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2/12

どう考えても異世界ガチャ外れです! 本当にありがとうございました!!

2話目になります。

よろしくお願いします。

短めなのでさっくり終わる予定です。

 両親がちょっと特殊な生まれであること以外、ごく普通の一般人として生まれた俺はある日、異世界に召喚された。

バイト帰り、少し暗くなった夜道を移動している時に、突然足元が光ったと思ったら、なんか知らない場所にいた。

外国の神殿っぽい感じの所で、大勢の人間に囲まれた俺に、なんか偉そうな人が『お前はこの世界に蔓延る魔物と魔王を倒すために勇者として召喚された。世界の為に戦え』などと宣った。


 日頃、WEB小説や漫画でこの手の異世界召喚ものは良く読んでいたし、妄想もしていたから状況は分かったけど、いきなりてこんな事言われても、『はあ?』としか言えない。

もうちょっとこう、世界を救うために召喚された勇者に対して言う事はないんかい。

そう思う俺のことなんか無視してどんどん事を進めていくお偉いさん方。

そしたら都合が良いというか、魔物が近くに現れたという。

心の準備も何もない内にいきなりバトルとか、マジで勘弁なんですが。

そうして俺は魔物の前に放り出された。


 この時点ではまだ、俺は平静だった。

流されるままに魔物と戦う事になっても、異世界で勇者召喚されたんだから、チートでどうにでもなるだろって軽く考えていた。

まぁ、実際どうにかなったんだけど。

最初に相対したのはミノタウロスそのまんまの姿の魔物だった。

牛の頭に筋肉モリモリで2メートルを超える巨体。

ビビるわこんなの……。

こっちはギリギリ平均身長と、ちょっとメタボ入った一般人だし、生まれてこの方殴り合いの喧嘩すらした事が無いんだ。

そんな俺に、殺気剥き出しの凶悪な化け物を相手にしろなんて、無茶振りにも程がある。


 完全に呑まれた俺に、化け物は容赦なく襲いかかった。


「GAAOOOOOONNNN!!!!!」


 恐ろしい咆哮と共に殴りかかる化け物。


「ヒィッ」


 俺は情けない悲鳴を上げながら咄嗟に頭をガードするように縮こまった。

瞬間、物凄い衝撃が身体中に走った。

化け物に吹っ飛ばされ、かなりの速度で地面をゴロゴロと転げまわる。


「いってぇ……」


 衝撃で目を回していると、化け物が追撃に来た。

普通のバトル物ならすぐに立ち上がって、回避やら反撃をする場面なのだろうが、俺は亀の様に丸まった。

情けない様ではあるけど、仕方ないだろ。

殴り合いの喧嘩さえした事が無い人間が、そんな簡単に戦闘なんて出来る訳が無いのだから。


「GAAAAAAAAAAA!!!!!」


 化け物はそんな俺に、執拗なまでに攻撃を続ける。

俺の背中に拳を叩きつけ、ストンピングまでかます。

それらは凄まじい威力で、地面が少し揺れていた。

ハッキリ言って、すごく痛い。

このままでは撲殺される。

だけど、俺にはどうする事も出来ず、ただやられてるだけだった。

散々俺を踏みつけた化け物は、今度は俺の横腹を蹴り上げた。

サッカーボールのように吹き飛ばされ、壁に激突する俺。


「ぐ……え……」

 

 ぶつかった衝撃で壁は崩れ、その瓦礫に埋もれながら苦悶の声を上げる。

身体中が痛い……このままじゃ本当に死ぬ。

そう思いながら立ち上がった所で気付いた。

このままも何も、普通に考えたらとっくに死んでいてもおかしくないような攻撃を食らっている。

なのに、まだ生きている。

ダメージはあるが、骨も折れてないし、出血もしていない。

もしかして、これはチートが発動しているからか?


常識的に考えて、レンガで出来ているような壁がぶっ壊れるほどの衝撃を受けたら普通に即死する。

トラックに轢かれる様なもんだしな。

そう思っていた所で、化け物がまた襲いかかった。

チートを意識した為か、さっきと違って少し冷静さを取り戻した俺は、化け物の動きを良く見る事にした。

スローモーションとまでは行かないけど、それでも化け物の動きがハッキリ見えた。

そのおかげで攻撃を回避する事が出来、しかも一瞬でその場を離脱し、間合いをとることが出来た。

更に身体の痛みも引いてきた。

この事から、化け物の攻撃に耐えられる耐久力と、疾風の如き敏捷性、強力な自己治癒能力が備わったチートを得ていることが分かった。

そうなると、化け物を倒せる攻撃力も備わっていると見て良いと思う。

ついでに、我ながら随分と冷静に状況を判断出来ていることから、頭脳や精神面もチートで強化されているかもしれない。

先ほどまでの恐怖は消えている……これならやれる!


 目の前から一瞬で消えた俺を化け物は見失っていたようだが、辺りを見回し俺を見つけたところで再度襲いかかって来る。

殴りかかって来た所で俺は冷静にそれを躱し、カウンターの一撃を奴の腹にお見舞いした。

その一撃は凄まじく、化け物の腹を貫通していた。

俺はその威力に驚きつつも、直ぐに頭を切替えて腕を引抜き、化け物の前に対峙する。

どうやら致命傷だったらしく、化け物は斃れた。

その身体が塵になって霧散していく。

この戦いは俺の勝利だった。


「っしゃあーーー!!!!」


 高々に右手を挙げ、勝利の雄たけびを上げる俺。

最強チート勇者爆誕とばかりに意気揚々とする俺に対して、周りにいた人間の目は冷ややかだった。


 ……なんだこれ?

初陣で、素手で、化け物を倒したんだよ?

普通はさ、盛り上がるんじゃね―の?

これじゃ、俺だけ滑ってるようで恥ずかしいんだけど?

そう思っていると、なんか豪華な鎧を着たおっさんが口を開いた。


「ふむ、どうやら使い物にはなるようだな」


 そこは『流石は勇者様!』って言って感嘆する所だろ。

召喚の時といい、この世界の奴らは勇者に対してのリスペクトが足りないんじゃないか?

チートとさっきの勝利で気が大きくなっていた俺は、偉そうなおっさんに一言物申し上げてやろうと近づいた。


「あのさ、あんたらさっきからちょっと失礼ッ!?」


 なんじゃないか? と言おうとした所で、肩に激痛が走る。

先程の化け物に殴られた時とは比べ物にならない、芯にまで響く痛みに、俺は声すら上げられずに悶絶した。


「~~~ッ、~~~ッッッ」


 痛い、痛い、痛い、痛すぎる。

なんだこれ……。

今まで受けたことも無い激しい痛みに、俺の心は一瞬で折れた。


 蹲る俺に、威厳と酷薄さを合わせた声で、先程俺の肩を打ち抜いた偉そうな男が恫喝してきた。


「弁えろ、下郎。貴様如きが陛下に対して無礼を働くな」


 恐らくは騎士団長とか近衛騎士とかそういった類の男だろう。

言わば剣の達人とかそういう奴だ。

そうであったとしても分からないのは、何故チート勇者なハズの俺が、こうもアッサリやられているかという事だ。

つか、こんなに強いなら、勇者なんて必要ないだろーが。

それに下郎ってなんだよ! 異世界の勇者様なんだぞ、俺は!

そう心の中で思いながらも、現実の俺は痛みに震えながら平伏していた。


「そこまでにしておけ」


 国王と思われる一番偉そうな人物が場を治めた。

その後、俺に対して簡単な説明をした。


 この世界には魔物という人類の敵が存在する。

大昔から人類はその魔物と戦ってきた訳だが、時折魔物の中から魔王と呼ばれる存在が現れる。

魔物を統べる魔王は、その圧倒的な力で人類を追い詰めてきた。

だが、人類もやられっ放しという訳ではなく、勇者と呼ばれる魔王に対する決戦存在が現れるのだった。

まぁ、物語に良くある、魔王と勇者の戦いって奴だな。

今回も魔王が現れ、そして人類にも勇者が現れた。

何だかんだで何時も通り勇者が魔王に打ち勝ち、世界に平和が訪れる……ハズだった。


 勇者は敗れた。

それも勇者に劣らぬ力を持った仲間達がいたのにも関わらず、魔王に敗北したのだった。

今回顕現した魔王は、過去のそれとは比べ物にならない化け物だったそうだ。

最強戦力の勇者パーティーが敗れ、一気に劣勢になった人類。

苦肉の策として、魔王を倒せる存在を異世界に求めた。

勇者召喚である。

こうして俺はこの世界に召喚された訳だ。


……解せない。

俺って世界を救う勇者なんだろ?

なんでこんな扱いがぞんざいなんだ?

しかも、魔物に勝てるのに、人間にボコられてるって何だよ。

そんな疑問が浮かんだ俺に、王様は説明して下さった。


 曰く、過去最強の力を持った魔王を倒せる勇者がその気になれば、人類だって危ない。

そこでこの世界を守護する女神様にお願いして、人類に勇者が危害を加える事は出来ないような、制約を付与したんだとか。


 なんだよ、それ。

いや、WEB小説で鬼畜外道な勇者の物語があったりしたし、この世界の人類が懸念する事も分かるがさ、それにしたって俺の扱い酷くないか?

つーか、守護する女神様? いるんだったらその人が魔王倒せば終わりだろーが。

マジ、訳わかんね。

それらの疑問をさりげなく聞いてみた。


 答えとしては、女神様が直接出てくると、魔物側の神である邪神が湧いてくるんだとさ。

神と神が戦えば、この世界は完全に滅んでしまう。

だから、女神様は直接介入せず、選ばれた存在に権能を与える。

それが勇者なんだと。

で、俺の扱いに関してなんだが、曰く『魔物を倒す事でしか役に立たない勇者に、配慮する必要があるか?』との事。

……この世界の人類ってクソだな!

ありがとうございました。

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