表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

230/333

主人公(二人目)に勝利したと思ったら、乱入者が現れました。

「あれ? オーウェン、お前武器は?」


 訓練場に来て『漆黒盾キャスパリーグ』を構える僕は、無防備で素手のオーウェンに尋ねる。

 腹パン肉食女子のリリアナならともかく、オーウェンに同じ芸当は無理だろうからなあ。そもそも、『エンハザ』でも主人公にはそんな素手スキルないし。


「心配すんなって。ちゃんと用意してあるよ。マリオン」

「はい」


 (そば)に控えていたマリオンが、一本の……ええー……。

 よりによってオーウェンが選んだ武器は、UR武器ではなくSSRのネタ武器、『唯我独尊アイアンバット』だった。


 『エンハザ』にはネタ武器がいくつか用意されており、この『唯我独尊アイアンバット』もその一つ。

 見た目はまんま金属バットで、物理攻撃力はSSR武器中トップクラスの二〇〇〇〇。

 とはいえ、ウィルフレッドが使っていた『英雄大剣カレトヴルッフ』が攻撃力三〇〇〇〇であることを考えると、かなり見劣りする。


 ただし、『唯我独尊アイアンバット』にはクリティカル率十パーセントを誇り、十発に一発は『英雄大剣カレトヴルッフ』の攻撃力を上回る計算だ。

 そういう意味では警戒すべき武器ではあるんだけど、ネタ武器だけに緊張感が薄れる。狙ってやってるのかな?


「よっしゃ! んじゃ、始めるか! マリオン、開始の合図を頼んだぞ!」

「かしこまりました」


 『唯我独尊アイアンバット』を振り回し、ウォーミングアップも充分なオーウェンは、マリオンに指示を出す。

 うーん……こんなことなら、サンドラ達を寄宿舎に帰さずに、残っていてもらえばよかったなあ……。


 さっきのキャスの忠告もあるし、マリオンの奴はきっと何かを仕掛けてくるだろうし。


「では……はじめ!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラァッッッ!」


 開始の合図とともに、オーウェンの奴がまるでヤンキーのようにオラつきながらバットを振り回す。

 コイツ、王立学院の制服なんかより、学ランとか特攻服のほうが似合うんじゃないだろうか。


 まあでも。


「よっと」

「チッ! やっぱりあっさり防ぎやがるか……」


 考えなしにバットで殴りかかるオーウェンの攻撃を、僕は簡単に防御した。

 というか、力任せに振り回すだけだから軌道は単純だし、むしろ隙だらけだし、防げない理由はない。


 ただし。


「っ!? おおー……」

「オラオラオラオラァッッッ!」


 十発に一発だけくるクリティカルヒットは、なかなかの威力だな。

 まさに一撃必殺のまぐれ当たり特化型の戦闘スタイルだね。こういう一芸キャラ、嫌いじゃないよ。


「だからって、負けるつもりもないけどね!」

「へッ! そうこねえとな!」


 それから僕は、ひたすらオーウェンの攻撃を受け続ける。

 オーウェンも色々と工夫して、普通じゃ考えないような突拍子な攻撃を仕掛けてくるけど、それだって対処してみせた。


 そして、一時間後。


「ハア……ハア……クソッ……全然当たんねえ……っ」

「ふう……」


 (ひざまず)き、肩で息をして汗を拭うオーウェンを見て、僕は軽く息を吐く。

 なかなかどうして、オーウェンのスタミナもヒロイン達に引けを取らないよ。


 もちろん主人公っていうこともあるけど、ウィルフレッドと違い、オーウェンは王立学院に入ってから鍛え始めたんだから、かなりの成長速度だってことが(うかが)える。

 加えて、貧民街育ちということもあって常識に囚われない発想といい、このまま行けば立派な主人公になれるだろうね。


 まあ、だからといって僕も負けてやるつもりはないけど。


「どうする? まだやるか?」

「へ……っ、当然! ……って、言いてえところだけど」


 オーウェンはニカッ、と笑顔を見せたかと思うと。


「あー……これ以上は無理。俺の負けだ」


 地面に大の字になって倒れ、オーウェンは敗北を認めた。


「いや、なかなか楽しかったよ。また手合わせしたいね」

「冗談だろ!? コッチはこんだけ心を折られたんだぜ!?」


 失礼な。僕はただ攻撃を防いだだけなのに。

 まあでも、以前にカルラと一緒に訓練をした時も、似たようなことを言っていたかも。


「だけど、やっぱ兄貴はすげえや。俺も貧民街じゃ名が知れてたけど、全然相手にならねえ」

「まさか。言っとくけど、僕よりもサンドラのほうが強いからね」

「あー……師匠は納得だな」


 僕も地面に腰を下ろし、オーウェンと笑い合う。

 お互いに『エンゲージ・ハザード』の主人公と噛ませ犬って立場だけど、こんな関係を築けたっていうのは、これも運命を変えたってことでいいのかな? いいんだろうな……って。


「ハル」

「分かってる」


 キャスの一言で、僕はゆっくりと立ち上がった。

 気づけばマリオンも『戦斧スカイドライヴ』を構え、僕……ではなく、訓練場の中央を見据えていた。


「来るよ!」

「ああ!」


 突然、訓練場が巨大な影に覆われる。

 僕達は、上を見上げると。


 ――炎のように赤いニワトリの魔獣が、大空から見下ろしていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼8/19に書籍第1巻が発売します! よろしくお願いします!▼

【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ