小物な主人公を追い詰めました。
お知らせと大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
「問題ない。ここにいる全ての者を始末すれば、誰もその事実を知る者はいない」
ウィルフレッドが顔を上げ、口の端を吊り上げた。
いや、この男は何を言っているのだろう。
既に五対三の状況化で、どうやって僕達を始末するつもりだよ。
「諦めろ。もうオマエは、詰んでるんだよ」
「ハハハ……貴様こそ何を言っている。ひょっとして、俺達が三人しかいないから、勝ち目がないとでも思っているのか?」
「何……?」
ウィルフレッドの言葉に、僕は怪訝な顔を見せた。
「そもそもこの俺が、何の準備もなく、行き当たりばったりで貴様を始末しようと考えるわけがないだろう。俺は今日、全てを終わらせるためにここにいる」
「準備、ねえ……」
大層なことを言っているけど、どうせそれも失敗に終わるだけなんだけどなあ。
何も知らずに踊るウィルフレッド、まさにピエロだね。
「そろそろいいだろう……さあ! 姿を見せてやれ!」
ウィルフレッドが、通路の先の暗闇に向かって叫ぶ。
だが。
「……おい、どうした! なぜ姿を見せない!」
「おいおいウィルフレッド、大丈夫か? ここには僕達しかいないんだけど」
苛立ちを見せるウィルフレッドに、僕は肩を竦めて煽った。
それにしても……やっぱりコイツ、あえてこの場所で僕達を待ち伏せるために準備していたんだな。
確かにこのダンジョンで待ち構えるなら、袋小路になるここは最適の場所だからなあ。
もし同じようなことを考えるなら、僕もここで待ち伏せするよ。
その時。
「ふふ……まさか、この蛆虫を待っていたとでも?」
「「っ!?」」
いつもの輝くサファイアの瞳を血塗られた赤に変え、僕のサンドラが手足をもがれたウォーレンを引きずりながら現れた。
お、おかしいな……僕、サンドラがやり過ぎる前に止めるようにお願いしておいたはずなのに、どうしてこうなった?
「……あの男はフレデリカと共謀し、お嬢様やリゼット殿下を『躾ける』などと言っておりました」
「っ! ……そう、なら当然だね」
いつの間にか僕の背後にいたモニカの耳打ちに、僕の心が急速に冷えていった。
そうか……僕のサンドラを、躾けるだって? ふざけたことを。
「ハ、ハル様、ここに至るまでにあなた様を害そうとした輩がおりましたので、全て排除いたしました。で、ですが、お言いつけどおり、誰も殺してはおりません」
ひょっとしたら、やり過ぎたことを叱られると思ったんだろう。
サンドラは僕の顔色を窺いながら、おずおずと説明した。
「うん、ありがとう。絶対に大丈夫だってことは分かってるんだけど、それでも君が無事で、本当によかった」
「あ……は、はい!」
そんな彼女に労いの言葉をかけると、サンドラはパアア、咲き誇るような笑顔を見せ、瞳の色もサファイアに変えた。
よかった、いつもの彼女に戻ってくれたよ。
「もう……大変だったのよ? サンドラったらすぐ暴走するし、彼女の面倒を押しつけられるし」
「リゼ」
溜息を吐いて苦笑するリゼの隣で、肩を震わせてうつむくフレデリカ。
おそらく、サンドラの本当の強さを目の当たりにして、完全に怯えているんだろう。カーディスを捨ててウィルフレッドなんかに走ったせいで、馬鹿だなあ。
「そういうことだから、オマエの計画はこれで全て失敗ってことになるね」
「嘘だ……どうしてこうなる……俺は、今日という日のために、入念に準備を重ねてきたんだぞ……」
「知らないよ。……ただ、オマエならこの年末試験を利用して何か仕掛けてくることは分かっていたし、それでも、僕の『大切なもの』なら簡単に切り抜けられると信じていた」
サンドラやモニカの実力は『エンハザ』の登場キャラなんて足元にも及ばないし、リゼやクリスティア、カルラだってヒロイン中屈指の実力。リリアナなんて『ガルハザ』の主人公だからね。
みんなのことを誰よりも知っていて、誰よりも信頼しているのはこの僕なのだから。
「それで、次は何があるんだ? もちろん、オマエが何を用意していても、僕達が全部叩き潰してやる」
「ふふ……滑稽ですね。そもそもハル様を自分の手を汚さずに亡き者にしようと画策したり、聖女様を洗脳しようとしたりと、やっていることが小物過ぎて話になりません」
僕とサンドラはウィルフレッドを見つめ、嘲笑を浮かべる。
本当に、これが『エンゲージ・ハザード』の主人公だなんて、誰が想像するだろうね。
ゲームのシナリオでは、いつもヒロイン達のために身体を張り、どこか無自覚で受け身なハーレム主人公だったはずなのに、実際のコイツはひたすら野心と虚栄心が高く、ヒロインを蔑ろにする最低最悪な男。
……そういえば、『エンハザ』では最初から主人公は次の王を目指していたわけじゃなかったよな。
ヒロイン達のシナリオを進め、様々な事件や困難を乗り越えて、不幸な目に遭う彼女達を救うために王になるしかないと決意するんだ。
そう考えると、やっぱりウィルフレッドの行動は全ておかしい。
いくら何でも、『エンハザ』のストーリーとかけ離れ過ぎているんだけど。
「……ウィルフレッド、チャンスをやろうか?」
「っ!?」
僕のその一言で、ウィルフレッドが勢いよく顔を上げた。
「ここでもう一度僕と決闘し、オマエが勝利すれば今回の件、見逃してやる」
「っ!? ハル様!?」
サンドラが目を見開いて勢いよくこちらを向き、僕の手を強く握りしめる。
このまま衛兵に引き渡せばウィルフレッドは破滅するだけだというのに、信じられないといった様子だ。
だけど……ごめん、ちょっとだけ僕の我儘に付き合ってね。
「ただし、僕が勝利した際は、オマエの知っていることを全て話せ。どうしてオマエがそこまで次の王に固執するのか。なぜ国王陛下はオマエを支持しているのか。そして……オマエの裏にいる、“ウリッセ”という男の正体について」
お読みいただき、ありがとうございました!
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