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三題噺もどき2

出会い

作者: 狐彪

三題噺もどき―にひゃくきゅうじゅう。

 


 一定の間隔でなる鐘の音。

 間延びしたような音は、学校中に響きわたり、授業のおわりを告げる。

「起立、礼、ありがとうございました~」

「「ありがとうございました~」」

 同時に、大半の教室から声が響く。

 教師は教科書を閉じ、次への課題を提示していく。

 それを聞いた生徒たちは、各々の反応を返し、ガタガタと次の行動を起こす。

「……」

 次は昼休みだ。

 ということは、昼食を取らなくてはいけない。

 それぞれ机を寄せたり、席を立ったり、教室から出たり。

 協調性の無さを見せられている気分だ。

「……」

 かく言う僕も、1人片づけを済ませ、昼食の準備をしていく。

 机の横にかけてある鞄の中から弁当を取り出す。

「……」

 この部屋の中に、共に弁当を囲むような仲の人間はいない。

 1人も。

 居たらよかったなぁ……と心の底からは思えないあたりが。

 思ってないわけでもないが、まぁ、いいかなと思ってしまう。

「……」

 これで図々しくも、この部屋で1人食べ始めてしまえば、少々あれかもしれないが。

 あいにくそこまで図太くはない。

「……」

 いや、案外、1人で食べて居たら誰かしらが、来るかもしれな……いや、ないな。

 ここの人間たちは、もう大抵色々と出来上がっていたし。

 初日から、こちら側から切ってしまったのもよくはなかっただろうが。自業自得だ。

 だからと言って、修復しようとか、仲間に入れてもらおうとかは、少しも思わないが。

 居心地が悪いには悪いが、慣れてしまえば案外どうにでもなってしまう。

 この部屋に押し込められるようになってそれなりに時間は経ったしな。

「……」

 さて。

 今日もいつものところで食べるとするか……晴れてるし大丈夫だろう。

 ……どうやら、僕がここに居続けると何かしら普通ごうが起こるらしい。

 さっきから視界の隅でチラチラとこちらを見やるやつがいる。めんどくさいモノを見るような目で見られても、困るのだが。

 ああいうのと直接かかわらずに済んだのは、いいことかもしれない。

「……」

 弁当を手に取り、立ち上がる。

 飲み物……は、買うか。

 今日は、そういえば、水筒ごと忘れていたのだった。財布……。

 ―あぁ、もうはいはい、さっさとどくさ…もう…。

「……」

 教室の後ろ側を歩き、廊下へと出ていく。

 なんで教室の扉ってこんなに重いんだろうなぁ。

 なんてことを思いながら、ガラガラと扉を閉じる。

 ―心なしかざわめきが増したが、今に始まったことじゃない。

「……」

 そこから先は、迷うことなく廊下を進んでいく。

 とりあえず、階段の方。

 部屋は3階にあるので、その分の階段を下りていく。

 用があるのは、靴箱だ。

 外に出るから、内履きを外履きに変えなくてはいけない。

「……」

 弁当と財布を落とさないよう、気持ち、気を付けながら3階降りていく。

 1階につくと、1年生がごちゃごちゃとしていた。

 それを横目に、靴箱へと向かう。

「……」

 学校の玄関を出ると、目の前に花壇が広がる。

 その横を通り、いつもの場所へと向かっていく。

 と、その前に。

 飲み物を買いに行かなくては。

 水分なしで生活するのは、割と苦ではないのだが、食事は飲み物がないと少々きつい。

 ごはんがのどに詰まりかねない。

「……」

 花壇の横をいつもと反対側に抜け、体育館の横にある自動販売機を目指す。

 この学校には二台ほど自動販販売機が置かれている。どっちも炭酸が入っていない。

 謎だよな……。若者の居る学校の自動販売機に何故炭酸入れてないんだろうか……。

 まぁ、飲めないので関係ないのだが。

「……?」

 ぼうっと、関係ないことを考えながら歩いていると。

 視界の端に、何かかが映った。

 体育館の近くには、謎のベンチが置かれている。休憩用ということらしいが、あまりいらないような気もする。必要なのかもしれないが、使われてるのをあまり見ない。

「……」

 そのベンチに。

 誰かが座っていた。

「……??」

 我が校の制服に身を包み、ひっそりと座っている。

 生徒であれば、制服を着ていて当たり前なのだが……あんな目立ちそうな人見たことない。

 女性生徒は、スカーフの色で学年が分かれているのだが、あれは同じ年の学年のものだ。

「きんぱつ……」

 おんなじ学年に、そんな派手髪の人間がいれば、有名になっていそうだ。

 確かに、他の人間に興味はさしてないが、噂ぐらいは耳にすることはあるし、生活していくうえでそういうのは、割と重宝している。

 聞きたくなくても聞こえてくると言うのもあるが。

「……転校生?」

 だったとしても、女子生徒辺りが耳に挟んで噂を流していそうだが。

 あれだけ目立つような見た目であれば、たとえ噂されていなくても、目には入ってきそうだ。

「ぇ――」

 突然。

 そこに座っていた少女が、首を回した。

 くるりと、金髪をなびかせながら。

 ゆっくりと。

「――」

 整った顔立ち。

 全体的に色素が薄いのか、どこか人間味が欠けていている。

 その美しい顔に2つ並んだ、青。

「――」

 ぱちりと開かれた2つの瞳は、美しい青目。

 海のような、空のような。

 青のような、紺のような。

 不思議な。

「――」

 ―天使のようだ。

 なんて、らしくもないことを思ってしまった。

 いつまでも眺めて居たいなんて思ってしまった。

「――」

 目が離せなくなる。

 吸い込まれるように、足が。

 そちらへ。




「――――ぁれ?」

 踏み出した瞬間。

 そこにあったはずのものはなかった。

 確かにそこにいたはずの少女は消えていた。


 お前は幻を見ていたんだと。

 風に揺れる木々が笑っていた。



 お題:天使・青目・花壇



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