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物語を紡ぐ者 ※ユリシーズ=ハーザクヌート=ストーン視点

最終章に向けての幕間2話目!


また、とても大切なお願いがあります!

どうか、あとがきまでご覧くださいませ!

■ユリシーズ=ハーザクヌート=ストーン視点


「もう……ハル君に断られたの、ある意味エイバル君のせいだからね?」


 デハウバルズの王宮にある、謁見の間で玉座に腰かけるエイバル王に対し、私は唇を尖らせて悪態を吐く。

 もっとこの男がウィルフレッドをしっかり(しつ)けていれば、最初からハル君に鞍替えしようなんて考えなかったし、もう少しハル君に対して優しくしていれば、私の言葉に耳を傾けてくれたかもしれないのだから。


「……余とて、彼奴(きゃつ)があそこまで無能とは思わなんだわ……っ」

「そんな無能に育てたのは、一体誰なのかな?」

「…………………………」


 まったく……自分の無能さを棚に上げて、何を言っているのかな。

 カペティエン王国との戦争だって、せっかく最高の武器をあげたっていうのに、ただ自分一人の暴力を満たすためだけに使った挙句、向こうの王様にいいようにあしらわれて勝手に和平協定を結んでいるんだからね。


「とにかく、このままじゃエイバル陛下がお望みの神の座は、永久に手に入らないから」

「っ!? な、なんだと!? それでは話が違うではないか!」

「そんなことを言っても、主人公(・・・)がいなくなってしまったんだから、どうしようもないじゃないか」


 無能なくせに、人一倍野心が強く、人間の(・・・)分際で(・・・)神に成り代わろうとする不届き者。

 まあ、最初の頃はこの男の純粋な欲望に興味を()かれ、不必要な(・・・・)協力をしてやったけど、今となってはもっと苦労させるべきだったと後悔しているよ。


「な、ならば、他の者を用意すればよいのだな!」

「言っておくけど、カーディス君とラファエル君は別の役割(・・・・)があるから、主人公(・・・)の代わりは務まらないよ」

「うぐ……っ」


 馬鹿だなあ。そんな簡単に役割の交換が可能なら、僕だって苦労しないよ。

 といっても、ウィルフレッドとハル君を交換しようとしたのは確かだけど。


「ま、それにしても……本当に、君って見る目がないね。ウィルフレッドなんかより、ハル君のほうが主人公(・・・)に相応しいのに、全然気づけなかったんだから」

「だ、だが! 彼奴(きゃつ)も二年前まではまさしく『無能の悪童王子』であったのだ! それは間違いない!」

「そうなんだよねえ……」


 エイバル王に悪態を吐いてはみたものの、僕もハル君の本質を見抜けなかったことは事実。

 彼の言うように、ハル君は『無能の悪童王子』らしく、カーディス君に媚び(へつら)い、下の者達には傲慢に振る舞う。


 能力だって乏しく、本来なら全ての人間に与えられている能力……私達(・・)は『祝福(ギフト)』と呼んでいるけど、それを扱うことすらできない。要は、才能がないんだけどね。


 ……まあ、マナはこの世界で誰よりも持っているし、持ち合わせている『祝福ギフト』だって、とんでもない能力を秘めていることは間違いないんだけど。まさに宝の持ち腐れだよ。


「……心配せずともよい。いないのであれば、作ればいい(・・・・・)のだ」

「へえ……」


 どうせ、どこか適当な奴を隠し子(・・・)ってことにして、王位継承権でも与えるつもりなのかな。

 それって、デハウバルズ王国としてどうなのか疑問だよね。王家の血が途絶えるってことだし。


「まあ、君がそれでいいなら私は構わないけど」


 私の役割は無事にこの物語を最後まで導くことであって、その後(・・・)のことは知ったことじゃない。

 ノルズの民はその先(・・・)を求めているけど、私は神自身じゃないんだ。


 そういうのは、本物の神(・・・・)に頼んでよね。


 オマケにさあ……父上なんて、勝手に自分の命を捧げるとか、普通に重いんだけど。

 デハウバルズ王国に滅ぼされたのは、ただ自分が無能なだけのくせに、後始末を押しつけないでほしい。


 本当に、この百年近く(・・・・)、苦労させられっぱなしだったよ……。


 ま、いいか。

 この物語が無事完結したあかつきには、アイツ(・・・)の願いも叶って、死んだ父上の悲願も達成することになるんだし。


「とにかく、あと三か月もないんだから、ちゃんと準備しておいてよね」

「う、うむ。分かっておる」

「それじゃ」


 私は謁見の間から姿を消し、一瞬で自宅であるサルソの屋敷に転移すると。


「お帰りなさいませ、坊ちゃま」

「ああうん。いい加減その『坊ちゃま』という呼び方、やめてくれないかな」

「いいえ。私にとって、坊ちゃまはいつまでも坊ちゃまですから」


 深々とお辞儀してそんなことを(のたま)う執事のカスパーに、僕は顔をしかめる。

 本当にもう……僕だって百歳以上なんだから、人間(・・)だったら(・・・・)二回目の人生を繰り返してるんだけど。


「それで……上手くいきそうですかな?」

「そうだね。ちょっと軌道修正が必要だけど、あとはエイバル君がなんとかするんじゃない?」

「っ! ……あの外道の末裔が、ですか」


 エイバル王の名前を出しただけで、普段は飄々(ひょうひょう)としているカスパーも、鬼の形相に変わる。


「まあまあ。どうせ()の物語が完結すれば、それで終わるんだから」

「……そうでしたな」


 とにかく、長い年月をかけてようやくここまで来たんだ。

 私は、ただ見守るだけ。


 なのに。


「あは♪ どうしてかな……」


 私の脳裏に浮かぶのは、ハル君がこの物語を別の結末に導く未来。

 ノルズの民の悲願を叶えるために……()の物語を結末へと導くためにのみ存在する私が、なんでそんなことを……。


 でも。


「ハル君なら、きっと……」


 私は絶対に叶わない願いを、願わずにはいられない。

 ハル君が、そんな未来を作ってくれることを。


 ――私の運命を、ぶち壊してくれることを。

お読みいただき、ありがとうございました!


今回の幕間は、第三章ラストで明かされた黒幕、ユリシーズの視点でお送りしました!

彼がどんな思惑でこのようなことをしているのか、その一端がここで明かされたところです。

果たして、これからユリシーズはどのように絡んでいくことになるのか、また再びハロルドと手を取り合う時が来るのか、どうぞお楽しみに。


そしてそして! 最終章は本日夜10時頃を目途に開始します!

『エンゲージ・ハザード』の本編がいよいよ開始される時、ハロルドとサンドラはどうなるのか?

物語どおり、婚約破棄をしてしまうのか? また、主人公不在となったこの状況をどうするのか、どうぞ楽しみにしていてくださいませ!



また、皆様から『無能の悪童王子』へたくさんの応援をいただき、ありがとうございます!

おかげさまで、ハイファンタジー日間2位になることができました!

本当に、ありがとうございます!


引き続き日間表紙……いえ、日間1位に返り咲くため、どうか皆様のお力をお貸しいただけないでしょうか!


もしお力をお貸しいただけるのであれば、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


皆様の応援が、本作品を継続する原動力となります!

どうか、よろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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