僕達は物語の舞台となる王立学院に入学しました。
いよいよ第三部開始です!
そして、とても大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
「ハル! 早く起きなきゃ駄目だよ!」
「ゲボアッ!?」
キャスの奴に朝から高高度からのダイビングボディプレスをみぞおちにもろに食らい、僕は思わず悶絶する。
というか、もうちょっと起こし方ってものがあるだろう……。
「もう……今日から王立学院に入学するんだから、ボク達も寄宿舎ってところに引っ越ししないといけないんだよ?」
「そ、それは分かってるけど……というか、よく知ってるな」
「エッヘン! モニカに教えてもらったんだ!」
なるほど、そういうことなら納得。
「おはようございます、ハロルド殿下」
「ああ、おはよう」
おそらく、僕の呻き声を聞きつけてきたんだろう。モニカはタイミングを見計らったかのように部屋にやって来て、お辞儀をした。
というか。
「ええとー……どうしてモニカは、王立学院の制服を着ているのかな?」
「? 聞いておりませんか?」
不思議そうに尋ね返すモニカに、僕は思わず首を傾げる。
てっきり僕は、モニカが朝からコスプレしているものだと思ったんだけどなあ……。
「私もハロルド殿下の同級生として、王立学院に通うことになっております」
「へ……?」
ええとー……以前サンドラから教えてもらったモニカの年齢、確か僕達の四つ上……って、ヒイイイイ!? モニカの瞳から、ハイライトが消えてる!?
「ハロルド殿下、何か?」
「いいい、いいえ! なんでもありません!」
ああ、そうとも。あんな瞳をしたモニカに堂々とツッコミを入れられるほど、僕は命知らずじゃないんだよ。
せっかく『エンゲージ・ハザード』の初手フラグを叩き折って安全を確保したっていうのに、自分から死地に飛び込んでどうする。
「ふう……早く制服に着替えてください。お嬢様のお迎えもありますので……」
「はい……」
呆れた顔で息を吐くモニカに、僕は珍しく素直に頷いたよ。
だけど。
「そのー……モニカ、どうして部屋にいるのかな?」
「もちろん、ハロルド殿下のお手伝いをするためです」
「いや、いらないから。というか、いつも僕一人で着替えているよね?」
「いえ、殿下は制服に初めて袖を通されますので、着付けのお手伝いは必要かと」
「いやいや」
「いえいえ」
そんな押し問答をしていたせいで、すっかり遅くなってしまった。
最後はモニカに強引に服を剥ぎ取られた挙げ句、僕の裸をまじまじと見つめるモニカに着せてもらったよ。もうお婿に行けない。
◇
「ふああああ……ハル様、とても素敵です……」
サンドラが頬を赤らめて僕の制服姿を大絶賛してくれているけど、彼女の制服姿のほうが圧倒的に素敵だからね?
それはもう、スチル一枚しかないサンドラの制服姿を、前世の僕がどれだけ望んでいたか分かるかい?
僕は今日、夢を一つ叶えたよ。
願わくは、水着や体操服など、他のコスチュームもお願いしたい(切実)。
ということで、僕達は馬車で王都の中央に位置する王立学院へと向かう。
王立学院は、初代国王ルウェリン=ウェル=デハウバルズが設立したとされ、周辺諸国の中でも特に歴史ある学校として知られている。
各国の王侯貴族も多く留学しており、その中には当然ながら『エンハザ』のヒロイン達もたくさん在籍しております。
「そういえば……あの屑は、恥ずかしげもなく新入生を代表して挨拶をするとか」
「あー……ご存知でしたか」
元々、王族が入学する時は、その王族が挨拶を行うことが通例となっているけど、今年は僕とウィルフレッドの二人。
普通なら、兄である僕が挨拶を務めることになるはずなんだけど、王立学院はウィルフレッドを指名してきた。
つまり、そういうことなんだろう。
「本当に腹立たしいです。あの決闘であそこまで恥知らずな真似をしておきながら、何事もなかったようにのうのうと過ごしているばかりか、ハル様が不正をしたなどと、よからぬ噂まで流すなんて……」
「まあまあ、別に構いませんよ」
「ですが!」
憤るサンドラを、僕は苦笑しつつなだめる。
あの闘いにおいてどちらが勝者なのか、それはあの場にいた者達が知っている。
たとえそんなくだらない噂を流したところで、簡単に鵜呑みにするほど民衆も馬鹿じゃない。
そのために、民衆のための観客席まで用意したんだから。
「そういうことですので、僕の潔白はあの場にいた民衆達が証明してくれますよ。何より、ほとんどの貴族が闘いを観ているんです。逆に恥の上塗りをするだけですよ」
ただ、オルソン大臣の話では、新年祝賀会からの一連のことを受けて、いくつかの貴族がウィルフレッドに接触しているとのこと。
どうやら、アイツがエイバル王の寵愛を受けていると判断して、カーディスあるいはラファエルから乗り換えたようだ。
節操がないといえばそれまでかもしれないけど、貴族だって今後も王国で生き抜くためには、長いものに巻かれるのは当然だ。そのことについて、僕は何も言うつもりはないよ。
ただし……その選択が、失敗でなければいいけどね。
「もう……」
「ほらほら、もう到着ですよ」
口を尖らせるサンドラの顔を車窓に向け、王立学院の中央にそびえ立つ塔を指差した。
なお、王立学院の正門には多くの馬車が列を作っており、なかなか進むことができない。
もちろん、僕達の馬車以外が。
え? どうして僕達の馬車は大丈夫なのかって?
もちろんだとも。だって、僕は腐っても王族。列に並ぶことなく学院の中までフリーパスだよ。
ただでさえ王国には嫌な思いをさせられてきたんだ。これくらいの特権、使わせてもらわないと。
馬車の中から恨めしそうに見つめる新入生達の視線を浴びながら、僕達はちょっとだけ居たたまれない気持ちで正門を抜け、王立学院に到着した。
「サンドラ、どうぞ」
「ふふ……ありがとうございます」
先に馬車を降りた僕が、サンドラの小さな手を取って降ろす……って!?
「わっ!?」
「サンドラ! お久しぶりですわ!」
僕を押し退けてサンドラの手を取ったのは、チョココロネのようなドリルヘアーが特徴の、カペティエン王国第一王女。
リゼット=ジョセフィーヌ=ド=カペティエン……親友のリゼだった。
お読みいただき、ありがとうございました!
皆様から『無能の悪童王子』へたくさんの応援をいただき、いよいよ第三部が開始です!
第三部では『エンゲージ・ハザード』本編の舞台となる王立学院に入学したハロルド達。
ここからゲーム本編となる一年後に向け、さらに物語が加速しますので、お楽しみに!
ついては、いつも応援・お読みいただいている皆様に大切なお願いです!
第三部を引き続き多くの読者にご覧いただき、クライマックスとなる第四部へと続くためにも、どうかお力をお貸しいただけないでしょうか!
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