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誇りを失いし者 ※ラエルテス=ハーザクヌート=ストーン

昨日はとうとう『ただの村人の僕が、三百年前の暴君皇子に転生してしまいました』が発売!

どうか、あとがきまでご覧くださいませ!

■ラエルテス=ハーザクヌート=ストーン視点


「行ってしまったな……」

「はっ……」


 我が息子を乗せた馬車が見えなくなり、私はポツリ、と呟く。

 あの子がここまで私に対して自分の思いを告げたのは、十五年前に生を受けてから、初めてのことだ。


 ユリシーズの成長を嬉しく思いつつ、少々寂しい思いもある。

 何せ、最愛の妻を失った今、息子こそが私の唯一の心の()り所であったのだから。


「……お館様、よう決断なさいました」

「そうだな」


 先代より仕える侍従である“カスパー”の言葉に、私は頷いた。

 彼にはずっと、ユリシーズを独り立ちさせるようにとせっつかれていたからな。


 我がストーン家……いや、ノルズの王の称号“ハーザクヌート”の名を持つ者として、ユリシーズは必ず旅をせねばならない。


 ――ノルズの民を導く、真の王(・・・)となるために。


 ◇


 かつてブリント島を支配したノルズ帝国は、デハウバルズ初代国王バトラーズ=ウェル=デハウバルズにより、最北の地サルソへと追いやられた。


 ……いや、正しくは、このサルソのみかろうじて許されたと言ったほうが正しいか。


 かつてあれほど栄華を誇っていたノルズ帝国が、今ではこのような作物もろくに育たない極寒の地で、細々とした暮らしを余儀なくされている。

 それでも、残されたノルズの民はこの地で生きることを許されたのだ。これ以上の贅沢は言えない。


 それからは貧しいながらも慎ましく、(たく)しく生き延びた我々は、三百年経った今も、こうしてノルズの血を残してきた。


 ――いずれ訪れるであろう、ノルズ帝国の再興を夢見て。


 とはいえ、ここまでの道程は決して平坦ではなかった。

 ノルズの民による反乱を恐れ続けるデハウバルズ王国は、常に我々を警戒し、監視役として歴代の騎士団長を隣の領地に配置している。


 本来、騎士団長というのは王の(そば)で守るのが使命であるが、デハウバルズ王国においてはこのサルソの防衛線を守備することこそが任務。

 結果的に、それが王を守ることになると考えれば、騎士団長の役目としてあながち間違ってはいないが。


 いずれにせよ、この私がデハウバルズ王国を打倒するようなことはない。

 だから、このような警戒はそれこそ無用というものではあるのだが、歴代の騎士団長は、事あるごとにちょっかいをかけてくる。


 ある時は騎士達を賊に変装させてサルソの領内を荒らして回り、サルソを通過する他の貴族がいれば、それを襲撃した。

 もちろん、これらの行動はサルソに攻め入るための口実を得るためだ。


 といっても、そもそもサルソはブリント島最北端の地であり、訪れる者などほぼいない。

 最も重要である街も高い城壁に覆われているため、盗賊が現れたとて被害などないに等しい。


 そういうことなので、いい加減無駄だということを理解してほしいものだが、馬鹿の一つ覚えのように、連中は愚直に挑発行為を繰り返している。

 しかも、そうすることが騎士団長としての地位を存続するための大切な役割であるらしく、ある意味(あわ)れだ。


 何より、過去にいた騎士団長の中にはそのような行為に異を唱えた者もいたが、王の不興を買ってしまい、騎士団長の座を剥奪され、没落してしまったが。


 とにかく、この私にできることはサルソを……ノルズの全てを守り抜き、あの御方(・・・・)に託すこと。

 それこそが、このノルズを敗北へと追いやり、三百年以上もの間、同胞を苦しめてしまった愚か者の役目……いや、()なのだから。


 ◇


「……ユリシーズは、王都で上手くやっていけるだろうか」

「ご心配には及びません。坊ちゃまこそ、このサルソを……いえ、我々ノルズの民を導いてくださる御方。この地に戻られたあかつきには、きっと我々の誇り(・・)を取り戻してくださいます」

「そうだな……」


 カスパーの言葉にゆっくりと頷くが、私の胸の中には期待と不安が渦巻いている。

 王立学院での暮らしが、きっとユリシーズを成長させてくれると信じているが、一方で、不吉なことが起こるのではないかと、そういう気がしてならない。


 何より……ハロルド=ウェル=デハウバルズと共にいた、あの婚約者。

 彼女こそは、我々ノルズの神を(ほふ)りし者の末裔……いや、同胞(・・)と言ったほうが正しいか。


 いずれにせよ、三百年経った今もなお、デハウバルズの王族が同胞(・・)の寵愛を受けているのだ。一筋縄ではいかぬだろう。


「カスパーよ、後は頼んだぞ」

「お任せください。必ずや坊ちゃまを……真の王(・・・)を、お支えいたします」

「うむ」


 (かしず)くカスパーを見て頷き、机の引き出しからおもむろに短剣を取り出す。

 これは、ハーザクヌートの名を持つ者のみ持つことを許された、王の証。


「ユリシーズよ……お前の未来に、今度こそ(・・・・)幸あらんことを」


 私は鞘から短剣を抜くと、首元に当て、三百数(・・・)十余年(・・・)の生涯に幕を下ろした。

お読みいただき、ありがとうございました!

いつも『無能の悪童王子』へたくさんの応援をいただき、ありがとうございます!


本日は皆様へのお知らせと、お願いがございます!

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なにとぞ……なにとぞ、よろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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