表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/333

主人公との闘いが幕を開けました。

「では……はじめ!」


 ドレイク卿の言葉で、僕とウィルフレッドの決闘が幕を開けた。

 さて……ウィルフレッドはどう出てくるかな?


「…………………………」


 へえ、突っかかってこないんだ。

 むしろ僕がすり足で距離を詰めると、同じだけ後退したよ。

 どうやら、この距離がアイツにとっての間合いみたいだな。


 まあでも。


「どうした。手を出してこなければ、オマエが僕に勝利することはできないぞ」

「分かっていますよ。ですが、すぐに勝負を決めてしまっては面白くない」


 そう言うと、ウィルフレッドはクスリ、と(わら)った。


「なかなか減らず口を叩くじゃないか。だけど、その自信はどこから来るんだ? 僕が聖王国のカルラ殿との手合わせにおいて、彼女の攻撃を全て受け止めたことは、オマエも見ていただろう」

「兄上こそご存じない。あの時はお互いに木剣と木の盾という訓練用の武器だった。だが、この剣が俺の手にある時点で、兄上はただ斬られる運命にあるんですよ」


 ああ、なるほど。

 『英雄大剣カレトヴルッフ』の性能に頼って、僕に圧勝するつもりなんだな。


「じゃあ、試してみろよ。そんな逃げ回っていないでさ」

「ええ……そうさせてもらいますよッッッ!」

「っ! 来る!」


 地面を蹴り、ウィルフレッドは一気に距離を詰めてきた。


「シッ!」


 素早く放たれる、連続の突き。

 『エンハザ』では、本編が始まった時点での主人公のレベルは一しかないので、ウィルフレッドがこんな攻撃を繰り出すことができたのは、ちょっと意外だった。


 でも。


「なっ!?」

「何を驚いているんだよ。そんな攻撃、通用すると思っているのか」


 僕が『漆黒盾キャスパリーグ』で全て防いで見せると、ウィルフレッドは目を見開く。

 ただ、攻撃を受け止めたことに対してというより、『英雄大剣カレトヴルッフ』がこの盾を貫くことができないことに驚いているみたいだな。


「なんだ。ひょっとしてその剣、そんなにすごいものなのか?」

「……ええ、まあ。ですが兄上の盾も、この剣の攻撃を受け止めることができるだけの、優れたものだとは思いませんでしたよ。どんな悪事を働いて入手したのかは知りませんが」

「それを言うなら、オマエこそその剣をどうやって手に入れた。それは、簡単に手に入る代物じゃない」


 そう……簡単に手に入ってたまるか。

 僕が『エンハザ』で『英雄大剣カレトヴルッフ』を入手するために、課金ガチャにいくらつぎ込んだと思っているんだよ。


「俺はこの剣と共に託されたんですよ。『デハウバルズの王となり、この国の統治者になれ』とね」

「ふうん……それって、国王陛下に?」

「いや、違う」

「違う?」


 あっさりと否定したウィルフレッドに、僕は思わず聞き返す。

 じゃあ一体、どこの誰がコイツにUR武器まで渡して、そんなことを(のたま)ったって…………………………あ。


 この時、僕は似たような出来事を思い出した。

 カペティエン王国でクーデターを起こした王太子のジャンも、『陽光聖剣デュランダル』をある男(・・・)から受け取ったと言っていたな。


 その名は。


「“ウリッセ”……」

「っ!? ……まさかハロルド兄上も、あの男からその盾を……?」


 ええー……本当かよ。

 まさかコイツまで、ジャンから聞いた男と繋がっていたなんて。


 というか、『エンハザ』の主人公やシナリオボスに絡む“ウリッセ”という男は一体何者なんだ?

 しかも、最低でもUR武器を二つ保有していたことになるし、さらにはレアアイテムの『ガルグイユの眼』だって。


 ただ……少なくとも“ウリッセ”という男が、この『エンゲージ・ハザード』という世界の裏で暗躍していることだけは確かだ。


 この決闘が終わったら、ウィルフレッドを問い(ただ)すとしよう。


「オマエと一緒にするな。僕の相棒(・・)は、そんな怪しい奴から入手したりなんてしない」

「なら、どうして……って、別にいいか。俺が勝てば、ハロルド兄上から吐かせればいい」

「っ!?」


 ウィルフレッドの振るう剣の鋭さが増し、容赦なく僕に襲いかかる。

 これ、防がなかったら確実に死ぬだろ。


 とはいえ。


「ど、どうして……っ!?」

「無駄だよ。オマエの剣じゃ、僕には絶対に届かない」


 剣撃を全て防いでみせると、ウィルフレッドがまたもや驚愕の声を上げた。

 コイツの剣を受け止めてみて分かったけど、武器の性能はともかく、ウィルフレッド自身の能力は思った以上に大したことはない。


 いや、マリオンよりは少し強いかもしれないけど、それでも、剣の腕前はカルラ以下だろうな。


「別に僕は、オマエの心が折れるまで続けてもいいぞ? ただ……オマエじゃ僕に勝つのは絶対に無理だよ」

「く……っ! このおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」


 今の言葉が逆鱗に触れたらしく、ウィルフレッドは狂ったように剣を繰り出す。

 この展開、橙の腕章をつけた近衛兵と手合わせした時と同じだね。


 そう、思ったんだけど。


「なっ!?」

「チッ……(かわ)されたか」


 ウィルフレッドが放った一撃をかろうじて避けることができたものの、頬の焼けるような熱さを感じながら、僕は目を見開いた。


 だって……ウィルフレッドが使用したスキルは、『エンハザ』で主人公が使用できるスキルでも、『英雄大剣カレトヴルッフ』の持つ固有スキルでもなく、別のUR武器……『魔皇星銃サモントリガー』の固有スキル、【アビスアサルト】だったのだから。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼8/19に書籍第1巻が発売します! よろしくお願いします!▼

【余命一年の公爵子息は、旅をしたい】
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ