死にたがりは謁見する[2]
なんというか……ほんとにすいません
(ネルグレス……?どっかで聞いた気がような)
国王の名乗りを聞いたハルがそんな思いを抱きながら周囲を少し見ていくと、左手のまるで彫像のように兵士が一糸乱れずに並んでいる隊列の、さらに奥に立っていた男と目が合った。
ハルからしてみれば、とてもとても見覚えのあるその金髪の男は目が合ったと気づき、すぐに目を逸らした。
(サウルのやつめ……父親がかなりの権力者?国のトップじゃないか)
「旅人よ、名をなんという」
「……ハル。ただのハルだ」
やや逸れた意識を、戻すように投げかけられた問いに答える。
つい数十時間前に決まった、安直な新たな名を。
後でサウルには話をすることを心に決め、再び玉座に目をやる。
「そうか、ではハルよ。今日は何のために余との謁見を所望した。申せ」
「僕が今日ここに来させてもらった理由は一つ。国の長である貴方と、契約を結ぶためだ」
その言葉にアレスト王は頬杖をつきながら目を細める。
沈黙を貫いている貴族たちも、何かを言いたそうにしながらもひたすらに黙り続けていた。
ただ、場の沈黙をかき消すように、外の城下町からの喧騒だけがぼんやりと聞こえてくる。
「そなたには愚息が世話になったようだからな。内容にもよるが、善処しようではないか」
「そのお心遣い、感謝します。早速の内容ですが…僕に、誰も訪れないような土地をください」