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二回目

 それは太陽の光で肌が焼け焦げてしまいそうになる夏のある日のことでした。


「こんにちは、かみさま! 今日もきれいなお(ぐし)ですね!」

「……おぬしの名はなんと言ったか」

「わたしの名前を忘れるなんて、ひどい! るりですよ! るり! 未来の花嫁の名前くらい覚えておいてください!」

「………おぬしはいくつになったのだ」

「七つになりました!」


 木の精は長く細いため息をつきます。

 るりはにこにこと笑いながら、両の手に抱えた草花を桃の木の根元に置きました。


「家が山から遠くなってしまって、来るのが遅れてしまいましたけど、今日も大好きですよ旦那さま!」

「……誰がだ。やめてくれ」

「今度は肥を持ってきますね!」

「やめてくれ」


 えぇー、と肩を落としたるりでしたが、すぐに元気を取り戻しました。


「そうですね! 肥えは重いしここに来るまでにこぼしてしまうかもしれません! ついでに臭いし!

 でも、じゃあかみさまにはどんなお土産を持ってくればいいんでしょう。お花だけじゃさみしいでしょう?」

「さみしくない」

「おにぎりでも持ってきましょうか」

「なにも持ってこなくていい」

「わたしがいれば何もいらないってことですね、えへっ」

「………祠に」


 木の精は桃の木の根元を指さしました。

 根元には小さな祠がありました。手入れがされていない祠はあちらこちらに苔が生えていました。


「手を合わせて祈ればそれでよい、と教えられただろう」

「あー……? えー、どうだったっけ? わたしの頭はかみさまのことでいっぱいなので!

 お祈りはしますね! かみさまがわたしをお嫁さんにしてくれますように!」

「………」


 木の精は久方ぶりの頭痛にこめかみを押さえました。

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