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七回目

 それは燃えるように赤く染まった木の葉が、風に吹かれて舞い散る日のことでした。


「こんにちは、かみさま! 今日もきれいなお(ぐし)ですね!」

「………おぬしの、名は」

「もう、未来のお嫁さんの名前を忘れるなんて、ボケちゃってます? わたしはかみさまがボケても大好きですけど! るりですよ、るり。あなたのお嫁さんです!」

「…………変わったな」

「それは、もう! なんと言っても十五になりましたから!」


 言って、るりが両手を腰に当て、胸を得意げにそらしました。

 なるほど、るりの言うとおり背丈は伸びているようでした。けれど手も足も、まるで枯れ枝のように細いのでした。

 木の精はため息をひとつ、つきました。それから己の木から桃をひとつもぎました。


「……食べなさい」

「! いいんですか! わあい! かみさまの桃を食べられるなんて、夢みたい! 嬉しいなあ」


 るりは手渡された桃を大事に大事に両手で受けとり、そっと頬ずりをしました。


「……食べなさい」

「はあい。でも、もったいなくて。初めてかみさまがくれたものですもの、味わって食べないと」


 言って、るりはひとくち桃をかじりました。


「ふふ、産毛がくすぐったい」

「皮を剥きなさい」

「はあい」


 くすくす、るりが笑います。

 その笑顔を木の精はぼんやりと見ていました。


「どうかしましたか、かみさま」

「………」

「もしや、あまりにわたしがかわいいものだから見惚れてましたか?!」

「それはない」

「もうっ、照屋さんっ」


 変わらぬ調子で笑うるりに木の精はほんの少し頭の痛みを思い出しました。

 けれども、元気のないるりを見るよりは良い、と桃を食べるるりを見つめていました。

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