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主人公との二度目の闘いが、幕を開けました。

「ただし、僕が勝利した際は、オマエの知っていることを全て話せ。どうしてオマエがそこまで次の王に固執するのか。なぜ国王陛下はオマエを支持しているのかを。そして……オマエの裏にいる、“ウリッセ”という男の正体について」


 コイツが主人公ではなくなってしまったのは、エイバル王と“ウリッセ”という男が関与していると踏んでいる。

 特に“ウリッセ”は、リゼの兄だったカペティエン王国の王太子ジャンやコイツに、UR武器やレアアイテムを惜しげもなく授けるような奴だ。きっと何かを目論んでいるに違いない。


 ……いや、その二人こそが、この『エンゲージ・ハザード』という世界を狂わせている、張本人だろう。


「どうだ? 僕のこの申し出を拒否すれば、オマエに残されているのは破滅のみ。さすがの国王陛下も、今回ばかりは(かば)い立てできないぞ」

「うふふ、そのとおりです。もしうやむやにされたら……バルティアン聖王国は世界中の国々に呼びかけ、デハウバルズ王国を地図から消して差し上げます」


 ありがたいことに、クリスティアがアシストしてくれたよ。

 まあ、聖王国の象徴である聖女が危険な目に遭わされたんだ。きっと聖王国も、それくらいのことはするだろうけどね。


「難しく考える必要はない。オマエが僕に勝てばいいだけの話だ」


 ここまでお膳立てしたんだ。もうオマエに残された選択肢は、僕に勝利する以外にないんだよ。


「……分かった」

「つまり、それは」

「ああ。俺はハロルド……貴様と闘う。いや、(ほふ)ってみせる。だが、先程の条件は必ず守れ」

「分かっているよ」


 というか、譲歩してやったのはこっちだっていうのに、偉そうだな。

 まあ……約束は、果たされることはないだろうけどね。


 ――だって、この僕が勝利するから。


「じゃあ、ルールは一年前と同じでいいか。オマエも好きなだけ武器を使えよ」

「ああ、そうさせてもらう。俺は……絶対に負けられない」


 ウィルフレッドは恥ずかしげもなく、次々と武器を取り出す。

 だけど、コイツ……これだけの武器を、どこにしまっていたんだ? ……って。


「お、おい、それは……」

「今さら卑怯だとか言うなよ。俺のこの『インベントリ』には、入手した全ての武器とアイテムが格納されている」


 ああ、うん。主人公だから、『インベントリ』を持っていてもおかしくはない……のか?

 いずれにせよ、コイツは武器やアイテムを使い放題ってことだ。


「マリオン。お前の『戦斧スカイドライヴ』をこちらに寄越せ」


 ウィルフレッドは今まで無言で通路の端に(たたず)んでいたマリオンに向け、右手を差し出す。

 どうやら本当に、なりふり構わず僕を倒しにかかるみたいだな。


 だけど。


「……お断りいたします」

「っ!? なんだと!」


 意外なことに、マリオンは明確に拒絶した。

 まさかの裏切りに、ウィルフレッドは声を荒げる。


 いや、僕も驚いたよ。

 少なくともマリオンは、ウィルフレッドと『恋愛状態』になっていることは間違いない。


 ここまで好感度が上がっているのだから、主人公を裏切ったりするなんてことはあり得ないんだけど。


「申し上げておきます。私は今回の件に関して、一切関与していません。なので、あなた様に武器をお渡ししてしまうと、私も共犯であるとみなされてしまいます」


 ああ、なるほど。

 確かにマリオンは、ここまで一度もウィルフレッド達のように僕達を攻撃や妨害をしたりしていない。


 それは、双頭獣オルトロスや九門蛇ヒュドラとの戦闘においても。


「マリオン! あなた!」

「何ですか? ララノア様は、私におっしゃいましたよね? 『没落貴族が、ウィル様のお情けで(そば)に置いてもらっている分際で』と。なら、その情けはもう私には不要です」


 ララノアが顔を真っ赤にして吠えるけど、マリオンはどこ吹く風で、ふい、と顔を背けた。

 その態度を見て、ようやく理解した。


 つまりこれ、ヒロインの『嫉妬状態』だ。


 『エンハザ』では定期的に『恋愛状態』のヒロインとの会話(チャット形式)をしておかないと、()ねてしまうのだ。

 こうなると、主人公は何度も会話を繰り返したりプレゼントを上げたりして機嫌を取らない限り、いずれ『恋愛関係』が破綻してヒロインを使用できなくなる。


 僕も『恋愛状態』にしたヒロインが多くなり過ぎたせいで、チャットのためにチケットを大量購入して、あっという間にバイト代が消えていったなあ……。(遠い目)


 まあ、結局のところウィルフレッドがこの事態を招いたんだから、まさに自業自得だよね。


「あーあ……オマエにとって初めて仕えてくれた専属侍女だというのに、(ないがし)ろにしてきたんだな。裏切られて当然だよ」

「っ! だ、黙れ! あのような女、この俺には最初から不要だったんだ! マリオン! 貴様の顔など見たくもない! 今すぐ消えろ!」

「……かしこまりました」


 ウィルフレッドの言葉を受け、マリオンは唇を噛んでお辞儀をした。

 あれだけ尽くしたっていうのに、最後は(みじ)めだな。


「なあ、もう茶番は終わったか? いい加減、始めたいんだけど」

「っ! 言われなくとも!」


 ウィルフレッドが『英雄大剣カレトヴルッフ』を手にし、正眼の構えを取る。

 その瞳に、怒りの炎を(たぎ)らせて。メッチャとばっちり。


「キャス、よろしくね」

「えへへ、任せて! きっとボクが、ハルを守ってあげるから!」

「ああ。僕もお前を、絶対に守ってみせるよ」


 僕は『漆黒盾キャスパリーグ』……キャスと、言葉を交わす。

 さあ、相棒の気合いも充分。負ける要素はどこにもない。


「さあ……こい!」


 その一言で、僕とウィルフレッドの二度目の決闘が幕を開けた。

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