パーティーに次々と攻略キャラがやって来ました。
「うわあああ……」
パーティー会場である講堂にやって来るあまりの人の多さに、僕は思わず声を漏らす。
いや、参加者が多いのは知っていたけど、目の当たりにすると人の多さに思わず吐き気がしそう。
「それにしても、みんなイベントに飢えていたのかな……」
「そうですね。こう申し上げては何ですが、一年前のあの屑が開催しようとしたパーティー以来ですから」
隣にいるサンドラが、参加者を眺めてそう話した。
実は、あのウィルフレッドのパーティーでの事件以降、王立学院はそういった催し物の一切を禁止されていた。
学院のその措置は間違っていないし僕も理解できるものの、それでも、生徒達は鬱憤が溜まっていたのかもしれない。
ちなみに、今日のサンドラは赤を基調としたドレスに身を包んでいるよ。
僕が受け入れていることもあって、最近では【竜の寵愛】の発動頻度が多くなり、青い瞳のサンドラが赤のドレスを着ても違和感がなくなってきた。いいのかな、これ。
もちろん、赤のドレスだって彼女にはとてもよく似合っているけど。
僕? 僕もサンドラのドレスに合わせて、赤をベースとした衣装だよ。
夫婦なんだから当然だよね。
「ハロルド!」
「ラファエル兄上」
満面の笑みで現れたのは、黒とシルバーを基調とした衣装で身を固めたラファエルだった。メッチャ気合い入ってるなあ。
「今日はこんなパーティーを開催してくれて、本当にありがとう。お前の心遣い、決して無にしないよ」
「あ、あはは……その、頑張ってください……」
「ああ!」
鼻息荒くガッツポーズをするラファエルに、僕は苦笑いを浮かべた。
い、一応、交流の場は提供したので、あとは自力で頑張ってほしい。
「じゃあ、僕は早速彼女を探してくるよ!」
「え、ええ」
意気揚々と講堂の中へと入っていくラファエルを見送り、僕は何とも言えない表情を浮かべた。
「……そう簡単に、上手くいきますでしょうか」
「さあ……こればかりは、リリアナ次第だからね」
もちろん、『ガルハザ』には逆ハールートも存在するので、リリアナが攻略キャラを全員ハーレム要員として抱え込むこともできるけど、少なくとも今の彼女、色気よりも肉気だからなあ。
こうなってくると、誰が彼女に一番お肉を与えたかが勝負になってきそう……って。
「ど、どうしたの?」
「いえ。ハル様と早々に結婚しておいてよかったと、喜びを噛みしめているところです」
「そ、そっか」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、表情といい何だか意味深だなあ。気にしないでおこう。
「ハル、サンドラ」
「リゼ」
次に僕達の前に顔を見せてくれたのは、リゼだった。
彼女のドレスは黒をベースとしていて、どことなく悪女っぽい。中身はただのポンコツだけど。
「フフ、今日は楽しませてもらうわ……と言いたいところだけど、あなた達は手が空かないのよね……」
「しょうがないよ。僕達、今日のパーティーの主催者だし」
しょんぼりするリゼに、僕は肩を竦めてなだめる。
寂しがり屋の彼女には申し訳ないけど、こればかりは仕方がない。
「ほら、クリスティアさんやカルラ殿ももうすぐしたら来るから、その時にみんなで楽しんでよ。せっかく僕達が、今日のために準備したんだから」
「もう……仕方ないわね」
ようやくリゼは顔を綻ばせ、講堂の中に……入らずに、なぜか僕達の隣にいるんだけど。
「リゼ、僕の話聞いてた?」
「ええ。まだクリスティア達が来ていないなら、私一人で入っていてもつまらないもの」
まあ、彼女がいたからって邪魔になるわけじゃないし、リゼがいいっていうなら別にそれでもいいか。
そうして、僕達三人で談笑をしつつ、参加者に挨拶をしていると。
「フ、フン……」
オーウェンの奴が、白のタキシードを着てやって来たよ。
だけど、ちょっと馬子にも衣裳みたいで、服を着ているというより着られているといった表現が正しいかも。
「やあ、よく来てくれたね」
「べ、別に、好きで来たわけじゃねーからな」
「じゃあ帰れよ」
「っ!?」
ジト目で睨みつつそんなことを言ってやると、オーウェンは絶望したような表情を浮かべた。
というか、パーティーに参加してリリアナとお近づきになりたいなら、主催者の僕を怒らせてどうするんだよ。
「う……そ、その……」
「冗談だよ。お前だって王立学院の生徒なんだから、心配しなくても参加する資格はあるから」
「お、おう……」
バツが悪そうにオーウェンは顔を逸らし、そそくさと講堂の中へと入っていく。
まだリリアナは来ていないから、そんなにキョロキョロしても見つからないぞ。知らんけど。
「あら……ハルがあの男の参加を認めるなんて、意外だったわ」
「変に突っかかってくるのは事実だけど、別に敵対しているわけじゃないし、アイツだっていきなり第四王子なんかになって斜に構えているだけだろうからね。こうみえて、僕は大人なんだよ」
「フフ、そう。優しいですわね、お兄様」
「その言い方やめてくれる?」
とはいえ、オーウェンがウィルフレッドに代わって『エンハザ』の主人公になった以上、これから先もし僕達に危害を加えるのなら、容赦はしないけどね……って。
「カーディス兄上……」
現れたのは、第一王子のカーディスだった。
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