それぞれのダンジョン攻略③ ※クリスティア=サレルノ視点
とても……とても大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
■クリスティア=サレルノ視点
「ここは俺に任せてくれ! 【英雄の紋章】!」
現れた三つ首の犬の魔獣に対し、チームリーダーを務めるウィルフレッドが、剣を構えてたった一人で挑む。
ですが……自らリーダーを買って出ておきながら、これではただの単独行動ではないですか。
「む……私達の実力を信用していないというのか……っ」
勝手な行動をする第四王子を睨みつけ、カルラがギリ、と歯噛みした。
彼女からすれば、あの男が取った行動は侮辱以外の何物でもない。
ハア……本当に、ハロルド殿下とは何もかも違いますね。
あの御方は、私達を守ることに関しては絶対に譲りませんが、それと同じように私達のことを信頼し、他の全てを預けてくださいます。
彼の背中に守られている時は、どれほど幸せであることか。
彼に頼られてこの力を振るうことが、どれほど満たされることか。
一方で、ウィルフレッドはただ私達に実力を自慢し、独りよがりな行動をするばかり。正直不快でしかありません。
とはいえ。
「ウィル様……っ!」
瞳を潤ませて感極まった表情で見つめる、残る一人のチームメンバー。
彼女の名は、“ララノア=エリン”。西方諸国中央にある“光の森”を治める、エルフと呼ばれる稀少な種族の国、“シェルウッド王国”の第三王女です。
ウィルフレッドや私達とは別のクラスなのですが、残念ながらあの男の毒牙にかかってしまったようで、今ではあのように心酔しきっております。
本来、エルフという種族はプライドが高く、人間を見下すところがあるのですが……生まれてからずっと光の森から出たことがないようですので、世間知らずだったということでしょう。
王族として見聞を広めさせるためにこの王立学院に留学させたというのに、シェルウッド王国にとっては何とも皮肉な結果になってしまいましたね。
「これで……終わりだああああああああああああああああッッッ!」
「「「ッ!? ギャウンッッッ!?」」」
剣で胴体を刺し貫かれ、三つ首の犬の魔物が絶命する。
ハロルド殿下の話では、ウィルフレッドが持つ剣は『英雄大剣カレトヴルッフ』と呼ばれるものらしく、この世界でも最強の威力を誇る伝説の剣なのだとか。
そのようなものをあの男が持つなんて、宝の持ち腐れもいいところですが、デハウバルズの国王であるエイバル=ウェル=デハウバルズはあの男を寵愛しているのだとか。
こう申し上げては何ですが、見る目がないとしか言いようがありません。
実際、聖王国が調査した結果によれば、デハウバルズ王国内の有能な貴族達は第二王子のラファエル殿下あるいはハロルド殿下を支持されており、ウィルフレッドに付き従う貴族は、数こそ二人よりも多いものの、ただ歴史が古いだけの、取るに足らない小物ばかり。
いずれエイバル王が崩御すれば、その時は今のパワーバランスが一気に崩れ、ラファエル殿下とハロルド殿下のいずれかが、次の王となるでしょう。
私としてはハロルド殿下に王となっていただきたいところですが、残念ながらあの御方はそのような地位に興味がないご様子。
とはいえ、ハロルド殿下とラファエル殿下の関係は悪くないようですし、どちらが王となられても聖王国にとって問題にはならないでしょう。
それに……ハロルド殿下が王にならなければ、まだチャンスがあるかもしれませんので。
「みんな、見ていてくれたか!」
「はい! さすがはウィル様です!」
「「…………………………」」
このような茶番に付き合いきれない私とカルラは、二人に白い目を向けます。
いい加減、早くハロルド殿下と合流した……い……っ!?
「……聖女だか聖騎士だか知らないけど、その視線、私のウィル様に無礼よ。精霊達、二人を跪かせて」
「これ、は……っ」
抗うことができず、私とカルラは命令どおり跪く。
「さあ、この馬鹿な二人の再教育を始めるわ。精霊達、彼女達の心を全てウィル様に捧げさせるのよ」
「う……く……っ」
隣のカルラが、必死に抵抗しようともがく。
しばらく呻き声が続き、そして。
「……カルラ=デルミニオ、ウィルフレッド殿下に絶対の忠誠を」
「同じくクリスティア=サレルノは、いつもウィルフレッド殿下とともに」
私達二人は、ウィルフレッドに忠誠を誓いました。
「ハハハ……そんな堅苦しくしなくてもいい。俺達は王立学院の同級生だし、それに……俺と君との仲じゃないか」
「はい……」
そのような仲になった覚えはありませんが、どうやらこの男の頭の中ではそういうことのようです。
それと、ララノア=エリン……あなたが私達をこのように操っているのに、どうして嫉妬で顔を歪めているのでしょうか。
ウィルフレッドの寵愛が薄れることを恐れるのなら、最初から拒否するか、他の手段を選べばよろしいのに……って、それもできませんか。
そんなことをすれば、ウィルフレッドが離れてしまうかもしれないから。
情けない限りですが、異性を愛してしまうと、このように縛られ、盲目になってしまうのですね。
……私も、人のことは言えませんが。
「聖女様……いや、クリスティア、知っているか? 今頃あの『無能の悪童王子』やアレクサンドラ嬢は、不慮の事故によって命を落としているはずだ」
「…………………………」
「まあ、あんな男でも兄。せめてこの俺の手で、看取ってやらないとな」
醜悪な笑みを浮かべ、ウィルフレッドが私の手を取る。
このまま付き従っていれば、自ずと指定の場所にたどり着けそうですね。
操られているはずなのに、どうして元の人格を保っているのか……ですか?
うふふ、全てはハロルド殿下のおかげです、とだけ。
私は二人に気づかれないようにクスリ、と嗤うと、薄暗いダンジョンの中を進んだ。
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