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主人公(二人目)に勝負を挑まれました。

「ふああ……」


 王都に戻ってから一週間が経ち、僕は授業を受けながら欠伸(あくび)をした。

 どうやらまだ疲れが癒えていないみたいで、最近はどれだけ眠っても眠くなるんだよねえ……。


「ふふ……よろしければ、また私の膝をお使いになりますか?」

「いやいや、授業中にそれは駄目だよ」


 帰りの馬車の中で膝枕をしてもらって以来、サンドラは事あるごとに勧めてくるようになった。

 いや、もちろん望むところではあるけれど、さすがに時と場所は選ぶべきだよね。


「おや? ハロルド殿下はお嬢様のお膝よりも、私の胸をご所望ですか?」

「なるほど、モニカは今すぐ人生を終えたいようですね」


 サンドラが瞳を紅く輝かせ、口の端を吊り上げる。

 本当にモニカも懲りないなあ……そのうち、真面目にサンドラに息の根を止められそう。


 ちなみに、ライラには寄宿舎でお留守番……もとい、監視をお願いしている。

 オーウェンの取り計らいでマクラーレンの処遇を僕に一任してもらったので、寄宿舎に地下牢を設置し、例の魔道具の製作をさせているのだ。


 もちろん、【転移魔法】を駆使しても逃げられないように、両脚を杭で床に縫いつけた状態で。

 ただ牢に入れただけだと、簡単に脱出してしまうからね。


「それでは、ここまでとします」


 お、ようやく今日の授業が終わったよ。


「サンドラ、モニカ、帰ろうか」

「「はい」」


 席を立ち、僕達は教室を出ようとした、その時。


「ハロルド!」


 やって来たのは、ラファエルだった。

 でも……あれ? ちょっと怒ってる?


「どうしたんですか?」

「……少し話がある」

「? は、はあ……」


 とりあえずサンドラとモニカには先に寄宿舎に帰ってもらい、僕は訳が分からないままラファエルに生徒会室に連れてこられた。


「聞いたよ。お前、オーウェンの手助けをして魔塔主の陰謀を阻止したそうじゃないか」

「あー……」


 その一言で、何を言いたいのか分かったよ。

 王位継承争いをしているライバルに塩を送るような真似をして、ご機嫌斜めってわけだね。


「何より、魔塔への視察にリリアナまで連れて行ったと聞いたぞ! もし彼女を危険な目に遭わせたらどうするつもりだったんだ! しかも、この僕のいないところで!」


 あ、違った。

 単にリリアナ絡みなのに自分が蚊帳の外だったから怒ってるんだ、これ。


「す、すみません……」


 ものすごい剣幕で怒るラファエルに、僕は平謝りする。

 多分何を言っても火に油を注ぐだけなので、こういう時は謝罪botに徹したほうが早く終わることは分かっているよ。


「ハア……いいか、これは貸し(・・)一つだ。同じように僕が視察に赴く時は、ちゃんとハロルドも手伝ってくれよ? もちろん、リリアナの手も借りて」

「あ、あははー……」


 どうしよう、第二王子のヤンデレが加速しているよ。

 このままエスカレートすれば、そのうち女性向けエロ同人に登場するようなヤンデレサイコパスにジョブチェンジしそう。


「し、失礼します……」


 ようやく解放された僕は、何度も頭を下げてから生徒会室を出た。


 すると。


「兄貴……」


 神妙な表情で待ち構えていたのは、オーウェンだった。

 あれかな? 僕がラファエルに拉致されたことを聞いて、申し訳なく思って……って、そういう性格じゃないか。


「どうした? わざわざこんなところまで来て」

「…………………………」


 オーウェンは唇を噛み、無言でうつむく。

 どこか思いつめた様子に、ちょっと心配になって顔を(のぞ)き込むと。


「……兄貴! 俺と、勝負してくれ!」

「は……?」


 突然何を言い出すかと思ったら、僕と勝負?

 コイツもやっぱりウィルフレッドと同じで、噛ませ犬の僕に対して喧嘩を吹っかけてきた……っていうのとは違うか。


 それくらい、瞳を見れば分かる。


「いいよ、やろう」

「! 助かる!」


 僕が頷くと、オーウェンは嬉しそうに顔を(ほころ)ばせた。

 だけど、コイツの意図が分からないなあ……。


 この前のイベントを通じて理解したけど、オーウェンは馬鹿で礼儀知らずではあるものの、素直だし自分の非を認めることができるし、何よりウィルフレッドみたいに(くず)じゃない。


 だから、コイツが僕と積極的に争う理由もないはず、なんだけど……。


「それで、どうする? 僕は別に今からでも構わないけど」

「もちろん今からだ。マリオンに、学院の訓練場を押さえてもらっている」

「そっか」


 僕とオーウェンは並んで歩き、訓練場へと向かう。


「ところで……先程の口振りだと、マリオンとは上手くやっているのか?」

「……そのことも、勝負が終わったら話すよ」


 どうやら、そっちも何かあるらしい。

 今回の勝負とも、少なからず関係しているみたいだな……って。


「キャス?」

「ハル、気をつけて。向かっている先から、魔獣のにおいがするよ」

「……そっか」


 いつの間にか子猫の姿で僕の肩に乗っていたキャスが、そっと耳打ちした。


 ふむ……さすがにオーウェンが罠を仕掛けているとは考えにくい。

 となれば、それはマリオンの仕業か、あるいはそれ以外の何者かによるものだろう。


 まあ。


「心配ないさ。僕にはキャスがいるから」

「えへへ……もちろん、ボクが君を守るからね!」


 はにかんで頬ずりをするキャスに微笑みかけ、僕達は訓練場に到着した。

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