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不安しかないチームですが、頑張ることにしました。

「ええー……」


 残念ながら僕のチームメンバーは、ユリとリリアナ、そして、ウィルフレッドの専属侍女であるマリオンだった。


「あの女……この期に及んでまだ、私の(・・)ハル様の邪魔をするつもりですか」

「いやあ、今回ばかりはさすがに言い過ぎじゃないかな」


 険しい表情を見せるサンドラを、僕は苦笑しながらたしなめる。

 チーム分けは教師によるランダムだし、いくら何でも意図的ってことはないだろう。ないよね?


「それより、サンドラこそ大丈夫? その……」

「ハル様がご一緒ではないのですから、大丈夫ではありません。苦痛です。つらいです。耐えられません。王立学院に猛抗議いたします」


 いや、僕が心配したのは、カーディスの元婚約者であるフレデリカが一緒だからであって、僕達が離れ離れになったことを指しているわけじゃないんだけど。余計に心配になってきた。


「モニカ、リゼ、お願いだからサンドラをよろしくね」

「お任せください。お嬢様が暴走しないよう、常に目を光らせておきます」

「……まあ、サンドラのハルに対する想いは異常だから、仕方ないわよね」


 なんでリゼは、僕をジト目で見るかなあ。

 勘弁してほしい。


「それと……聖女様、カルラ殿。お二人も気をつけてください。きっとアイツのことですから、よからぬことを考えているはずです」

「うふふ。ご心配くださり、ありがとうございます。カルラともども、『(けが)れた王子』とは距離を置きます。聖女が(けが)れては、冗談では済みませんから」

「あの者が不届きな真似をすれば、この『滅竜剣アスカロン』の(さび)にします」


 うわあ、クリスティアの毒舌が炸裂(さくれつ)したよ。

 『(けが)れた王子』とかけるなんて、洒落(しゃれ)が利いてるね。


 カルラもカルラで、放っておいたらすぐにでもウィルフレッドに斬りかかりそう。

 真っ直ぐな性格をしてるから、ハーレムとか絶対に受け入れなさそうだし、アイツとは相性最悪だろうなあ。でも、『エンハザ』ではヒロインとしてハーレムの一員になっているんだよね。複雑。


「じゃあ、みんな本当に気をつけてね」

「そんなに何度も言わなくても分かっているわ。心配性ね」


 念押ししたら、リゼに苦笑されてしまった。

 だけど、いつもはみんなと一緒だから僕が守れるけど、この実技試験では僕が(そば)にいることができない。心配するのも当然だ。


「大丈夫。みんな、あなたの気持ちは分かっているから、絶対に無理したりなんかしないわ。それより、あなたのほうこそ気をつけなさいよ?」

「あ、あはは……」


 僕の胸にとん、と拳を当てるリゼ。

 まあ、これ以上の心配は逆に迷惑でしかないか。


「それじゃ、みんな頑張ろう! そして……全員笑顔で、無事に実技試験が終えよう!」

「「「「「おー!」」」」」


 掛け声をかけてから別れ、各々のチームメンバーと合流……の前に。


「モニカ、聖女様」


 僕は、二人を呼び留めた。


 ◇


「……マリオン=シアラーです。どうぞよろしくお願いします」


 僕達のもとにやって来たマリオンが、無表情で深々とお辞儀をする。

 サンドラに完膚なきまでに打ちのめされて以降、この女が僕達に絡んできたことはなかったけど、入学式の日のウィルフレッド主催のパーティーでも暗躍していたことは、セドリックの話やウォーレンの取り巻き達の証言からも明らかとなっている。


 今回は、どんな手で僕達の足を引っ張ってくるのかな。


「……悪いけど、私は君とよろしくするつもりはないから」

「あ、あのあの! その……え、えへへ……」


 顔をプイ、と背け、明確に拒絶するユリと、どうしていいか分からず、とりあえず愛想笑いを浮かべたリリアナ。うん、いきなりチームの雰囲気は最悪だ。


「今さらだけど、僕はハロルド。よろしく頼むよ」

「…………………………はい」


 僕が差し出した右手を見て躊躇(ちゅうちょ)するマリオンだけど、おずおずと右手で握手を交わした。


「それで、実技試験は学院内に設置されている地下ダンジョンにいる魔獣を三体倒せばいいんだけど……みんな、用意はいいかな?」

「もちろん!」

「魔獣のお肉、食べられるかなあ……」

「…………………………」


 フンス、と意気込むユリと、よだれを垂らすリリアナ、それに無表情で頷くマリオン。

 ユリとリリアナは実戦経験がないし、マリオンもいつどんな行動に出るか分からない。おかげで僕は、不安で一杯だよ。


「じゃ、じゃあ行くよ。ハロルド組、行きます」


 ダンジョンの入り口で試験官の先生に宣言し、僕達はいよいよダンジョンに足を踏み入れる。


「うわあああ……!」


 薄暗いダンジョン内は松明(たいまつ)が通路に等間隔で設置されており、そよぐ冷たい空気と少し不気味な雰囲気に、僕は思わず声を漏らした。

 いや、王宮内の遺跡にはキャスと一緒に潜ったけど、ここ王立学院のダンジョンは前世のいわゆるダンジョンRPGの様相を呈していて、ゲーマーなら胸を躍らせるのも仕方ないよね。


「敵を倒したら、仲間になったりするかな」

「ハル君……さすがにそれはないんじゃないかな」


 僕の呟きを耳聡く聞いていたユリが、白い目を向ける。

 いやいや、RPGではモンスターや悪魔が仲間になるの、定番だよね? 一応この世界も元は恋愛スマホRPGだし。


 などと考えていると。


「お、早速お出ましか」


 僕達の前に現れたのは、一体の魔獣。


 『エンハザ』年末試験イベントに登場する三体のレイドボスのうちの一体、“双頭獣オルトロス”だった。

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