大切な人へプレゼントを贈りました。
いよいよ最終章開始です!
「あー……来月から俺達も二年生かー……」
机に突っ伏し、ロイドが呟く。
王立学院に入学して、もうすぐ一年。僕達は今日も、学生らしく教室で談笑していた。
「それより、みんな無事に進級できて何よりだよ」
「本当ですよー……年末試験もハルさんのスパルタ特訓のおかげで、どうにか及第点は取れましたから」
苦笑する僕に、リリアナが心から安堵の表情を浮かべる。
といっても、リゼもリリアナもロイドも、かなりぎりぎりの点数だったんだけどね。
「実技試験が中止となったことにより、筆記試験に全てがかかっていた中での及第点ですから、リリアナ様もロイド様も、誇ってよいのではないでしょうか」
「! ですよねモニカさん! ということで、ハルさんは私にもっと褒美(お肉)を与えてもいいと思います!」
「ちなみに私も頑張りましたので、ご褒美をいただきたいのですが」
リリアナに便乗し、モニカも眼鏡をクイ、と持ち上げておねだりをした。
二人とも、これ以上の悪乗りはやめてほしい。
「なるほど……モニカもリリアナさんも、そんなにご褒美が欲しいのであれば、この私がご用意しますよ?」
「「ヒイイイイ!?」」
サファイアの瞳からハイライトが消え、サンドラがニタア、と口の端を吊り上げる。
それを見た二人が、軽く悲鳴を上げたよ。
ハア……こうなることくらい、最初から分かっているだろうに。
「ほらほら、サンドラもそんなに怒らないで。この二人に限っては、いつものことじゃない」
「ハル様……もう」
手を握ってなだめると、サンドラが口を尖らせた。
僕の最推しの婚約者は、とにかく今日も嫉妬深いよ。可愛い。
「あああああ! もおおおお! なんだよいっつもいっつも見せつけやがって! 爆ぜろ! もげろ!」
何を思ったのか、ここでロイドが頭を掻きむしりながら叫び出した。
いや、見せつけているつもりはないけど、婚約者も彼女もいないロイドにとっては、僕とサンドラが仲睦まじくする姿は目に毒だったみたいだ。もっと見るがいいよ。
まあでも……ロイドにも、好きな人がいたんだよな。
ただし、男だけど。
「彼、どうしてるかな……」
「? ハル様?」
「へ? あ、ああいや、なんでもない」
サンドラに不思議そうに顔を覗き込まれ、僕は慌てて取り繕った。
ほんの三か月前だけど、彼だっていつの間にか僕の『大切なもの』になっていたから、何とも言えない気分になるよ。
といっても。
「……もうすぐ、再会するだろうけどね」
ただし――お互いに、敵同士として。
◇
「ハロルド殿下、ご注文の品が届いております」
「! やっと来たか!」
恭しくお辞儀をするモニカの報告に、僕は寄宿舎のベッドから飛び起きて駆け寄った。
いやあ……間に合ってくれてよかったよ。
「ですが、お嬢様へのプレゼントにしては、どうしてこの時期なんでしょうか? 誕生日は二か月前に済ませたばかりですし……」
「いいのいいの」
そう……僕にはこのプレゼントが、どうしても必要だった。
ちょっと値は張ったけど、さすがに今回ばかりはしょうがないよね。むしろ、もっとすごいものを用意したかったんだけど、三か月じゃこれが限界だったよ。
「へえー、いいなあ……」
「ん? キャスもこういうの、欲しい?」
「うん! キラキラしてて、すっごく綺麗だもん!」
「そっか」
うーん……キャスは僕の大切な相棒だし、プレゼントするくらい全然いいんだけど。
それにしても……。
「? どうしたの?」
「い、いや、それなら今からでも街に出て見に行く?」
「! い、いいの?」
「もちろん」
驚くキャスに、僕は笑顔で頷いた。
「わあい! やったやった!」
「キャスさん、よかったですね」
大はしゃぎで喜ぶキャスを見つめつつ、モニカがチラチラと視線を送ってくる。
ああ、ハイハイ。君も欲しいんだね。
ということで。
「うわあああ……!」
やって来たのは、王都の中心街にある宝石店。
キャスはショーウインドウを眺め、瞳をキラキラさせている。
なお、今回に関しては、サンドラには寄宿舎でお留守番をしてもらっている。(正しくは教えてない)
だって、もし一緒に連れてきたら、どうしてここに来ることになったのか、その経緯まで説明しないといけなくなっちゃうからね。
彼女にプレゼントしようっていうのに、バレるわけにはいかないんだよ。
「どういうアクセサリーがいい? ……といっても、キャスの場合はどうしても首輪になっちゃうけど」
「うん! それでいい! あ、でも、宝石はボクが選んでもいいんだよね?」
「もちろん」
うんうん。はしゃぐキャス、メッチャ可愛い。
結局のところ、キャスって男の子なのかな? それとも女の子?
少なくともキャスには母親がいたんだから、性別くらいはありそうだけどね……って。
「あ……これ……」
見つけたのは、モニカの瞳の色のような、トパーズの首飾りだった、
これ、きっと彼女に似合うと思う。
「すみません。これを見せてもらっていいですか?」
「かしこまりました」
店員からトパーズの首飾りを受け取ると。
「モニカ、ちょっと来て」
「? はい……」
キャスに付き合っていたモニカを手招きし、僕は彼女の後ろに回る。
「あ……」
「うん。やっぱりよく似合ってる」
首飾りをつけたモニカを見て、僕は満足げに頷いた。
モニカ、メッチャ美人だからね。こういうの、きっと似合うことは分かっていたよ。
「すみません。これもお願いします」
「ありがとうございます」
「っ!? ハ、ハロルド殿下!?」
店員に注文した瞬間、モニカが声を上げた。
普段は揶揄ったりおねだりするくせに、いざこうやって本当にプレゼントしたりすると、君はすぐに遠慮するんだよね。
「悪いけど、拒否は認めないからね。君は僕の『大切なもの』で、かけがえのないたった一人の専属侍女なんだから」
「ほ、本当にあなた様は……っ」
珍しく感極まった表情を見せるモニカを見て、僕はニコリ、と微笑む。
こんな彼女を見ることができて、僕も幸せだよ。
ただし。
「ハル様……?」
「はい……」
寄宿舎に帰ってくるなり、サンドラにメッチャ問い詰められることになりましたが。
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