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第34話 異世界少女(?)との話しかた②

「な、なんでお前がここに!?」

「ねーさまがピピナのけはいをさぐれるよーに、ピピナだってねーさまのけはいをさぐれるんですよ」


 しょーがないですねーとため息をつきながら、ピピナがこっちへ飛んでくる。リリナさんはというと、恥ずかしさで顔をさらに真っ赤にしながら涙目でピピナをにらんでいた。


「すいませんねー、さすけ。うちのへっぽこねーさまがめーわくかけて」

「う、うるさいっ! 私はへっぽこなどではない!」

「どのくちがいうですか。ひとのともだちをかってにさらって、かってにうらんで、かってにあたまごすごすぶつけてどげざして、それのどこがへっぽこじゃないです?」

「ううっ」

「いーかげん、まわりがみえなくなるとどたばたするのはなおしたほーがいーですよ」

「お前に言われなくともわかってる!」


 精一杯強がろうとするリリナさんだけど、透明の羽はふるふる震えてるし、とがった耳もしおれ気味。これ以上責められるのは酷ってもんだ。


「仕方ないだろ。リリナさん、ルティとお前を心配してそうなっちゃったんだからさ」

「むー……そーいわれるとこまりますね。ねーさまがぼーそーしたげんいん、ピピナもかかわってるってことですか」

「そうだっ、ピピナがあんな適当な手紙を残したのがいけないんだぞ! ちゃんと私と会って話しておけば!」

「だって、ねーさまのことだからすぐおせっきょーだっておもって」

「エルティシア様が行方不明のときに、姿を消す方が問題だとわからないのか! そのせいで、私はお前が賊にさらわれて別の世界へ飛ばされたと思ってしまったんだ!」

「そして、俺が賊に間違われたと」

「「あ……ご、ごめんなさい」」


 俺が雰囲気をなごませようとわざとらしく言ったら、リリナさんもピピナもしゅんとなった。ふたりとも、そこは結構気にしてるんだ。


「過ぎたことだし、それにルティとピピナを帰さなかった俺はそう言われても仕方ないですよ」

「さすけはなーんもわるくないですよ。だいたい、ねーさまはさすけにしっとしすぎです」

「し、嫉妬など、私は全然していないぞ」

「うーそーでーすーねー」


 顔を背けるリリナさんを追うように、ピピナがねっとりと言いながら顔の前へと飛んでいく。


「ねーさま、ピピナとルティさまがさすけとわらいあってたからむかむかしてたですよね。あと、さすけがらじおでルティさまをつったっておもいこんで」

「うるさいっ、うるさいっ! いつも簡単に懐いて、いろんな人にホイホイついていくお前がいけないんだ!」

「またまたー。さっき、おいてきぼりにされたからしんぱいしたっていってたじゃないですか」

「……えっ?」

「でも、ルティさまもピピナも、ミアさまとねーさまのところがかえるばしょなんですから、しんぱいしなくてだいじょーぶですよ」

「ちょ、ちょっと待て」


 わざとらしくふざけたるピピナの言葉に、リリナさんは突然我に返ったように冷静な表情を見せた。


「何故、私がさっきサスケ殿に話したことをお前が知っている?」

「えっ?」


 それに対して、ピピナはきょとんとしながら可愛らしく首をかしげると、


「さすけ、わざとやってたんじゃないですか?」

「何をだよ」


 俺のほうを向いて、わけのわからないことを聞いてきた。


「ピピナ、ねーさまをおっかけてたらこえがしたからここにきたですよ」

「声って、俺とリリナさんが話してる声がか?」

「はいです。ふたりのこえがそらをとんでたから、あーここにいたんだなーって」

「えー……」


 俺とリリナさんの声が、空を飛んでいた?


「ピピナ、きっとさすけがわざときこえるよーにしてたとおもったです」


 そう言いながら、ピピナは俺の手元にある送信キットへ飛んで来て、プラスチックのケースをぺしぺしと叩き始めた。


「あ」


 見れば、電源スイッチはオンで、音声入力はマイクのほうになっていて。


「どういうことだ、ピピナ」

「サスケがもってきたこれって、つかえるよーにするとまわりにおとがとぶんです。で、このきかいはつかえるよーにしっぱなしだったみたいで」

「……ごめんなさい、リリナさん」

「はい?」

「俺たちの会話、ピピナに筒抜けだったみたいです」

「…………」


 俺の説明を、ぽけーっと聞いていたリリナさん。


「……っ」


 その顔が、下からどんどん赤くなっていって、


「!!!!!!!!!」


 あ、爆発した。


「あっ、あなたはっ、なんてことをしてくれたんですかっ!?」

「いやっ、リリナさんに落とされないように必死で!」

「また私ですか! 私の失態ですか!」

「たまたまです! たまたまそうなってただけです!」

「わー! わー!」


 わーわー言いながら、涙目のリリナさんがぽかぽかと俺を叩く。いかん、言っちゃ悪いが面白いぞこのポンコツモード。


「だいじょーぶですよ。そこをきーてたのはピピナだけですし、ルティさまたちがらじおでききはじめたのは、さすけがねーさまとちゃんとはなしをしたいってあたりからですから」

「待てっ! ルティたちも聴いてるのか!?」

「ねーさまをせっとくしよーとおもって、みーんなつれてきただけです。いまもしたできーてますよ」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 俺の問いにピピナが答えると、リリナさんはごろごろ転がってからうずくまって床をばんばん叩き始めた。あの……ほんと、すいません。


「こんな失態を妹だけでなく皆様方にも聞かれるなんて! 私はっ、私はどうすれば!」

「そんなの簡単だよ、リリナちゃん!」


 と、底抜けに明るい声が聞こえてきたと思った、次の瞬間。


「ひいっ!?」


 ハシゴの下からにゅっと伸びてきた手が、リリナさんの右足を思いっきりつかんで、


「読書したり物語に浸ったりすれば、楽しめる上に心も落ち着いて一石二鳥! さあ、あたしといっしょに物語のお話をしよう!」

「理屈通ってねーしこえーよお前!」


 そのまま下から這い上がってきた有楽は、目をらんらんと輝かせながらそんなことを力説していた。あと、そのハァハァはやめなさい!


「せんぱいばっかり、リリナちゃんとたくさんお話ししてずるいです! あたしにもその権利はあるはずですよ!」

「俺はただの成り行き上でだよ! つーかそのくらい待てや!」

「いいえ、待てません!」

「あ、あのー」

「ん?」


 有楽を説教していたところで、ピピナがおそるおそるといった感じで声を掛けてきた。


「ねーさま、きぜつしちゃったです」

「えっ」

「…………」


 言われて床のほうを見てみると、すっかりのびて目を回しているリリナさんの姿が。しばらくすると、ぽしゅんと音を立ててまたまた手のひらサイズへと変身した。


「これって……」

「かながだめおしをしましたね……」


 あれだけパニックになっていたところへ、有楽がホラーさながらの登場で驚かせたんだもんな。限界を突破したところで、不思議でもなんでもない。


「ご……ごめんなさい……」

「有楽」

「はい」

「とりあえず、あとでちょいと説教な」

「……はい」

「それと、起きたらいっしょに謝るぞ。聴いてたなら、経緯はわかってるよな?」

「……もちろんです」


 ハシゴの降り口から顔を出した有楽が、しゅんとなって肩を落とす。

 有楽がリリナさんと話したかったってのも、わからないわけじゃない。それでも聴いていたにしてはタイミングが悪すぎたし、ちょいとばかりお灸を据えておいたほうがいいだろう。


「あの」

「ん? どうした、ピピナ」

「ピピナも、ねーさまにあやまるです」


 心配そうにリリナさんの顔をのぞいていたピピナが、俺たちに声をかけてきた。


「ねーさまがこわいからって、ちゃんとはなさなかったピピナがいけなかったんですよ」


 そして、リリナさんのほっぺたを優しくなでる。やっぱり、なんだかんだ言ってお姉さんが嫌いってわけじゃないみたいだ。


「そっか」


 だから、俺はそれだけ言ってあとはピピナ自身に任せることにした。

 少しばかり……いや、かなり思い込みが激しい人ではあるけど、憎かったはずの俺に向きあってちゃんと話を聞いてくれたんだから。

 きっと、大丈夫。

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