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黒幕がちょっと拗ねてしまいました。

大切なお願いがあります!

どうか、あとがきまでご覧くださいませ!

「本当にハル君は、実の父親に酷いことをするよね」


 シュヴァリエ家のタウンハウスへと戻る馬車の中、またあの世界へと(いざな)われた僕は、向かい側に座って肩を(すく)めるユリを見つめていた。


「酷い? まさか。一歩間違えれば、王国軍と王国最大貴族が戦になるところだったんだ。あの程度、可愛いものだよ」


 もし戦になれば、多くの犠牲者が出てしまう。

 『エンハザ』のシナリオにおいても、主人公のウィルフレッドの活躍によって反乱を阻止できたものの、それでも少なくない被害があった。


 それすらも防げたんだから、僕はむしろ誇らしいよ。


「だけどこれで、物語の最序盤のシナリオを僕達の手で阻止した。もちろん、ここから先はシュヴァリエ家に……いや、サンドラに危害が及ぶことはない」


 ここから先のシナリオには、シュヴァリエ家も、サンドラも登場しない。

 つまり、これ以上は向こう(・・・)から(・・)関与してくることはないということ。


 僕は、前世で何百回とチュートリアルを繰り返すたびに悔しい思いをした、あの光景を阻止することができたんだ。


「それとも……僕はともかく、まだサンドラ達に手出しするつもりなのか?」

「まさか。そんなことをしたら、物語が破綻しちゃうよ」

「だよな」


 眉根を寄せるユリを見て、僕はくつくつと笑った。


「だけど、ハル君も言ったとおり、これからも君はこの物語に登場し続ける。主人公の引き立て役……噛ませ犬として」

「そっか」

「あれ? それだけ?」


 もっと大袈裟な反応を期待しているのかもしれないけど、そんなことはしないよ。

 まずは、サンドラの未来を守れたことを、ゆっくりと噛みしめたいんだ。


「ふうん、つまんないなあ……」

「ユリ?」

「どうせハル君のことだから、サンドラさんの未来が救えたからとかって喜んでるんでしょ?」

「うぐ、図星なんだけど。というか、よく分かったなあ」

「それくらい分かるよ。そんなにゆるっゆるの顔をしてればね」


 ユリにジト目で睨まれ、僕は思わず自分の顔をペタペタと触る。

 僕は思っていることを声に出してしまう癖だけでなく、すぐに顔に出てしまうところもあるみたいだ。気をつけよう。


「だけどさあ、どうしてハル君は、そんなにサンドラさんのことが好きなの? 彼女、確かに可愛いかもしれないけど、背も胸も小さいし、想いが激重だし、すぐに暴走するし、むしろデメリットばかりだよね」


 なるほど、サンドラのことがよく分かってるじゃないか。

 だけど、ユリは分かって(・・・・)ない(・・)んだよなあ。


「いいかい、ユリ。胸に貴賤はないんだよ。それに、身長のことを言うなら、僕だって一七〇に満たないからね」

「ハ、ハル君!?」

「サンドラが激重? 最高じゃないか。ヤンデレっていうのは、その相手のことが好きじゃなければ迷惑なところが往々にしてあるけど、サンドラのことが大好きな僕からすれば、それはご褒美でしかないんだよ」


 そうそう、よくヤンデレについて勘違いされるけど、その人のことが好きならむしろ嬉しいんだよね。

 だって、それだけ僕のことが好きで、たくさん尽くしてくれたりするんだよ? 最高かな? 最高だよ。


「そういうことだから、ユリはもっと恋愛について勉強したほうがいいよ」

「むうううう!」


 口を尖らせて()ねるユリ。

 僕も前世を含めて彼女はサンドラしかいないので、何一つ偉そうなことが言えないことに気づいてしまったけど、このまま経験豊富な彼氏(づら)をさせてもらうとしよう……って。


「じゃ、じゃあ、もし私がサンドラさんみたいに激重だったら、その……どうする?」

「へ……?」


 ユリが何を言っているのか分からず、僕は思わず呆けた声を漏らした。

 いやいや、だってユリは男だし、残念ながら僕はノンケだし、恋愛対象じゃないから関係ないんだけど。


 だから、そんなふうに上目遣いであざとく見つめられても、僕の心は惑わされないんだからね!?(必死)


「ハイハイ、冗談はそこまでだ。僕はサンドラが好きなんだし、男に興味はないよ」

「だ、だったら、女の子だったらいいんだね!」

「ハア……もう言ってることが滅茶苦茶だぞ」


 どうしてそこまでムキになってるのか分からないけど、この話はそろそろ切り上げるとしよう。(らち)が明かない。


「それじゃ、そろそろ僕を元の世界に戻してくれないかな。サンドラが待ってるし」

「むうううううううう! 絶対にハル君を後悔させてやるんだから!」


 パンパンに頬を膨らませたユリの顔を最後に、僕は元の世界に戻ってきた。


 だけど。


「ハル様、ハル様」


 どうしてサンドラが、猫みたいに頬をすり寄せて(なつ)いているのか、誰か説明してくれないかなあ。

お読みいただき、ありがとうございました!

いつも『無能の悪童王子』へたくさんの応援をいただき、ありがとうございます!


ここまでずっと日間ランキング5位以内で頑張ってきましたが、残念ながら6位に転落してしまいました……。


ですが、まだ諦めていません!

再び表紙に返り咲くために、必要なポイントは26ポイント!

どうか皆様のお力をお貸しください!!


もしお力をお貸しいただけるのであれば、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


この作品を無事継続させるためにも、どうぞよろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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