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主人公が僕の『大切なもの』を連れて現れました。

「ああもう! こんなのどうすればいいんですかあああああ!」


 二体目の魔獣、“九門蛇ヒュドラ”の頭を一つ叩き潰し、リリアナが絶叫する。

 この魔獣の頭は全部で九つあり、既にユリが一つ、リリアナが三つ頭を叩き潰しているので、残るは五つ……のはずなんだけど。


「やっぱりまた増えた!」

「あははー。まあ、そうだね」


 僕はあえてアドバイスをせずに、防御に徹して二人の闘いを見守っている。

 これから先……『エンゲージ・ハザード』の本編が始まったら、それこそイベントが目白押しだからね。


 僕の(そば)にいるこの二人も、きっと色々と巻き込まれていくと思うから、何としてでも強くなってもらわないと。

 特にリリアナに関しては、『エンハザ』だけでなく『ガルハザ』のイベントだって控えてるんだ。戦闘だけでなく恋愛パートでもヒーロー達を攻略……攻略……できるのか?


 実際、ロイドなんかはリリアナの肉食っぷりを見てドン引きしてるし、きっと他のヒーローも同じような反応を見せるはず。今度ラファエルで試してみよう。


「ダメ! やっぱり増えて……」

「なら! 【アイスエイジ】!」


 リリアナが頭を潰し、またそこから生えようとしてきたところを、ユリが氷で塞ぐ。

 うんうん、いい判断だ。こうすれば、次の頭が出てこなくなるからね。


「リリアナ! 私が塞ぐから、頭を全部叩き潰して!」

「よーし! これならッッッ! 【ゴッドセント】!」

「ッ!?」


 いきなり天井から巨大な手が現れ、ヒュドラに叩き落とされる。

 (あわ)れヒュドラは頭部どころか全身をぺしゃんこにされ、さらには氷漬けにされて沈黙した。


 いや、リリアナメッチャヤバイ。僕、今までちょっと揶揄(からか)ったりしてたけど、今度から気をつけよう。


「だけど、これで魔獣は二体倒したし、残るは一体。ヒュドラ戦も終わってみれば圧勝だったし、次もきっと倒せるよ。……二人だけで」

「えええええ!? また私達だけ!?」

「横暴です! 鬼畜です! これはちょっとやそっとのお肉じゃ済まされませんよ!」


 二人から猛抗議を受けたけど、僕はこの決定を覆すつもりはない。

 そもそも、サンドラとの特訓に比べれば、全然楽勝だよ。


「ということで、異議は認めないので、頑張ろう!」

「うう……ハル君酷いよお……」

「絶対にお肉の追加報酬をもらうんだから……っ」


 半ベソをかくユリと、ブツブツと呪詛(じゅそ)のように唱えるリリアナ。お肉の追加ぐらいしてあげるから。

 二人をなだめつつ、僕達はダンジョンのさらに奥へと向かった。


 一応ここまで、マリオンは一切動きを見せていない。

 ただ僕の指示に従い、二人の戦闘を見守っているだけだった。


 でも、きっとこの女は何かを仕掛けてくるはず。

 その時まで、僕だけは気を抜くわけにはいかない。


 すると。


「……ハロルド殿下は、次の王を目指すのですか?」


 突然、マリオンがそんなことを尋ねてきた。

 明確にウィルフレッドの邪魔になると確信ができ次第、このダンジョンで亡き者にするつもりなんだろうか。


 さっきキャスが教えてくれたけど、思ったとおりこのダンジョン内の教師達が排除されたみたいだし、命を狙うにはもってこいなんだよね。

 ただし、『ガルハザ』の主人公であるリリアナのポテンシャルをまざまざと見せつけられて、それでもなお三対一という不利な状況で勝てる見込みがあるのなら。


「はっきり言っておく。僕は王の座になんて興味ないよ。だけど……ウィルフレッドが次の王になることだけは、絶対に認めない」

「そう、ですか……」


 僕の答えを聞き、マリオンはうつむき、ポツリ、と呟く。


「キャス」

「うん」


 いつでも対処できるように、キャスに合図して臨戦態勢を取る。

 あとは、そのタイミングが来るのを待ち構えるだけ、なんだけど……。


「あれえ?」


 目的の場所(・・・・・)に到着した僕は、思わず首を傾げた。

 きっとここまでに来る間に、攻撃を仕掛けてくると思ったんだけどなあ……。


 その時。


「【ウインドカッター】!」

「っ!?」


 通路の奥の闇の中から、風の刃が襲いかかる。

 僕は咄嗟に『漆黒盾キャスパリーグ』で防御したけど……どうやら、お出ましみたいだ。


「ああもう! なんで防ぐんですか!」


 癇癪(かんしゃく)を起こして現れたのは、長い耳が特徴的な、一人の少女。

 『エンハザ』のメインヒロインの一人である、ララノア=エリンだった。


 となると、当然アイツもいるよね。


「ララノア。一応は俺の兄になるのだから、いきなり攻撃を仕掛けてはまずい。ハロルドは、不慮の事故(・・・・・)で死ぬのだから。君達もそう思うだろう?」

「「はい……」」


 瞳に光を無くしたクリスティアとカルラを引き連れ、涼しい表情のウィルフレッドが姿を現した。

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