僕の成果を聞いて、第一王子は目を丸くしました。
とても大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
「ハロルド兄上。俺はこの度、父上……エイバル陛下から、近衛師団を任されることになりました」
頼んでもいないのに僕達使節団を出迎えたウィルフレッドが、それはもう憎たらしい笑みを浮かべてそんなことを自慢してきたよ。
だけど、近衛師団を、ねえ……。
近衛師団といえば、王都“カディット”を守備する王国が誇る軍隊のエリート。
それを統括するという要職を任されたということは、エイバル王はウィルフレッドを王国の要として取り立てていくことにしたようだ。
とはいえ。
「ふうん、それで?」
「え……?」
思いのほか僕の反応が薄いからか、ウィルフレッドの奴、呆けた声を漏らしたよ。
「だから、それがどうかしたのかって話なんだけど。ひょっとして、お祝いの言葉でも欲しかったのか?」
「い、いえ、それは……」
本当に馬鹿だなあ。
コイツとしては、親善大使に選ばれた僕以上の結果を残したと思っているみたいだけど、そもそも人の評価っていうのは、肩書だけで決まるものじゃないんだよ。
まだウィルフレッドは国王に任命されただけで、これからどうしていくかはコイツ次第。逆にこんな要職に就いてしまったから、今まで以上に周囲の厳しい目に晒されるっていうことに気づいていないのかな? 気づいていないんだろうな。
「そんな役割を任されたんだから、責任も重大だ。オマエが下手を打って、周囲に迷惑をかけないことを祈っているよ」
「まさか。兄上ではないのですから、そのようなことはあり得ませんよ」
まるで馬鹿にするかのように、ウィルフレッドは鼻を鳴らす。
先のバルティアン聖王国のホストを務めた時に、自分勝手に振る舞ったせいで文官にそっぽを向かれるという失敗を、コイツは忘れてしまったんだろうか……って、よくよく考えたらコイツ、あれは成功したと思っていたんだったなあ。めでたい奴。
「とにかく、これ以上オマエと話をしている暇はない。僕はこれから、国王陛下に今回の結果を報告しなければならないんだ」
「ああ、そうでした。兄上はただ引き続き友好関係を築くという、楽な仕事をしてきたんでしたね。何もしていないとはいえ疲れたでしょうから、報告を終えたら当分の間ゆっくりしてはいかがですか?」
「そうさせてもらうよ」
ウィルフレッドの皮肉を適当に受け流し、僕達はエイバル王の待つ謁見の間へと向かう……んだけど。
「ふふ……何も知らないというのは、こんなにも滑稽なのですね」
サンドラは、先程のウィルフレッドとのやり取りを思い出しているのか、クスクスと嗤う。
まあ、僕達のしたことは単なる親善だけでなく、クーデターの阻止と友好の証としてリゼをこの国に留学させるというもの。
ただ任命されただけで、まだ何もしていないアイツとは違うのだ。
すると。
「フン……親善大使という役目の意味を理解せず、なんの成果もなくおめおめと帰って来たか」
「カーディス兄上……」
面倒なことに、王宮の廊下でカーディスと遭遇しちゃったよ。
「いやはや……実はこれから国王陛下にご報告に向かうのですが、よろしければカーディス殿下もご一緒にいかがですか?」
「む……」
僕とカーディスの間にオルソン大臣が割って入り、にこやかな笑顔でそんなことを提案した。
だけど、僕のほうをチラリ、と見やった時、含みのある笑いを見せたから、どうやら考えがあるみたいだ。
「そうですね……兄上がご一緒なら、心強いです」
「馬鹿な。この私がいたところで、お前の失態を見逃すほど陛下は甘くない。覚悟しておくんだな」
「……はい」
いやあ……カーディスも、今回の成果を知ったらどんな顔をするんだろう。ちょっと楽しみ。
「それは置いといて、ウィルフレッドが近衛師団を任されたと聞いたのですが……」
僕は顔色を窺うように、カーディスの顔を覗き込む。
プライドの高いカーディスのことだから、王都の軍事を任されたウィルフレッドに対し、嫉妬してると思うんだよね。
「……お前も聞いたか」
はい、カーディスはメッチャ気に入らない様子。
苦虫を噛み潰したような顔で、こめかみのあたりがピクピクしてるよ。
「ええ……ウィルフレッドが、嬉しそうに僕に話してくれましたよ」
「そうか……だが、右腕であるあいつがそのような要職に就いたということは、それだけこの私が、ラファエルより優位に立つことができるということだ」
そんなことを言ってるけど、本当は面白くないくせに。
元々、カーディスの陣営には軍事力を持つ支援者が少ない。そんな中、ウィルフレッドが王都の軍事を掌握したことになるのだから、派閥内の影響力は計り知れない。
カーディスからすれば、頭が痛いだろうね。
それから終始無言のカーディスとともに、謁見の間へと入ると。
「ハロルドよ、よくぞ無事に帰ってきた」
「はっ! このハロルド。親善大使としての任務を終え、帰還いたしました」
僕は今回の成果について、エイバル王に報告する。
もちろんカペティアン王国で起こったクーデターの顛末、それにリゼの留学の件について。
「……そういうことで、来年の春にはリゼット殿下は王国にやってまいります。サロモン陛下も、非常にお喜びでした」
「そうか」
エイバル王は、無表情でただ頷く。
ひょっとしたら、僕が今回の任務で成果を上げることを、よく思っていないのかもしれないな。
そもそも僕を親善大使に任命したのだって、宰相とオルソン大臣の推薦によるものだし。
一方で、ウィルフレッドを補佐として同行させようとしたり、近衛師団を与えたり、エイバル王は明らかにえこひいきしてるよね。別にいいけど。
「あい分かった。リゼット殿下が留学の折には、お前が世話をして差し上げるのだ」
「かしこまりました」
「うむ。では、部屋に戻って旅の疲れを癒せ」
「はっ! お気遣いいただき、ありがとうございます」
エイバル国王が従者を連れて謁見の間を出るのを見届け、僕は息を吐いて立ち上がった……んだけど。
「…………………………」
……うん、カーディスが絶句したまま立ち上がらないよ。
まさか僕が、そんな成果を引っ提げて帰ってくるなんて、思わなかったんだろうなあ。知らんけど。
僕は茫然とするカーディスを横目に、オルソン大臣達と一緒に退室した。
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