表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

242/333

カジノで大勝ちしました。

「マ、マジかよ……」


 スロットのドラムは、見事三つとも『7』で停止していた。


「どうだい、僕の動体視力もなかなかのものだろ?」


 なんて言ってみたものの、そんなもので『7』を三つ揃えるなんてできるわけがないじゃないか。

 実際、『エンハザ』のスロットゲームは全て運任せでしかない。なら、このスロットだって運要素でしか大当たりは出現しないに決まっている。


 しかも、天文学的な低確率で。


「ほらほら、次々いくぞ」

「お、おおおおおー……」


 ドラムを回しては表示される三つの『7』に、オーウェンはポカン、と口を開け、変な声を漏らして眺めるばかり。

 でも、僕の連れ達はむしろ当然と言わんばかりにドヤ顔しているけどね。


「お、おい! あれを見ろ!」

「おおおおお! 私はスロットでスリーセブンが出ているのを初めてみたぞ!」


 いつの間にかギャラリーが増え、僕達の後ろには大勢のカジノ客が見学していた。

 その中には、カジノスタッフだけでなくオーランド男爵の姿も。


「ええと、これで何枚になるのかな?」

「今で大当たりは五十回を超えましたので、残り半分です」

「そっか」


 モニカの答えを聞き、僕はまたレバーを引いてはボタンを押す。

 だけど僕、一億枚程度(・・・・・)で満足するつもりはないんだよね。


 どうせなら、このカジノのコインを根こそぎ奪ってやらないと。


 山のように積み上げられる、コインの入った箱。

 置き場所すらなくなり、そろそろ百回目の大当たりが近づいてきたところで。


「お楽しみにのところ失礼します。ハロルド殿下……少々確認をさせていただいてもよろしいですかな?」


 嘘くさい笑顔を貼りつけ、オーランド男爵が声をかけてきた。

 うんうん、そろそろだと思っていたよ。


「確認? 何ですかそれは」

「大したことではありません。ただ、残念なことに、当カジノでもイカサマをするような(やから)もおりまして、殿下に限らず念のためお調べをさせていただいているのですよ」

「はあ……」


 僕は気の抜けた返事をし、促されるままにゆっくりと席を立つ。


「ご協力いただき、ありがとうございます。それでは失礼して……おい」

「「「はっ!」」」


 オーランド男爵の声がけで、ホールスタッフの三人がそれぞれスロット台と僕の身体を調べ始める。

 別に構わないけど、余計なところは触らないでいただきたい。


「……私のハル様を疑うとは、いい度胸ですね」

「っ!?」


 気づけばサンドラが真紅の瞳を輝かせ、オーランド男爵の首元に『バルムンク』を突きつけていた。

 いや、ここに来る前に甲冑と帯剣をお願いしたけど、それを使うのはまだ早いよ。


「サンドラ落ち着いて。それで、これはまだ続くんですか?」

「オーナー、確認しましたがどこにも不審な点は見受けられませんでした」

「……これは失礼しました。引き続き、スロットをお楽しみください」

「そうさせてもらうよ」


 笑顔を見せつつも、不機嫌な様子が隠し切れないオーランド男爵。

 ほら、その証拠にこめかみに青筋が浮かんでいるよ。


 ということで、僕は引き続きスロットを再開する。

 やっぱり僕の台だけ何度やっても大当たりが出現し、止まることを知らない。


 既に『聖者水瓶アクエリアス』を手に入れるために必要な、一億枚のコインを集めた後でも。


「な、なあ兄貴……もういいんじゃ……」

「何言ってるんだよ。僕はこのカジノにある十億枚のコイン、全部手に入れるつもりなんだぞ?」

「はあ!?」


 当然じゃないか。僕も『エンハザ』のとおり、エイバル王とは関係なくただカジノを運営しているだけだったら、こんなことをしなかったよ。

 でも、ハーディング家……アリエスから『聖者水瓶アクエリアス』を盗み、それを餌にして僕達をおびき出し、『貧民街を救え!』のシナリオに強制的に介入させようとしたんだ。


 なら、その報復を受けたからって、何も文句は言えないよね。


「ほら、そんなところに突っ立ってないで、コインを箱に詰めろよ」

「お、おう……」


 オーウェンは首を傾げながら、コインを箱に入れて積み上げる。

 巨大な山と化したコインの入った箱は、なかなか壮観だなあ。


 それからも、僕はひたすらスロットを回してはコインを出し続ける。

 ここまでくると、カジノにいる全ての者が声を失っていた。


 そして。


「ふう……」


 僕は大きく息を吐き、額の汗を(ぬぐ)う仕草をする。

 目の前にある、十億枚のコインの山を見つめて。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼8/19に書籍第1巻が発売します! よろしくお願いします!▼

【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ