主人公(二人目)に勝利したと思ったら、乱入者が現れました。
「あれ? オーウェン、お前武器は?」
訓練場に来て『漆黒盾キャスパリーグ』を構える僕は、無防備で素手のオーウェンに尋ねる。
腹パン肉食女子のリリアナならともかく、オーウェンに同じ芸当は無理だろうからなあ。そもそも、『エンハザ』でも主人公にはそんな素手スキルないし。
「心配すんなって。ちゃんと用意してあるよ。マリオン」
「はい」
傍に控えていたマリオンが、一本の……ええー……。
よりによってオーウェンが選んだ武器は、UR武器ではなくSSRのネタ武器、『唯我独尊アイアンバット』だった。
『エンハザ』にはネタ武器がいくつか用意されており、この『唯我独尊アイアンバット』もその一つ。
見た目はまんま金属バットで、物理攻撃力はSSR武器中トップクラスの二〇〇〇〇。
とはいえ、ウィルフレッドが使っていた『英雄大剣カレトヴルッフ』が攻撃力三〇〇〇〇であることを考えると、かなり見劣りする。
ただし、『唯我独尊アイアンバット』にはクリティカル率十パーセントを誇り、十発に一発は『英雄大剣カレトヴルッフ』の攻撃力を上回る計算だ。
そういう意味では警戒すべき武器ではあるんだけど、ネタ武器だけに緊張感が薄れる。狙ってやってるのかな?
「よっしゃ! んじゃ、始めるか! マリオン、開始の合図を頼んだぞ!」
「かしこまりました」
『唯我独尊アイアンバット』を振り回し、ウォーミングアップも充分なオーウェンは、マリオンに指示を出す。
うーん……こんなことなら、サンドラ達を寄宿舎に帰さずに、残っていてもらえばよかったなあ……。
さっきのキャスの忠告もあるし、マリオンの奴はきっと何かを仕掛けてくるだろうし。
「では……はじめ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラァッッッ!」
開始の合図とともに、オーウェンの奴がまるでヤンキーのようにオラつきながらバットを振り回す。
コイツ、王立学院の制服なんかより、学ランとか特攻服のほうが似合うんじゃないだろうか。
まあでも。
「よっと」
「チッ! やっぱりあっさり防ぎやがるか……」
考えなしにバットで殴りかかるオーウェンの攻撃を、僕は簡単に防御した。
というか、力任せに振り回すだけだから軌道は単純だし、むしろ隙だらけだし、防げない理由はない。
ただし。
「っ!? おおー……」
「オラオラオラオラァッッッ!」
十発に一発だけくるクリティカルヒットは、なかなかの威力だな。
まさに一撃必殺のまぐれ当たり特化型の戦闘スタイルだね。こういう一芸キャラ、嫌いじゃないよ。
「だからって、負けるつもりもないけどね!」
「へッ! そうこねえとな!」
それから僕は、ひたすらオーウェンの攻撃を受け続ける。
オーウェンも色々と工夫して、普通じゃ考えないような突拍子な攻撃を仕掛けてくるけど、それだって対処してみせた。
そして、一時間後。
「ハア……ハア……クソッ……全然当たんねえ……っ」
「ふう……」
跪き、肩で息をして汗を拭うオーウェンを見て、僕は軽く息を吐く。
なかなかどうして、オーウェンのスタミナもヒロイン達に引けを取らないよ。
もちろん主人公っていうこともあるけど、ウィルフレッドと違い、オーウェンは王立学院に入ってから鍛え始めたんだから、かなりの成長速度だってことが窺える。
加えて、貧民街育ちということもあって常識に囚われない発想といい、このまま行けば立派な主人公になれるだろうね。
まあ、だからといって僕も負けてやるつもりはないけど。
「どうする? まだやるか?」
「へ……っ、当然! ……って、言いてえところだけど」
オーウェンはニカッ、と笑顔を見せたかと思うと。
「あー……これ以上は無理。俺の負けだ」
地面に大の字になって倒れ、オーウェンは敗北を認めた。
「いや、なかなか楽しかったよ。また手合わせしたいね」
「冗談だろ!? コッチはこんだけ心を折られたんだぜ!?」
失礼な。僕はただ攻撃を防いだだけなのに。
まあでも、以前にカルラと一緒に訓練をした時も、似たようなことを言っていたかも。
「だけど、やっぱ兄貴はすげえや。俺も貧民街じゃ名が知れてたけど、全然相手にならねえ」
「まさか。言っとくけど、僕よりもサンドラのほうが強いからね」
「あー……師匠は納得だな」
僕も地面に腰を下ろし、オーウェンと笑い合う。
お互いに『エンゲージ・ハザード』の主人公と噛ませ犬って立場だけど、こんな関係を築けたっていうのは、これも運命を変えたってことでいいのかな? いいんだろうな……って。
「ハル」
「分かってる」
キャスの一言で、僕はゆっくりと立ち上がった。
気づけばマリオンも『戦斧スカイドライヴ』を構え、僕……ではなく、訓練場の中央を見据えていた。
「来るよ!」
「ああ!」
突然、訓練場が巨大な影に覆われる。
僕達は、上を見上げると。
――炎のように赤いニワトリの魔獣が、大空から見下ろしていた。
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