僕達は、『大切なもの』達に祝福されました。
とても大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
「ええとー……」
王立学院の寄宿舎に戻ってくると、リゼ、クリスティア、カルラ、リリアナ、そして土下座をしているロイドが待ち構えていた。
え? これ、どういう状況?
「ハル、聞きましたわよ? あなたとサンドラ、結婚したんですってね」
「っ!?」
ギロリ、と睨みつけるリゼに、僕は思わずたじろいてしまう。
ひょっとして、メッチャ怒ってる?
「うふふ、ご結婚おめでとうございます。ですが、それならどうして聖女である私に、一言もないのでしょうか?」
「ま、まったくです! 私と殿下は、剣を交えた仲ではありませんか!」
瞳からハイライトが消え、仄暗い笑みを浮かべるクリスティアと、鼻息荒く詰め寄るカルラ。怖い。超怖い。
「本当ですよ! 結婚式だったら、たくさんお肉が食べられるのに! どうしてくれるんですか!」
リリアナは頬を膨らませ、プンスカ怒る。でも、怒る理由がお肉とは、なんて理不尽なんだ。
「そ、それで、ロイドはどうして土下座なんか……」
「すす、すまねえ! 言うつもりはなかったんだが、この四人、超怖ええんだよ!」
ああ、なるほど。
僕達が結婚式を挙げたのは、バルティアン教会。使わせてもらうために、あらかじめ教会に許可を取っておいたことが仇になったか。
大教主の息子であるロイドが、僕の名前で使用許可をもらっていたら、色々と察するに決まっているからね。
「そ、その……君達に隠していたことは謝るよ。でも、まだそのことは内緒にしておかなければいけない事情があって……」
「そ、そうです。ハル様は決して悪くはありません」
「何を言っていますの? 私達は、サンドラにも怒っているのよ」
「あう……」
リゼに冷たく言い放たれ、あのサンドラでさえうつむいてしまう。
「とにかく、事情についても後でお聞かせいただくとして……まずはこちらへ」
「「はい……」」
僕達は四人に従い、すごすごと後をついて行く。
すると。
「え……? これ……」
「きゅ、急な話だったし、これくらいしか用意できなかったんだから、文句は言わないでくださいまし!」
「やっぱり、ちゃんと祝福したいですから」
「うむうむ!」
「このために、お肉を用意してもらいましたよ!」
交流スペースのテーブルに、所狭しと並べられている料理の数々。
どうやらみんなは、僕達を祝うために準備してくれたみたいだ。
「そ、その……ありがとう……」
「そんな感謝の言葉一つで騙されませんわ! どうして結婚することになったのか、なぜ私達に内緒にしたのか、のろけ話を含めて洗いざらい話してもらいますわよ!」
「あ、あはは……っ」
僕とサンドラは、大切なみんなに囲まれ、たくさんの祝福を受けた。
すごく嬉しくて、ちょっとだけ泣いてしまったのは内緒だよ。
◇
「……王宮で、そんなことがあったのね」
僕は全ての事情を話すと、みんな神妙な表情を浮かべた。
まさか、エイバル王がここまで馬鹿なことをしでかすとは、誰も思わなかっただろうね。
「ハア……本当に、この国は大丈夫なのでしょうか……?」
「言わないでください……」
こめかみを押さえてかぶりを振るクリスティアに、僕はただうつむくしかない。
僕だって、穴があったら入りたい……いや、穴はないので自分で掘るか。
「そういうことですので、王位継承権そのものはありますが、次の王となる資格を失ったも同然です。聖女様には、支援いただいたのに申し訳……」
「いいえ。これからも聖王国は、ハロルド殿下を支持します」
「聖女様!?」
クリスティアのまさかの言葉に、僕は思わず驚きの声を上げた。
い、いやいや、『エンハザ』のクリスティアは、決して私情では流されず、常に聖女として最適解を選ぶキャラだったはず。
こんな将来のない男を支持しても、聖王国として得られるものは何もないのに……。
「ハロルド殿下は、これまで多くの有力貴族の支持を受け、軍部を掌握するブラッドリー=ドレイク伯爵も味方につけておられます。それだけでも、聖王国があなた様を支持するのに充分です。それに」
クリスティアは、ずい、と身を乗り出すと、真剣な……いや、怒ったような表情で、僕を見つめた。
「私だって、大切な御方のために尽くしたいんですから。あなた様が、私のことを『大切なもの』とおっしゃってくださったように」
「あ……」
そこまで言われて、僕はようやく気づく。
僕がクリスティアやみんなを『大切なもの』と思っているように、みんなだって僕のことを『大切なもの』だと思ってくれていることに。
僕はもう、与えてもらえるだけの存在になっていたことに。
「ですから、私はこれからもハロルド殿下を支持いたします。ただ……せっかく次の王になられないということですので、これまで我慢していたことから解放されたいと思います」
「え……?」
「うふふ。これからは、私も“ハル様”と呼ばせていただきますね?」
そう言うと、クリスティアは聖女の笑顔を……いや、そんなものよりももっと素敵な、それこそ女神のような笑顔を見せてくれた。
「ず、ずるいです! 私だって我慢していたのですから、これからは“ハル殿”と呼ばせていただく!」
「わっ!?」
眉根を寄せ、カルラも身を乗り出して訴える。
い、いや、もちろん僕は大歓迎だよ。
「そういうことだから、私……いえ、カペティエン王国も、ハルを支持するわ。覚悟なさい」
「いや、なんで覚悟が必要なの!?」
悪女らしく笑うリズに、僕は思わずツッコミを入れてしまった。
これからどんな目に遭わされるっていうんだろうか。
「私は、何の力もないけど、その……それでも! ハルさんのために頑張ります!」
「お、俺もだぜ! 親友!」
「リリアナ……ロイド……」
みんな、本当に馬鹿だなあ。
次の王になれないんだから、僕なんてただのお飾りの王族にすぎないんだ。価値なんて何もないんだよ。
でも。
「みんな……ありがとう……っ」
僕は嬉しくて、嬉しくて、すっごく嬉しくて、その……思わず泣いちゃったよ。
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