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主人公のパーティーを阻止してやることにしました。

「……それでハロルド様、モニカ。どういうことなのか、ご説明いただけますでしょうか」

「「…………………………」」


 こんにちは、ハロルドです。

 僕は今、寄宿舎にある男女共用の交流スペースにおいて、目下正座中でございます。メッチャ足がしびれてる。


 理由? 聞くまでもないよね。

 相棒のキャスが僕を裏切って、サンドラに告げ口したんだよ。


 何度も『誤解だ』って説明しても、キャスの奴、『ふうん……だったら、サンドラに言っても問題ないよね?』なんて言って、サンドラと合流するなり速攻でバラされました。


「で、ですから、それは誤解です。僕にとってモニカ()『大切なもの』ではありますが、サンドラのそれ(・・)とは意味が違います」

「どう違うとおっしゃるのですか?」


 絶対零度の視線を向け、なおも問い詰めてくるサンドラ。

 だけど、ちょっとだけ機嫌が直ってる? なら、今がチャンスだ。


「もちろんです。僕の一番大切な君は、誰よりも特別な存在です。これだけは、神に誓います」

「ふあ!? そそ、そうですか……なら、仕方ありま……」

「そんな……私とのことは、遊び(・・)だったというのですか?」


 モニカ、ここで話をややこしくしようとするの、やめてもらえませんかね?

 というか、君だって早くこの状況から逃れたいだろう?


「ハル様」

「ほ、本当にそんなことはありませんから! そもそもモニカと遊んだ覚えも……モ、モニカもちゃんと説明してよ!?」

「ハア……ハルも結構無自覚なところがあるから、ある意味酷いよね……」


 おいキャス、それはどういう意味だよ。

 僕はいつだって、サンドラの気持ちには気づいているとも。


 結局、こんなやり取りを一時間も続ける羽目になったよ……。


 ◇


「……なるほど。あの(くず)、今度こそゴミ以下の存在に成り下がったということですか」


 ようやく機嫌が直ったサンドラが、口元に手を当てて頷く。


「はい。モニカはアイツのパーティーに潜入すると言い出しましたが、そんなことは認められません。なので、別の方法でアイツの企みを阻止しようと考えているんですが……」


 モニカやキャスと話をしていた時は、妙案は浮かばなかったけど、サンドラならいい策を思いついてくれるかもしれない。

 こう見えて、彼女は可愛くて強いだけじゃないのだ。


「例えば、学院にあの(くず)がよからぬことを考えていると告げて、阻止するというのは……?」

「それは無理でしょう。この学院が、エイバル王の寵愛を受けているウィルフレッドに逆らえるとは思えません。表向きは親睦が目的ですので、口出しする理由もないかと」

「そうですよね……」


 サンドラの提案については僕も考えたけど、いくら王族も他の生徒と同じ扱いとは言っても、それは所詮建前だ。

 結局、学院側はウィルフレッドの言いなりになるしかない。


「……なら、この学院以上の存在に働きかけてみては?」

「学院以上の存在って…………………………あ」


 そうか! その手があったか!


「この学院には、二人の兄……カーディス兄上とラファエル兄上がいます! それに、セドリック義兄上も!」

「はい。まずは、協力をいただけるお兄様、その次にラファエル殿下にお話しするのがよいかと」


 うんうん、これならウィルフレッドの企みを未然に防ぐことができるかも。


「さすがはサンドラです! すっかり僕は、そのことを失念していましたよ!」

「い、いえ……ハル様のお役に立てたのなら何よりです……」


 僕は彼女の小さな手を取って大袈裟に感謝を伝えると、サンドラは頬を赤らめてうつむいた。普段は堂々としているのに、こうやって照れる姿はメッチャ可愛い。


「そうと決まれば、早速お願いするとしよう。モニカ」

「すぐにセドリック様をお呼びいたします」


 モニカが席を立ち、待つこと十分。


「遅れてすまなかった。それと……アレクサンドラ、入学おめでとう」

「ありがとうございます、お兄様」


 やって来るなり、セドリックは糸目をさらに細めて祝福の言葉を告げる。というか、もはや目を(つぶ)っているとしか思えない。

 だからかな? 僕もサンドラの隣にいるっていうのに、完全に空気扱いされているのは。


「えーと……そろそろ本題に入ってもいいですか?」

「……ハロルド殿下もいたのですか」


 いやいや、ずっと隣にいましたよ? 節穴どころの騒ぎじゃないです。

 というか、僕が邪魔したからってそんなに顔をしかめないでくださいよ。このシスコンめ。


「お兄様」

「ああ、すまない。それで、お願いというのは?」

「はい」


 僕は、ウィルフレッドが主催するパーティーの件について説明する。

 できれば、シュヴァリエ公爵家の次期当主であるセドリックと、第二王子のラファエルから中止に追い込みたいと。


「ふむ……」

「いかがでしょうか? さすがに義兄上とラファエル兄上の二人から言えば、学院側もウィルフレッドよりこちらの申し出を優先すると思うのですが」

「いや、難しいでしょうね」

「どうしてですか?」

「考えてもみてください。どのようなことを企てているのかは分かりませんが、少なくとも表向きは新入生同士で親睦を深めることを目的としたもの。それを、私やラファエル殿下が一方的に反対しても、残念ながらこちら側には大義名分がない」


 ……確かに、セドリックの言うことももっともだ。

 そんなことをしたら、学院側からはただの嫌がらせだとしか受け止められない。


 かといって、僕達も連中が何か(・・)を企てようとしていることしか分かっていないし、それもモニカが読唇術で読み取っただけ。証拠なんてあるはずもない。


 すると。


「……まあ、方法がないわけではないですが」


 セドリックは糸目を僅かに見開き、口の端を持ち上げた。

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