表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

219/333

女主人公が用意した食料を食い尽くしていました。

「え、えへへ……その、すみません……」


 床に土下座し、愛想笑いを浮かべるリリアナ。

 どういう状況かというと、この女主人公、持ってきた水と食料を道中でほとんど食べ尽くしやがったんだよ。


 いや、かなりの量を用意していたはずなのに、なんで既に枯渇しているんだよ。一体どれだけその胃袋に詰め込んだんだよ。

 せっかく食事対策として準備しておいたのに、いきなり台無しだよ。チクショウ。


「……いや、俺達も道中控えるようにって何度も忠告したんだけどな」


 神妙な面持ちでロイドは告げるけど、止めなかった時点で同罪だからな。

 まあ、そんなことをしたら飢えたリリアナに腹パン食らうだろうけど。


「それで? ロイドはともかく、オーウェンは何をしていたんだよ。ちゃんと止めていればこんなことには……」

「い、いや、無理だって! 悲しそうな瞳のリリアナ嬢に抗える奴がいるんなら、ここに連れて来てみやがれ!」


 オーウェンは若干逆ギレ気味に必死に言い訳にすらなっていない言い訳を始めるけど、こんなことならリリアナは僕達の馬車に乗せるべきだったよ。

 そうすれば、僕達が絶対にこの蛮行を止めたのに。


「ハア……とにかく、食糧が枯渇してしまった以上、これから全てが(・・・)終わるまで(・・・・・)我慢するしかない」

「……やってくれましたわね、リリアナ」

「ヒイッ!?」


 リゼにギロリ、と睨まれ、リリアナは悲鳴を上げる。

 その様子を見つめているクリスティアも表情こそにこやかだけど、瞳からハイライトが消えているのを僕は見逃さないよ。


「あー……この空腹状態で、豪華な料理が並ぶ晩餐会ではお預けを食らうのかあ……」

「……言わないでください」


 僕の呟きに、サンドラが小さなお腹をさすって暗い表情を浮かべる。


「それじゃ、晩餐会の時間まで各自の部屋で大人しくしていよう。間違っても、備え付けの水とかに手を出しちゃ駄目だよ」

「わ、分かっていますわよ!」

「あうううう……ひもじい、ひもじいよお……っ」


 水と食料がないと、ここまで人を殺伐とさせるのか。リゼが悪女ムーブを忘れ、キレ気味に叫ぶ。

 しかも、なんで張本人のリリアナが一番空腹に耐えかねて悲しそうにしているんだよ。


 そうして、みんなが重い足取りで部屋から出て行くと。


「キャスさん、どうぞ」

「わあい! モニカ、ありがとう!」


 どういうわけか、モニカはキャスに普通に食事を用意しているんだけど。


「モ、モニカ、それ……」

「こんなこともあろうかと、皆様には内緒で別にご用意しておりました。ただし、ハロルド殿下の荷物は道中で全て犠牲にしましたが」


 ああ、なるほどね。

 僕の荷物を捨てて空いた隙間に、食糧を隠し持っておいたってわけだ。


 助かったけど、やってくれたよ。チクショウ。


 ◇


「おや? オーウェン殿下のお口に合いませんでしたか?」

「そ、そんなことねーよ……」


 晩餐会が始まり、料理に手を付けないオーウェンに対し怪訝(けげん)な表情を見せるマクラーレン。

 だけど、その台詞(セリフ)はないんじゃないか? オーウェン、料理を凝視してメッチャよだれ垂らしているし。


 まあ、これで僕達が魔塔側に対して最大限警戒していることは、向こうも理解しただろうね。

 これで連中の出鼻をくじくことができたと思えば、オーウェン達の犠牲も安いものだ。


 ちなみに僕達は、用意周到……なんて誉め言葉は使いたくないけど、モニカが確保しておいてくれた食料を事前に食べておいたので、豪華な料理を目の前にしても無様な姿を(さら)すことはない。

 ただし、オーウェン、リリアナ、ロイド、マリオンの四人を除いては。


 水と食料を食べ尽くしたリリアナは当然として、それを止められなかったオーウェンとロイドも同罪だよ。限界ギリギリまで空腹にさせて、大いに反省してもらうことにしよう。

 マリオンに関しては、そもそも()なので分け与えるつもりもない。嫌なら目の前の料理に口をつけて、マヌケに捕えられればいい。そのほうが僕達も助かる。


「……残念ながら皆様にお気に召さなかったようですので、晩餐会についてはお開きにして」


 マクラーレンは居住まいを正し、真剣な表情でオーウェンに向き直る。


「オーウェン殿下が魔塔へ視察にいらっしゃった、その目的をお伺いしても?」

「べ、別に……国王陛下から『ここに行け』って命令されたからだよ……」

「そうでしたか。これは失礼いたしました」


 オーウェンの答えに満足したのか、マクラーレンは表情を緩めてお辞儀をした。

 ただし、その瞳は笑っていないけどね。


 でも、どんなに探ったところでオーウェンからは何の情報も得ることはできないよ。

 僕も確認したんだけど、アイツはどうしてエイバル王から魔塔への視察を命じられたのか、表向きの目的すら理解していなかったし。


 となると。


「……早速今夜、仕掛けてくるかな」


 二人の様子を眺め、僕は口の端を持ち上げてポツリ、と呟いた。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼8/19に書籍第1巻が発売します! よろしくお願いします!▼

【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ