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とうとう謎の男が僕の前に現れました。

とても……とても大切なお願いがあります!

どうか、あとがきまでご覧くださいませ!

「お……俺の、負け……です……っ」


 決闘が始まってから、三時間。

 とうとうウィルフレッドは、嗚咽(おえつ)を漏らして敗北を認めた。


「あー、疲れた」


 僕は天井を仰ぎ、ポツリ、と呟く。

 いくらコイツが(くず)だとはいえ、こんな勝ち方は気分が悪いよ。


 闘うなら、お互いを尊敬して高め合い、全力を尽くして競い合うような、そんな試合がいい。


「ハル様、お疲れさまでした」

「サンドラ、ありがとう」


 笑顔で迎えてくれたサンドラを見て、僕は顔を(ほころ)ばせる。

 他にも、モニカやリゼ、クリスティア、カルラ、リリアナ、ユリが、同じように微笑んでくれた。


 僕は、この『大切なもの』を守れて、本当によかった。


「さて……約束どおり、オマエ達は衛兵に突き出す。その後はどうなるか分からないけど、ただで済むとは思わないことだ」

「「…………………………」」


 今も涙を(こぼ)してうなだれるウィルフレッドを慰めているララノアとフレデリカは、暗い表情でうつむく。


 おそらくララノアは、シェルウッド王国に強制送還され、王族としての地位を剥奪されるだろう。

 何といっても、聖王国を敵に回すような真似をし、王国を危機に(さら)したわけだからね。


 フレデリカも、よくて実家を勘当。最悪、処刑されることも覚悟しなければいけない。

 ウィルフレッドの指示に従ったとはいえ、王族の暗殺に加担したんだから、ただで済むはずがないよね。下手をすれば、実家のマーシャル公爵家も取り潰しになるかも。


 まあ、全てはウィルフレッドとの恋に溺れたことによる、自業自得でしかないんだけど。


「じゃあ、そろそろここから出ようか。今さら実技試験の続きってわけにはいかないだろうから」

「はい!」


 僕達はウィルフレッド達を拘束し、ダンジョンの出口へと向かう。

 これで『エンゲージ・ハザード』の開始どころか、チュートリアルさえ始まらない状態で終了してしまったわけなので、ある意味、前世の時よりも早いサービス終了の憂き目に遭ったってことだよね。


 でも。


「ふふ。ハル様、すごく素敵でした」

「えへへ。ハルとボクの勝利だね」

「お疲れさまでした。お部屋に戻りましたら、このモニカが殿下を癒して差し上げます。それはもう、あんなことやこんなことまで」

「モニカ!?」


 主人公にとってはあり得ないバッドエンドでも、こんな『大切なもの』に囲まれた未来が待っているラストなんて、噛ませ犬以下のハロルドからすれば、ハピエン以外の何物でもないよね。


 僕はみんなの笑顔を見つめ、頬を緩めた。


 その時。


「あは♪ あれで主人公(・・・)なんだから、しょうがないよね」

「っ!?」


 突然、後ろからささやかれ、僕は勢いよく振り返る。

 そこには……口の端を吊り上げる、ユリがいた。


 しかも、いつの間にか周囲には誰もいなくなっている。

 サンドラも、モニカも、キャスも、リゼも、クリスティアも、カルラも、リリアナも。


「おめでとう、ハル君。やっぱり君はすごいや」

「ユリ、お前……」


 彼は、確かに言った。

 ウィルフレッドのことを、『主人公』だと。


「いやあ、せっかくあの馬鹿を主人公(・・・)にしてあげようとしたのに、これじゃ話にならないね。物語の書き換えも視野に入れないと」

「ユリ! お前!」

「あは♪ そんなに大声出さなくてもいいじゃない。それよりさあ……私、君に提案(・・)があるんだ」


 ユリの奴は口元に手を当て、クスリ、と(わら)う。


「ねえ……アイツに替わって、君がこの物語の主人公(・・・)をやってみないかい?」

「…………………………は?」


 あまりにも突拍子のない提案に、僕は思わず呆けた声を漏らす。

 主人公を変える? ウィルフレッドから、この僕に?


「だって、君のほうが間違いなく主人公(・・・)してるよね。それに、このままじゃ三か月後の本編開始(・・・・)までに、あの馬鹿は登場できないじゃないか」


 やっぱりユリは、ここが『エンゲージ・ハザード』の世界だってことを、理解している。

 だけど、どうして? なんでそのことを?


 ただ、一つだけ分かったことがある。


「お前が、“ウリッセ”……なんだな……?」

「そうだよ。私が“ウリッセ”」

「っ!?」


 ユリ……いや、ウリッセは、いきなり顔を変化させた。

 その顔は、入学式のあの日、ウォーレンに絡まれていたあの男と全く同じだった。


「あ、心配しなくていいよ。この顔は偽物で、君のよく知ってるいつものこれ(・・)が、私の本当の顔(・・・・)だから」

「……それを、僕に信じろと?」

「あは♪ 君に嘘なんて吐かないよ」

「いや、どの口が言ってるんだよ」


 ついいつもの調子で、僕はツッコミを入れてしまった。

 だけど、僕は今も、ユリの正体がウリッセだったなんて信じられずにいる。


「それで、どう? 君が主人公(・・・)になって、ウィルフレッドが噛ませ犬になるなんて、君にとっては最高に『ざまぁ』じゃない?」

「…………………………」


 確かにユリの言うとおり、僕が主人公に成り上がるなんて、『エンゲージ・ハザード』という物語にとって最高の『ざまぁ』かもしれない。

 それこそ、前世の時には大量にあった『ざまぁ』モノのラノベみたいな展開に、心が(おど)ってしまう。


 だけど。


「つまりそれって、僕が『世界一の婚約者を連れてくる』ということになるんだろう?」

「そりゃそうだよ。そういう(・・・・)物語(・・)なんだから」


 なるほど……それなら、答えは一つしかないね。


「断る」


 僕はそう、はっきりと告げた。

お読みいただき、ありがとうございました!

皆様から『無能の悪童王子』へたくさんの応援をいただき、ありがとうございます!


いよいよクライマックスを迎え、明日のお昼更新で第三部完結となります!

どうぞお楽しみに!


ついては、このまま第三部終了まで日間表紙のまま駆け抜けるため、どうか皆様のお力をお貸しいただけないでしょうか!


もしお力をお貸しいただけるのであれば、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


この作品を継続するためにも、なにとぞ……なにとぞ、よろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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