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08 光の勇者、ふたたび

僕が目を開くと、そこには異様としか言い表せない景色が広がっていた。

水面のような文様が渦巻く、銀色の空間。

しかし、不思議と不快感はない――むしろ、体中に力がみなぎるようだ。

僕は、それにあの少女はいったいどうなってしまったのだ?

その疑問は、すぐに解けた。

「!」

水面に映った、その姿。

人に近しい顔ながら、額に位置するクリスタルから伸びる鶏冠のような部位が目を引く頭部。

首から肩の付け根を覆う防具。胸元や腹、足に走る灰色のライン。

そして胸に輝く、青い発光体。

銀と黒に彩られた『何か』――少女を抱きかかえながら宙に浮かぶそれは。


「僕……なのか」

紛れもなく、自分が変化した存在であった。

僕は、人ならざる姿に変わっていたのだ。

眼下には、目を見開く村人たち――それに、リリンさん。

どうやら無意識のうちに、僕はここまで少女を連れてきていていたようだ。

状況がある程度呑み込めたところで、一旦驚きの感情を頭の隅へと追いやる。

僕が何者であっても構わない。今やるべきことは一つ――村を救うことだ。

静かに着地し、少女を受け渡すと僕は彼女らを見つめ、ただ頷いた。

「もう大丈夫」、そんな思いを込めて。

そして振り返り、村の方角へとすぐさま飛び立った。



風を切り裂きながら飛ぶと、みるみるうちに村が近づいてきた。いまだ、巨人たちは民家をなぎ倒し、畑を踏み荒らし――破壊の限りを尽くしていた。


「デァッ!」

僕はさらに加速をつけると、急降下。その勢いに任せ、強烈な蹴りをサイクロプスの横っ面に浴びせる。

その巨体は悲鳴を上げるよりも先に大きく吹き飛び、2度、3度回転してから地面に激突。

「ウガ!?」

「ギギ!?」

それを遅れて知覚した巨人たちが、何事だと言わんばかりに目を見開き、着地した僕の方向を向く。

「フゥン……ッ!」

僕は左腕を曲げて引き、右腕を突き出した構えを取り、腰を落として奴らを見据える。


「フンガ―ッ!」

敵。仲間の仇。そんな感情をむき出しに、一人の巨人が僕目掛けて走り出した。巨体故の歩幅の大きさで、瞬く間に僕の眼前に迫りくる。

そして怒りのままに、僕をその足で踏みつけようとした――が。

「ググ……!?」

その足が地面と僕とを挟みつぶすことはなかった。僕はその足を片手で受け止めると、

「ダッ!」

掛け声とともに、空いたもう片方の手のひらから光弾を放つ。

瞬間。血の一滴すらまき散らさずに、サイクロプスの巨体は消し飛んだ。


「「「ヌッ……ヌガァーー!」」」

その光景を見て、巨人たちは危機を感じたのか、一斉に襲い掛かる。

再び空へと飛び立つことで攻撃を回避すると、奴らはその口から炎を吐き出した。

放たれた5つの火炎は一つとなり、巨大な1つの炎となって僕に迫る。だが。

「チャッ!ハアァァ……!」

僕は落ち着いて両腕を胸の前で交差、力を溜め――

「セェヤァ――ッ!」

解き放った。光の奔流が炎をかき消し、そのまま巨人たちに直撃する。

爆発とともに、光の柱が雲を貫いた。

煙が晴れたとき。そこに悪しき者たちの姿は、もうどこにもなかった。

僕は地面に降り立ち、力を抜く。

割れた窓ガラスに映っていたその姿は、よく知る自分の姿へと戻っていた――



「ふん……もう片付けちまったか」

一方。彼の戦いを陰より見つめていた者がいた。

黒い装束を纏い、フードで顔を隠した男。彼は手を掲げ、何かを待っていた。

すると、その手の周りに紫色の粒子が集まってゆき――


「ま、こんな雑魚相手に手こずられても困るがな?」

一つの鍵のような物体が生成される。それにはなんと――


『Cyclops』


先ほど村を襲った、あの巨人の横顔が描かれていた。

男はそれををねっとりと観察してから懐へしまい、空を見上げ――

「戦いはまだ、始まったばかりだ……見せてもらうぜ?お前の『光』がどんなものか」

「ああ~、楽しみだ……」







「なぁ?ハ~ジメ……フフッ♪」

口元をゆがめて、懐かしむように呟いた。

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