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みんな『ガルハザ』の主人公狙いでした。

「ハルさん、あの人って本当にハルさんの弟なんですか? さすがにちょっと失礼すぎると思います!」

「うわっ!?」


 眉根を寄せるリリアナに詰め寄られ、僕は思わず仰け反ってしまった。

 だけど、さっきのオーウェンとの会話の内容から察するに、リリアナはオーウェンのことを知っている……?


「ふう……一週間ほど前から、オーウェン殿下は時々教室の前を通っては、私のことをチラチラと見てくるんです。それで……」


 リリアナは、これまでのオーウェンとの経緯(いきさつ)について説明してくれた。

 最初は教室の前だけだったのが、気づけば廊下や他の場所にいる時でもオーウェンの視線を感じるようになり、鬱陶(うっとう)しくなって三日前に声をかけたらしい。『私に何か用があるんですか?』と。


 だけど、オーウェンはうつむくばかりで何も話そうとしないし、しばらくすると黙って走り去っていくしで、困っていたらしい。

 そんな行動を繰り返し、今日まで至ったわけだけど……。


「……まさか、ハルさんに絡みにくるとは思いませんでした。これまでは、遠巻きにいやらしい視線を送ってくるだけだったのに」

「そ、そう……」


 リリアナの話を聞き終え、僕は何とも微妙な顔をしてしまった。

 えーと……僕が推理するに、ひょっとしてオーウェンの奴は、リリアナのことが好きになってしまったのでは……?


 どう考えても行動が、思春期の中学生が好きな子に声をかけられずに、遠巻きに眺めているアレだよね。

 で、いつも一緒にいる僕に絡んできたのだって、完全に焼きもちというか嫉妬というか、そういうことだと思う。


「えー……まさか、そんなことないですよー」

「そ、そうかなあ……」


 リリアナは顔をしかめ、手を振って否定する。

 でも、一緒に聞いていたサンドラとモニカが首を縦に振って激しく同意してくれているので、間違いないだろう。


「だ、だけどさあ。リリアナは、もしアイツが君のことを好きだって言ったら、どうする?」

「いや、ないですから。私だって元は平民ですけど、さすがにあんなに失礼な男の子は願い下げです」


 あ、リリアナ的にアイツは『なし』らしい。

 どうしよう。ウィルフレッドの代わりとはいえ、せっかく主人公に抜擢されたっていうのに、全然主人公ムーブしてないんだけど。本当に可哀想。


「そんなことより、早く食堂に行きましょう! もうお腹がペコペコですよ!」

「う、うん」


 食堂に向かって廊下を駆けるリリアナの背中を眺めつつ、この時の僕は嫌な予感(・・・・)がしてならなかった。


 あ、あはは……まさかね……。


 ◇


「ハロルド、実は相談したいことがあるんだ」

「は、はあ……」


 放課後になり、僕とサンドラは生徒会室で仕事をしていたところに、生徒会長を務めるラファエルに声をかけられた。

 だけど……相談ってなんだ?


「えーと、それで……」

「ああ。ほら、僕達三年生は、夏休みが終われば生徒会を引退することになる。それで、次に生徒会長なんだけど……」


 あ、メッチャ嫌な予感がする。


「すみません! 僕に生徒会長は無理です!」

「いやいや。王族はハロルド(・・・・)しかいない(・・・・・)んだから、これは強制だよ」


 どうやら僕に、拒否権はないらしい。

 だけど、ラファエルの中ではオーウェンは弟だと認めてないんだな。


 まあ、オーウェンに関しては、エイバル王から隠し子だと言われて一方的に第四王子の座に収まったわけだから、その出自も含めて信用ならないのは当然か。


「そんなに難しく考えず、気楽にやってみたらいい。それに、今のお前なら助けてくれる人達がたくさんいるだろう?」

「そ、それは……」

「そういうことだ。お前には期待しているし、もしこの僕が次の王になったあかつきには、絶対に右腕として支えてもらうからな」

「あ、あははー……」


 そんなに期待をかけてもらって申し訳ないけど、それは丁重にお断りしたい。

 だけど、『エンハザ』ではカーディスの足を引っ張ることだけを考え、王の座には興味がなかったラファエルだったのに、ねえ……。


「……とりあえず、ラファエル兄上が王を目指すというのなら、協力することもやぶさかではありませんよ。といっても、さすがにラファエル兄上の考える『世界一の婚約者』がどんな女性か分からないので、どうしようも……」

「そ、それなんだが……」


 あれ? なんだかおかしなことになりそうな予感がするぞ。

 というか、普段はにこやかな表情は浮かべているけれどその灰色の瞳は笑っていないという、クリスティアと並んで『エンハザ』屈指の腹黒キャラが、顔を真っ赤にしているんだけど。


「っ!? あ、兄上!?」

「い、今、僕に協力すると、確かに言ったな!」


 いきなり両肩をつかまれ、真剣な表情のラファエルに、僕は思わず(おのの)いてしまう。できればこの手を振り払って逃げ出したい。いや、今すぐ逃げよう……あ、力が強すぎて無理だった。


「な、なら! ハロルドの友人の、そ、その……リリアナ嬢との交流の場を設けてはくれないか!」


 はい。ラファエルは、まさかのリリアナ狙いでした。

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