王都の外へ出かけました。
とても……とても大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
「ハア……退屈ですわ……」
夏休みも一か月を過ぎ、リゼがテーブルに突っ伏して溜息を吐く。
「しょうがないよ。こんなに暑いから、本当は海にでも泳ぎに行きたいところだけど、残念ながら君はカペティエン王国の第一王女。何かあったら、それこそ大変なことになるからね」
モニカが特別に作ってくれたミントとハチミツ、それにレモンの入った紅茶を口に含み、肩を竦めた。
というかこの飲み物、清涼感があって飲みやすいな。夏にぴったりだよ。
「うふふ。でしたら、教会に行けば涼しいですよ?」
「お断りするわ。一応、カペティエン王国もバルティアン教会を支持しているけど、私自身はそこまで敬虔な信徒じゃないもの」
「あら、残念です」
とか言いながら、澄ました表情でクリスティアもお茶を口に含んだ。最初からその気はなかったらしい。
「そういえば、ユリ達は?」
「それでしたら、今日もリリアナ様のお付き合いで、屋台巡りをするとのことです」
「うわあ……彼女、よく飽きないね……」
モニカの言葉に、僕は呆れた声を漏らす。
どれだけ肉が好きなんだよ。このままの食生活を続けたら、将来太る……はずなのに、あれだけ食べているにもかかわらず、体型が一切変わらないんだよなあ……。
これも彼女が『ガルハザ』の主人公だから、【ダイエット】というチートスキルでも備わっているんだろうか。そんなスキル、『エンハザ』にもないけど。
「んー……リゼも退屈しているみたいだし、ちょっとだけ王都の外に出てみようか。日帰りなら、特に危険もないだろうし」
「! いいですわね!」
ようやく退屈から解放されると思ったからか、リゼが瞳をキラキラと輝かせる。
まあ、王都の外に出たからって何もないけど、前世で言うところの車でドライブだと思えば悪くない選択だな。
「ハロルド殿下、すぐに馬車の手配をいたします」
「うん、お願いするね」
ということで、僕達はモニカに手配してもらった馬車に乗り込み、王宮を出て王都の外へと向かう。
「あら……あれ、リリアナ達じゃない?」
「あ、本当だ」
リゼの指差した先には、屋台で何本も肉串を手にしてご満悦のリリアナと、猛抗議をするロイドを苦笑しながら止めるユリの姿があった。
あの三人も、この一か月で随分と仲良くなったなあ。ユリは相変わらず隙を見つけては、僕の傍にべったりだけど。
「早く行きましょう。ユリシーズ様達に見つかってしまったら、面倒なことになります」
「あ、あははー……」
サンドラにとって天敵とも言えるユリだから、こちらに合流させまいと必死だよ。
心配しなくても、リリアナのおかげ(?)でこの馬車に気づかれていないから。
ということで。
「……何もありませんわね」
「そりゃそうだよ。王都の外なんて、こんなものじゃない?」
城門の外に広がる景色は、ただ草が生い茂った平原が見えるだけだった。
いや、いざ戦となった場合、敵を迎撃するために防御できるようなものがあったら、戦略上問題があるから仕方ないよね。
「ハロルド殿下、ここから少し進んだ場所に小川がありますので、そちらへ行ってみてはいかがでしょうか」
「あ、いいね」
モニカの提案を受け、僕達を乗せた馬車はその小川を目指す。
だけど。
「これ……小川じゃなくない?」
どう見ても、川幅が百メートル近くあるよね。というかこの川、“テムシス川”じゃないか。
ちなみにテムシス川は、王都カディット内を横断するように流れている川で、生活用水としてだけでなく、流通の要所となっており、まさに王国の生命線と言っても過言ではない。
「専属侍女の冗談に付き合うのも、主としてのたしなみです」
「あ、そう」
「ハロルド殿下が、こんなにも冷たくなってしまわれました……もう私はお払い箱なのですね」
「ハイハイ。そういう冗談はいいから」
というか、僕がかけがえのない君にそんなことを絶対にするわけがないこと、分かってるくせに。
まあ、こんな冗談を平気で言えるだけの関係であることの証なんだけどね。
とはいえ。
「うーん……風も気持ちよくて、景色がいいね」
「そうでしょう。このモニカめを、もっと称賛してもよろしいのですよ?」
ちょっと褒めたらすぐこれだよ。
ただでさえ大きいんだから、もう少し胸を張るのは控えめにしたほうがいいと思う。
「ハル! ここでお茶にしますわよ!」
「あ、いいね」
リゼの提案という名の命令どおり、僕達は地面にブランケットを敷いて、お茶を楽しむことにした……んだけど。
「……こんなところにメイド服を着た女性が歩いているなんて、珍しいね」
「そうですね。どうやらあの者の記憶力は、一か月が限界のようです」
僕とサンドラは、メイド服を着た三つ編みの女性……マーガレットの専属侍女を見て、肩を竦めた。
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