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呼んでもいないのに主人公が現れました。

今日から第三部開始してます!


そして、とても大切なお願いがあります!

どうか、あとがきまでご覧くださいませ!

「いたた……」

「だ、大丈夫です……か……っ!?」


 慌てて右手を差し出そうとした僕だったけど、身体を起こした彼女を見て、思わず身体を硬直させた。


 だって。


「い、いえ! 大丈夫です!」


 彼女は『エンゲージ・ハザード~girls side~』の女性主人公、“リリアナ=アボット”だったのだから。


 というか、この現実ではあり得ないピンク色の髪とオニキスのような黒の瞳とか、すらっとしたスレンダーだけどちょっと残念な体型とか、こんな女性は女性向け『エンハザ』……『ガルハザ』の主人公以外にいないし。


 だけど、僕も前世でコラボイベントの特典を手に入れるために、『ガルハザ』のアプリを起動していた程度で、プレイそのものはチュートリアルまでなんだよなあ……。


 つまり、僕の『ガルハザ』に関する情報は、主人公である彼女のビジュアルと名前、それにカーディス達が攻略キャラとして登場しているってことだけ。いや、どうしろと?


 ただ。


「そ、そのー……実は私、今日の入学式の場所を知らなくて……」


 小動物のように小さく丸まり、上目遣いでそんなことを言ってくる主人公……もとい、リリアナ。

 あ、リリアナって名前はデフォルトのもので、『ガルハザ』ではプレイヤーが自由に名前を変更できる仕様となっている。


 ウィルフレッド? アイツも、プレイヤーによる名前の変更が可能だよ。

 そんなどうでもいい情報はさておき、困ったのはリリアナの登場の仕方と台詞(セリフ)だ。


 これ、チュートリアルの最初の攻略キャラとの出逢いのシーンと、全く同じなんだよね。

 つまり、『ガルハザ』では一切登場しないハロルドの僕が、攻略キャラの座を奪った格好になっているってことだよ。どうしよう。


 なお、僕が出番を奪った攻略キャラの名前は“アラン=スティーブンス”。

 スティーブンス侯爵家の次男で、俺様系ヒーローだ。あとは知らん。


「……あなた。ぶつかった御方が、デハウバルズ王国第三王子のハロルド殿下だということを、ご存知ないのですか?」

「「っ!?」」


 サンドラが恐ろしく低い声で僕の名を告げると、リリアナが息を呑んだ。

 ちなみに、関係ないはずの僕まで、恐怖で一緒に息を呑んだよ。


「おおお、王子様だったんですか!?」

「そうです。この国において最も素晴らしく、最も優秀で、最も素敵な御方。それが、ハロルド殿下……私の婚約者(・・・・・)の、ハル様です」


 『私の婚約者』ってところを、メッチャ強調したサンドラ。

 これ、間違いなくリリアナに対してマウントを取りに……いや、排除しに? とにかく、僕に降りかかった火の粉という名の恋愛フラグを全力で折りにいってるよね。


「と、とにかく、僕は気にしていないし、むしろ転ばせてしまって申し訳ない。講堂についても、ちょうど僕達も向かうところだったから、君も一緒に行こう」

「は、はい!」


 とりあえず僕は空気を変えるために、努めて明るくリリアナを誘った。

 彼女もそれを察してくれたのか、表情を緩める。


 もちろん。


「あ……ふふ」


 僕のことで嫉妬してくれたサンドラの小さな手を、リリアナの目の前でこれ見よがしに握ると、少し()ねていた彼女は嬉しそうにはにかんだ。

 こういうのは、ちゃんとアピールしておかないと。サンドラに変に誤解されたくないし、リリアナに僕が攻略対象じゃないことを認識させないといけないし。


 ということで。


「うわあああ……お、大きい……」


 講堂に着くなり、その広さに声を失うリリアナ。

 確か彼女、父親であるアボット男爵とメイドとの間に生まれた婚外子で、リリアナを身ごもった母親がアボット家を辞めて女手一つで逞しく育てたって設定だったなあ。


 なので、貴族としてのマナーや常識が欠如していて、それが攻略キャラ達の興味を惹いて恋愛に発展していくストーリーになっていくっていう、乙女ゲームや女性向けラノベあるあるだよね。


 さて……それで、どうしようか。

 はっきり言って、『ガルハザ』は僕も専門外のため、シナリオがどうなっているかとか、よく分からないんだよね。


 一応、チュートリアルをプレイした限りでは、『エンハザ』と同じく恋愛RPGではあるし、使用スキルや仕様なんかは共通しているので、そういう意味での問題はないと思う。

 だけど、主人公であるリリアナを中心とした本編シナリオが、『エンハザ』と共通しているかは、判断がつかない。


 そう考えると、リリアナとは極力距離を置いて、『ガルハザ』のシナリオには関わらないのが得策だよね。

 ハロルド、『ガルハザ』に登場しないし。


 そんなことを考えていると。


「聖女様、こんなところにいらっしゃったのですか」


 ……誰も呼んでもいないのに、ウィルフレッドの奴がのこのこと現れたよ。


「これはウィルフレッド殿下、お久しぶりです。……ですが、どうして私が、王立学院に留学していることをご存知なのですか?」


 表情こそにこやかだけど、聖女の瞳は笑っていない。

 むしろ、お忍びという扱いにしていたはずなのに、クリスティアが留学していることを事前に知っているような口振りだったことに、警戒しているようだ。


「もちろん、王宮の者から聞いたんですよ」

「そうですか。では、その者の名を教えていただけませんか? 勝手に情報を漏らしたことについて、聖王国として王国に抗議いたしますので」

「っ!?」


 まさかそんな返され方をされるとは思わなかったウィルフレッドは、思わずたじろいだ。

 僕も、クリスティアは聖女の仮面を被って、表面上はウィルフレッドと仲良くするものだと思っていたんだけどなあ。ちょっと意外……って。


「……聖女様は、『たとえ表面上であっても、ハロルド殿下やアレクサンドラ様と敵対しているウィルフレッド殿下と、懇意にする意味はない』とのことです」


 カルラが僕の隣に来て、そっと耳打ちしてくれた。

 なるほど……サンドラが怖いから、全力で媚びを売る方向にシフトしたのか。


「そ、そうですね。俺もその侍従を処罰いたします。では、新入生挨拶の準備がありますので、また後ほど」


 そう言うと、ウィルフレッドはそそくさとどこかへ行ってしまった。


「うふふ……あれから一年経つというのに、相変わらず薄っぺらい御方ですね」

「ふふ、よく分かりましたね」


 ウィルフレッドの背中を見つめ、クリスティアがクスリ、と(わら)う。

 サンドラも、クリスティアの言葉に嬉しそうに(わら)っているよ。というか怖い。

お読みいただき、ありがとうございました!

皆様から『無能の悪童王子』へたくさんの応援をいただき、本日から第三部が開始しました!


第三部では『エンゲージ・ハザード』本編の舞台となる王立学院に入学したハロルド達。

ここからゲーム本編となる一年後に向け、さらに物語が加速しますので、お楽しみに!


ついては、いつも応援・お読みいただいている皆様に大切なお願いです!

第三部を引き続き多くの読者にご覧いただき、クライマックスとなる第四部へと続くためにも、どうかお力をお貸しいただけないでしょうか!


「応援したい!」「続きを読みたい!」とおっしゃっていただけるのであれば、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


皆様の応援こそが、この作品を継続する原動力です!

なにとぞ……なにとぞ、よろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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