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神へと至るその時を ※エイバル=ウェル=デハウバルズ視点

幕間2話目! エイバル王視点です!

■エイバル=ウェル=デハウバルズ視点


「まったく……本当に、使えん奴だ」


 侍従をはじめ全ての者を下がらせて、余は謁見の間でただ一人、こめかみを押さえてかぶりを振る。

 この頭痛の種の原因は、第三王子のハロルドに敗れた、無能の(・・・)ウィルフレッドのせいだ。


 しかも、神話の時代の伝説の武器を五つも与えてやったにもかかわらず。


 一方で、ハロルドは何を思ったのか、どこにでもありそうなみすぼらしい盾のみ。

 だが、その盾は伝説の武器による攻撃をことごとく受け止めてみせ、しかも傷一つついていなかった。


 あのような盾がこの世に存在するなど、余はあの男……“ウリッセ”から聞いておらん。


「だが……これでは話が違う(・・・・)


 もちろん、余が“ウリッセ”を疑うはずがない。

 余がデハウバルズの王として君臨しているのは、全てあの男のおかげなのだから。


 ◇


 “ウリッセ”と出会ったのは、余を含めた六人の兄弟で王の座を争っていた時の、カペティエン王国の戦場だった。


 当時の余は第四王子という微妙な立場におり、第一王子から第三王子までの三人が、次期国王の座を巡って水面下でしのぎを削っている中、なんの力もなかった余は、いつも悶々(もんもん)としておった。


 少なくとも、他の五人の兄弟よりも余のほうが明らかに優れておったのは間違いない。

 ただ……足りぬのは、余を支援しようとする者がおらぬことのみ。


 悲しいかな、他国の王族であった第一王妃や、シュヴァリエ家に次ぐ貴族のマーシャル家を実家に持つ第二王妃と異なり、余の母である第三王妃はしがない子爵家の令嬢でしかなく、情けで王妃の座になれた程度のもの。

 母はいつも第一王妃と第二王妃に卑屈なまでに媚びへつらい、何とかして王宮で居場所を確保するのに必死だった。


 それもあってか、余に対する王宮の者達の風当たりもきつく、むしろ居場所を追われておったのは余のほうであった。


 だが……そんな鬱屈(うっくつ)した日々に、転機が訪れた。


 何度目か分からぬカペティエン王国との戦において、当時十五歳だった余も指揮官として戦地に赴くこととなった。

 第一王子や第二王子、それに第三王子は王位継承争いの最中でもあり、ここで王宮を留守にするわけにはゆかず、誰一人として戦に参加しなかった。


 今から思えば、あの愚か者共がそのような選択をしてくれたおかげで、余は今こうしているのだから、感謝しかあるまい。


 そして。


「この私がきっと君を勝利に導き、デハウバルズの王にしてみせるよ」


 屈託のない笑顔でそう告げる同い年くらいの男……“ウリッセ”は、王国でも見たことがないような素晴らしい武器を携え、余に与えてくれた。


 それから余は、戦場で連勝に次ぐ連勝を重ねる。

 当然だ。“ウリッセ”が余にもたらした武器は、神話に登場する伝説の武器なのだから。


 だが、戦とは個の力だけではどうにもならぬ。

 余のみが勝利しようとも、他が敗れては意味がないのだ。


 しかも、カペティエン王国は王が病で倒れ、その跡を継いだ王太子、サロモン=ランベール=サロモン=ド=カペティエンが曲者だった。


 あえて余が率いる部隊を避け、他の部隊へ集中的に攻撃を仕掛けるなど、堅実な策と奇策を織り交ぜて次々と勝利を重ねてゆく。


 こうなれば、だらだらと戦を続けるのは無能のやること。

 余は王太子……いや、即位して王となったサロモンと独断で休戦協定を結び、急ぎデハウバルズに帰国した。


 兵士達に、『今回の敗戦は、無能な王と、権力闘争に明け暮れている役立たずの王子達が原因である』と告げて。


 そして……余は、王をはじめとした王族を闇に葬った。

 実の母親も、兄弟達も、全てだ。


 容易かったとも。

 何せ余には、“ウリッセ”から与えられた伝説の武器……『冥府巨釜(おおがま)ダグザ』がある。


 これを用いて、不要な連中を全て冥府に叩き落とすだけなのだから。


「アハハ、簡単だったでしょう?」


 この時の余は、醜悪な顔をしておっただろう。

 ただし……“ウリッセ”の悪魔そのものの笑みよりは、明らかにまし(・・)であったであろうがな。


 ◇


「そう言わないでくださいよ。私だって、ハロルド君のことは予想外(・・・)だったんですから」

「…………………………」


 突然、目の前に現れた“ウリッセ”に、余はねめつけるような視線を送る。

 どうせ彼奴(きゃつ)のこと、先程漏らした呟きを含め、余の様子をどこかで(うかが)っておったに違いない。まったく、得体が知れぬ奴とは、“ウリッセ”を指すのであろうな。


 何せこの男、二十年前のあの日(・・・)と、その姿が一切変わっておらぬのだから。


「それで……一年後、本当に目的(・・)は果たせるのか?」

「任せてくださいよ。そのための準備は、全て終わっているんですから」

「うむ……」


 余が“ウリッセ”と交わした密約。

 ウィルフレッドを『この世界を統べる王』へとのし上げることで、余はその対価を得る。


 それは。


「フハハハハ……()へと至るその時が、楽しみだわい」


 余は、天井のその先……天上(・・)を仰ぎ、口の端を吊り上げた。

お読みいただき、ありがとうございました!

幕間二つ目は、エイバル王視点でした!


まさかウィルフレッドを推す理由が、己の欲のためとは……という感じですが、あえて『エンゲージ・ハザード』のストーリーどおりに進めようとするウリッセとは何者でしょうか……?


さて、いつも応援、お読みいただいている皆様にお願いがあります!


「応援したい!」「早く続きが読みたい!」とおっしゃっていただけるのであれば、

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皆様の応援こそが、この作品を継続する原動力です!

なにとぞ……なにとぞ、よろしくお願いいたします!!!

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【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
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