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パーティーの準備をしました。

「まさかここにきて、『ガルハザ』関連シナリオに頭を悩まされることになるなんて……」


 キャスしかいない自分の部屋で、僕は机に突っ伏す。

 ただでさえ『エンハザ』の破滅フラグ回避のために色々と頑張っている中、チュートリアルくらいしかプレイしていない『ガルハザ』まで面倒見切れないんだけど。


「それにさあ……あの様子だと、オーウェンもきっと『ガルハザ』の隠しキャラか何かの可能性まで出てきたし」

「ハルゥ、さっきから何をブツブツ言ってるの?」

「ん? あー……また厄介事が増えたなーって」

「厄介事? なら、ボクとハルでやっつけちゃえばいいんだよ!」


 僕の頬をすりすりして、キャスがそんなことを言った。

 キャスの毛並みがメッチャ気持ちいい。


「それが、そうもいかないんだよ。ただ闘うだけならやりようがあるんだけどね」


 そう……『ガルハザ』も恋愛スマホRPGである以上、戦闘パートは存在するものの、『エンハザ』よりもさらに恋愛パートに特化しているため、重要なのはいかにして攻略キャラとの関係を構築し、逆ハーレムを作り上げるかにかかっている。


 しかも、その恋愛をするのは肉女リリアナだよ? 無理ゲーが過ぎる。


「ふうん。それじゃ、ボクにはあまり関係ないね」

「そういうことだ。僕としてもお手上げだよ」


 いつの間にか攻略キャラの好感度を上げていたリリアナには思うところはあるけれど、きっと彼女のことだから全て無自覚だろうし、そもそも恋愛自体に一切興味がなさそうだし。


「でしたら、いっそのことそういう機会をハロルド殿下が提供なさってはいかがですか?」

「そうだねえ……って、うわあ!?」


 どういうわけか、モニカが僕の隣にシレッといるんだけど!? というか、いつの間にこの部屋に!?


「ハロルド殿下の驚く姿を見ることができて満足ですが、話を戻しますと、リリアナ様も参加されるパーティーをハロルド殿下が(もよお)し、そこにラファエル殿下をはじめとして彼女に気がある方々を招待すればいいのです」

「あ、あー……」


 なるほど……って言いたいところだけど、それ、準備も含めてメッチャ大変だよね。

 しかも、当日は攻略キャラ同士によるトラブルが勃発する未来しか見えない。


「ご安心ください。準備についてはこのモニカが取り仕切りますし、当日も常に目を光らせておきますので、問題が起きたとしても修羅場程度です」

「最悪じゃないか」


 駄目だ。この専属侍女、自分がトラブルを対岸から眺めて楽しみたいだけだったよ。


「ですが、ハロルド殿下もラファエル殿下とのお約束を果たさなければならない以上、他に方法がないのでは?」

「うぐう……」


 チクショウ、痛いところを突いてくるなあ。

 結局、僕はモニカの提案を受け入れ、サンドラにも事情を説明して準備に取りかかることにしたよ。


 ということで。


「う、うおおおお……っ」


 目の前にある、生徒達からの参加表明の書状の山を見て、僕は思わず(うな)った。

 いや、少しでもリリアナと攻略キャラのために催されたパーティーであることをカモフラージュするため、あえて広く生徒に(つの)ってはみたものの、これ……王立学院の生徒のほぼ全員じゃない?


「モ、モニカ、どうしよう……」

「心配には及びません。こんなこともあろうかと、王立学院の講堂を貸し切りにしております。もちろん、当日の料理やスタッフなども万全です」


 眼鏡をクイ、と持ち上げ、これ見よがしにドヤ顔をするモニカ。

 ただでさえ大きな胸を張ったから、とんでもないことになっているよ……ってえ!?


「い、痛い! 痛いよサンドラ!」

「……ハル様がいけないのです」


 瞳を赤く輝かせ、サンドラが僕の太ももをつねって頬を(ふく)らませている。

 くっそう、モニカの胸に釘付けになっていることを見抜かれてしまった。サンドラの嫉妬、可愛い。


「お嬢様、これは仕方のないこと。ハロルド殿下も十六歳、私のこの立派な胸に興味を持たれてしまうことは、抗えない本能というものです」

「むう……その胸、切り落として差し上げましょうか」


 モニカが(あお)るものだから、一触即発の状態になってしまったよ。

 僕としては、どちらの胸も大好きなので喧嘩はやめてほしい。もう両方優勝でいいじゃないか。


「もう……サンドラもモニカも、遊んでないで仕事しなよ。このままじゃ、ボクの(・・・)ハルが大変なことになっちゃうじゃないか」

「「あ……」」


 呆れるキャスにたしなめられ、二人はバツの悪そうな表情を浮かべる。

 というか、子猫の魔獣のキャスが一番常識人だなんて、一体どうなっているんだろうね。


「そ、そろそろ仕事を再開いたしましょう」

「そ、そうですね……」


 ようやく書状の仕分けを始めてくれた二人を見て、僕も同じく手を動かす。

 面倒なので『全員参加』ってしたいところだけど、変な(やから)を参加させて、せっかくのパーティーを台無しにされるわけにはいかないからね。開催する以上、みんなには楽しんでほしいし、慎重に確認しないと。


 だけど。


「ふふ……」

「じー……」


 サンドラとモニカは、僕をジッと見ているんだろうか。


「ハル様は、やっぱりハル様ですね」

「はい。あれほど嫌だとおっしゃっておられたのに、いざとなれば皆様のために努力なされるのですから」

「う……」


 こういうところ、やっぱり二人からすれば言いたいことの一つや二つあるよなあ……って。


「私はあなた様の妻で、心から幸せですよ?」

「ハロルド殿下がそのような御方だからこそ、私は全てを捧げておりますので」


 ああもう。そんなことを言われたら、どうしても頬が緩んじゃうじゃないか。

 その後も僕達は、参加表明の書状を黙々と仕分ける。もちろん、頬も口元もゆるっゆるだよ。


 そして。


 ――いよいよ、パーティー当日を迎えた。

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