僕はあの魔獣フェアゲルトゥングスヴァッフェの【多薬室砲】を、ほぼノーダメージで防御したんだ。いくら攻撃力がカンストしていても、僕の相棒は貫けないよ。
「追撃開始。目標、キャラクター『ハロルド』」
「ほらほら、そんな攻撃じゃ僕を倒せないよ!」
マリオンが僕に狙いを定め、次々と攻撃を繰り出してくるけど、それを全て弾き、躱し、逸らす。
確かにすごい攻撃ではあるけれど、それはサンドラだって同じだ。
なら、彼女の攻撃すらも防御できる僕に、マリオンの攻撃が通用するはずがない。
「ハル様、お下がりください。この者は私が」
「もちろんサンドラに倒してもらうつもりだよ。でも、君を守るのはこの僕だから」
「ですが……」
「君が最強の剣なら、僕は最強の盾。二人揃って『矛盾』だって、そう言ったよね」
気遣って下がらせようとするサンドラに、僕はおどけながら拒否する。
君が僕を大切に想ってくれているように、僕だって君のことが誰よりも大切なんだ。
そんな僕の気持ちを理解したのだろう。
サンドラはそれ以上何も言わず、マリオンを見据えた。
「ふふ……では、どうかこの私をお守りくださいませ。私はあの者を、見事屠ってみせましょう」
「期待しているよ。それまで、この僕が絶対に君を守るから」
「はい!」
サンドラは真紅の瞳を爛々と輝かせ、犬歯を剥き出しにして獰猛な笑みを浮かべる。
次の瞬間。
「ふふ! 先程の威勢はどうしたのですか? 反応が少しずつ遅れはじめましたよ?」
「く……っ!」
サンドラのすさまじい連撃に、マリオンは防戦一方になる。
とはいえ、攻撃に耐えながら何かを狙っているようだ。
「ふっ」
「隙ありです」
サンドラが僅かに息を吐いた隙を狙って、マリオンが彼女の脇腹を目がけて打ち払いを仕掛けた。
でも。
「残念でした」
「チッ! 邪魔な!」
『漆黒盾キャスパリーグ』に防がれ、マリオンは顔をしかめて舌打ちをする。
どんな手を使おうと、僕には通用しないよ。
それに、何度も攻撃を防いだことで僕の目も慣れてきた。
ここから先、ただの一撃だって食らうもんか。
「『エンゲージ・ハザード』デハ、二対一デノ戦イハ認メラレテオリマセン」
「嘘つくなよ。バトルシステムは最大四人のパーティー戦じゃないか」
マリオンの中のテミスが抗議してくるけど、的外れもいいところだよ。
それだけコイツも、追い込まれているってことなんだろうけどね。
「あはは! 僕とサンドラに戦いを挑むからだよ!」
「ふふ! そのとおりです!」
さらに攻撃が加速したサンドラは、誰も止めることができない。
身体を少しずつ斬り刻まれ、マリオンが白い素肌から血を流す。
「私は……私はこの世界で、最強の存在になったのではないのですか!? なのにどうして!」
「……理解不能」
マリオンとテミスが交互にしゃべるものだから、まるで一人で漫才をしているみたいだよ。
全然面白くないけどね……って。
「私もおりますよ」
「っ!? ああああああああああああああッッッ!?」
いつの間にかマリオンの背後をついたモニカが、ダガーナイフをその肩に突き立てた。
そうだよね。君が僕達の戦いを、指を咥えて見ているはずがないよね。
「コノ……出来損ナイノ分際デッッッ!」
ここに来て初めて怒りを見せるテミス。
AIに感情なんてあるんだなー、と呑気なことを考えてみたけれど、もはや最初の余裕は一切ないよね。
「ああああああああああああああああッッッ! 【多薬室砲】!」
「「「っ!?」」」
マリオンが大きく口を開き、高出力のエネルギーを集める。
いやいやいやいや、いくらテミスが乗り移っているからって、元は人間だろ!? なんで魔獣フェアゲルトゥングスヴァッフェのスキルが使えるんだよ!
「サンドラ! モニカ!」
「「はい!」」
二人が背後に隠れ、僕は『漆黒盾キャスパリーグ』をマリオンに向けてガキンッ! と歯を食いしばった。
そして。
「ぐう……う……っ」
放たれた【多薬室砲】を受け止めるも、徐々に押し込まれる。
クソ……ッ! あの時はチャージが途中で不完全だったけど、さすがに今回はフルパワーか……っ。
「ハル……ボクは負けない! 絶対に負けてやるもんかッッッ!」
「キャス……そうだよな! 僕達は負けない! 負けてたまるかあああああああああああああッッッ!」
「ッ!? ナ……ン……ダ、ト……?」
さすがのテミスも驚きを隠せないようで、【多薬室砲】を放った体勢のまま目を見開いている。
いや、僕も驚いているよ。まさか本当に、『エンゲージ・ハザード』最大火力の【多薬室砲】を、見事に防ぎ切ってみせたんだから。
「……冥土の土産です。私の能力、お見せして差し上げましょう。【紫電】」
「っ!? ああああああああああああああああッッッ!?」
モニカが最速最小の動きで、雷を纏ったダガーナイフでマリオンの両腕を斬り落とした。
「さあ、滅しなさい。【竜の鉄槌】」
上段に構えていたサンドラが地面を蹴って一気に肉薄すると、『バルムンク』をマリオンの頭上に叩き落とす。
そのあまりの速度に、威力に、マリオンは原型を留めることなく、文字どおり消滅した。
お読みいただき、ありがとうございました!
「『無能の悪童王子』は引退したい」本編完結まで、残りあと3話!
この後20時の更新と、明日の12時頃、そして20時頃の更新が最終回ですので、どうぞお見逃しなく!
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