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王子達の戦い ※カーディス=ウェル=デハウバルズ視点

■カーディス=ウェル=デハウバルズ視点


「チ……ッ! 厄介な!」

「グウオオオアアアアアアアアアアアアアッッッ!」


 唸り声を上げる暴君竜ア=ドライグの巨大な爪による一撃を(かわ)し、私は舌打ちする。

 いくら私がアンデッドと相性が良い光属性の能力を持ち合わせているとはいえ、やはり伝説の竜だけあってその全てが規格外だった。


 その体躯も、破壊力も、狂暴性も。


 とはいえ、長兄であるこの私が弱音を見せるわけにはいかない。

 私は心を奮い立たせ、『覇王槍ロンゴミニアト』の切っ先を向けてア=ドライグに突撃した。


 だが。


「……骨のみのアンデッドとは、相性が悪い」

「グオオオオオオオオオオオオオッッッ!」


 私の一撃は運悪く骨を僅かに削るのみで、まともにダメージを与えることができなかった。

 ア=ドライグの核を狙えればいいが、骨が邪魔をして届きそうにない。


 なのでやるべきことは、まずは外骨格を破壊して核を露出させること。


「それにしても……厄介だね」

「チクショウ! 堅ってえ骨だなオイ!」


 もう一体の竜、殲滅竜グウィバーと相対するラファエルがかぶりを振り、オーウェンが叫ぶ。

 やはり向こうも手間取っているみたいだ。


「くきき……いい加減諦めて、国王陛下に謝罪してはいかがですかな? 今ならハロルド殿下のお命だけで、皆様はお許しになられると思いますが」

「馬鹿も休み休み言え。私達は誰一人としてエイバル王に従うつもりもないし、下げる頭も持ち合わせてはおらん」

「そうですか。残念ですねえ……代わり(・・・)を用意するのは苦労するのですが」

「その結果が、ウィルフレッドの暗殺とオーウェンの第四王子任命というわけか」


 どんな目的があるのかは分からないが、エイバル王は私達を争わせて第四王子を次の王にすることに躍起になっている。

 必要なのは王子の肩書を持つ者であって、それが何者であるかなど問わないのだな。このバースという男の言葉を聞いて、よく分かった。


「だが、それはこちらも同じこと。私達もまた、エイバル王の代わり(・・・)を決めるための争いをしているのだから」

「残念ながら皆様では国王陛下の代わりなど務まりませんよ。あの御方がどれほどの傑物であるか、ご存知ないのです」


 この男……やけにエイバル王を持ち上げるではないか。

 私の目から見て、少なくとも政治能力は皆無。人格は歴代の王の中でも最低だろう。


 ……いや、だからこそ評価しているのか。

 この男もまた、人間の(くず)であるがゆえに。


 ――キン。


「おっと。この私を狙おうとしても無駄ですよ。こうして結界を張っておりますし、いざとなれば二匹の竜が守ってくれますので」

「ほう。ならば、この竜の成れの果てを破壊することが先決か」


 先程から様子を見る限り、バース自身が攻撃を仕掛けてくることはなさそうだ。

 なら、一応は警戒をしつつも、破壊竜ア=ドライグに集中するとしよう。


 ただ……無傷というわけにはいかぬか。


「さあ来い。このカーディス=ウェル=デハウバルズが、貴様を再び黄泉の国に帰してやろう」

「グオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」


 槍の切っ先を向ける私に、ア=ドライグが咆哮(ほうこう)した。

 その威圧に思わず膝をつきそうになってしまうが、私は歯を食いしばって(こら)える。


 そして。


「っ! ここだ! 【双神破】ッッッ!」


 襲いかかるア=ドライグの核を覆う骨目がけ、二本の光の筋が走る。

 一本は見事骨に命中し、砕けてほんの僅かな隙間が生まれ、核の一部が露わになった。


 そこへ……残るもう一本の光の筋が、貫いた。


「ッ!? グギエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!?」


 ア=ドライグは悲鳴を上げてその場で地面に崩れ落ちる。

 しばらくすると、ア=ドライグは砂となって消滅した。


 ただし。


「……これ以上は無理か」


 【双神破】を放った際に受けたア=ドライグの攻撃により、私の腹の左側が(えぐ)れている。

 どうやら私は、ここまでのようだ……って。


「せ、聖女様!?」

「静かにしてください」


 王宮の入り口で魔獣と対峙していたはずの聖女が現れ、傷の治療をしてくれた。

 その回復魔法の効果はすさまじいもので、あっという間に治ってしまう。


「フン! 骨になった竜の分際で生意気だわ!」

「参るッッッ!」


 カペティエン王国の姫君と聖女の護衛を務める聖騎士が、残る一体のグウィバーに攻撃を放った。

 そこにラファエルとオーウェンも加勢し。


「ガ……グ……」


 先程までの苦戦が嘘のように、グウィバーはその場で崩れ落ちて沈黙する。


「うふふ、ここで蘇ってもらっても困りますので……【キリエ・エレイソン】」


 聖女の放つ光に包まれた二体の竜はあっという間に浄化され、その存在自体をこの世界から抹消された。

 同じ光属性の能力であるはずなのに、その威力は歴然の差だ。


「す、すまない……」

「うふふ、お礼は後ですよ。それよりも、早くハル様と合流しましょう」


 謝罪をしようとする私の言葉を遮り、聖女が告げる。

 ああ、なるほど……聖女もまた、ハロルドを想っているのだな。


 その気持ち、私にも分かる。

 私もまた、叶わぬ恋(・・・・)をしているのだから。


 謁見の間へ向けて駆ける三人。

 私はそんな彼女の背中を見て苦笑しつつ、ラファエル、オーウェンとともにその後を……おっと、すっかり忘れていたな。


「っ!? が……ぐ……っ」

「せめてもの情けだ。その槍はくれてやる」


 私は『覇王槍ロンゴミニアト』を投げてバースの背中を貫き、ハロルド達が戦っているであろう謁見の間へと急いだ。

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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