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女主人公はいつの間にか逆ハーレムを形成していました。

「それでは皆さん、時間の許す限りパーティーをお楽しみください」


 主催者の挨拶も無難にこなし、僕は壇上から降りる。

 というか、こういうのは苦手だから次回以降は遠慮したい。


「ハル様、素晴らしいご挨拶でした! 生徒達は皆、あなた様のお声に聞き惚れていらっしゃいましたよ!」

「いや、それはないから」


 瞳を真紅に変えて手放しで褒め称えるサンドラに、僕は冷静にツッコミを入れてしまった。

 最近の彼女、【竜の寵愛】が常時発動しているように思うんだけど。大丈夫なのかな? 大丈夫だと思いたい。


「それで、みんなはどうしてるかな?」

「リゼ様、クリスティア様、カルラ様は三人で談笑し、その周囲を男子生徒達が遠巻きに眺めております。会話に加わりたそうにしておられますが、オーラが違い過ぎて近づくことすら容易ではないといったところでしょうか」


 僕の何気ない問いかけに、モニカが正確に答えてくれた。

 でも、リゼ達の状況をどこか楽しげに話しているのは、気のせいじゃないよね。


 まあ、三人とも押しも押されぬ『エンゲージ・ハザード』のメインヒロインだからね。お近づきになれるのは、主人公くらいのものだよ。よくお近づきになれたな、僕。


「また、ロイド様は先程から女子生徒に声をかけては相手にしてもらえず、それでもめげずに手あたり次第アタックしておられます」

「そ、そう……」


 あれ? おかしいなあ……ロイドは残念イケメンではあるけれど、イケメンであることは間違いないし、実家だってバルティアン教会の大教主の息子だよ? もっとモテてもおかしくないのに。


「最後にリリアナ様ですが、中央にあるオードブルを一人で陣取り、誰も寄せつけずにお肉を頬張っております。かなり迷惑です」

「う、うん……」


 あれ? おかしいなあ……僕、普段から彼女にはお肉を供給しているはずなのに、どうしてそんなに飢えているんだろうか。


「そんな彼女の周囲には、ラファエル殿下やオーウェンをはじめ、特定の男子生徒が遠巻きに眺めております」


 リゼ達と同じ状況のように聞こえるけど、実際は雲泥の差だからね。

 寄せつけないオーラという点では、どちらも一緒だけど。


「ふうん……じゃあ、ちょっとリリアナの様子を見てこようかな。あまりにも目に余るようなら、注意しとかないと」

「そうですね。せっかくハル様が準備なさったパーティーを台無しにするのであれば、分からせて(・・・・・)差し上げませんと」


 お願いだから、そういう台詞(セリフ)は青い瞳の時に言ってね。

 今の真紅の瞳だと、きっとろくでもない結果になると思うから。


 ということで、モニカに案内してもらってリリアナが占拠しているという席へと向かうと。


「ああー……」


 その凄惨な様子に、僕は思わず変な声が漏れた。

 リリアナ、完全にハンターの目になっているよ。


「や、やあ、美味しいかい」

「っ! あげませんから……って、ハルさんじゃないですか!」


 キッ! と睨んだかと思ったら、僕だということに気づいてすぐに笑顔に変わる。

 一応、まだ理性は残っていたみたいだ。


「んふふー、今日のお肉は最高です! ハルさんのことだから、きっとすごいお肉を用意してくれると思い、朝食も昼食も我慢したんですから!」

「よ、良かったね……」


 パーティー……もといお肉にかける想いが、シャレにならないレベルなんだけど。

 だというのにさあ。


「「「「「…………………………」」」」」


 よく見ると、リリアナのテーブルを囲うように、見覚えのあるイケメン達がこちらを見つめているよ。

 当然ながら、そのほぼ全員が『ガルハザ』の攻略キャラ、で間違いないよね?


 その中には、ラファエルとオーウェンの姿も。


 で、どうしてみんな、僕にそんな射殺すような視線を向けてくるの?

 僕の隣に、ちゃんとサンドラだっているのは分かってるよね? だから、僕は君達のライバルなんかじゃないんだよ。


「そういえばハルさんとサンドラさんは、お食事はされたんですか?」

「い、いや、僕達は主催者だから、そういうのは……って、むぐ!?」

「んふふー。ちゃんと食べないと、身体に悪いですよ? 一口目は私があげましたけど、二口目からはサンドラさんにお願いしてくださいね?」


 強引にお肉を口の中に突っ込み、リリアナが嬉しそうにはにかむ。

 お願いだから、そういうことを無自覚でするのはやめてくれ。おかげで『ガルハザ』攻略キャラだけでなく、サンドラにまで睨まれてるんだよ。


 とはいえ、どうやら僕はこのテーブルの肉に手をつけることを許されたみたい。いや、そんな権利いらないから。


「ええ、二口目と言わず、全てこの私が差し上げますとも。リリアナさんなんかに、その権利を渡してなるものですか」

「お待ちください。ハロルド殿下のお世話はこのモニカめの仕事です。たとえお嬢様とはいえ、それはお控えください」

「いや、そういう不毛な争いいらないし、別にお腹も空いてないから」


 謎に争い出したサンドラとモニカを止めつつ、さらに恨みがましい視線を浴びて、僕はますます胃が痛くなってきた……って、えええええー……。


「…………………………」


 ふと顔を見上げると、柱の陰からこちらの様子を(うかが)っている人物が一人。


 よりによって、カーディスまでリリアナ争奪戦に参戦してくるのかあ……。

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