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ピエロさんの話

「道化師の話」


もぐらくんとひまわりくんは山道を歩いていると、道に標識がありました。


標識には「ここから10キロ先、大道芸の町」と書いています。


ひまわりくんはもぐらくんに聞きます。


「もぐらくん。大道芸って何だい?」


もぐらくんは答えます。


「大道芸ってのは、道でいろんな芸をしてみんなに見せることさ。」


「きっと、楽しいよ。」


ひまわりくんがニッコリ笑いながら言います。


「見てみたなー。もぐらくん。この街に行ってみようよ。」


もぐらくんもニッコリ笑いながら言います。


「うん。行ってみよう。」


二人は小踊りしながら、町の方に走って行きます。


もぐらくんとひまわりくんは、山の中の小さな村に着きました。


その町ではたくさんの芸者さんが、芸をしています。


その中にひときわ人が集まっている芸者さんがいます。


その芸者さんは、ピエロです。


おどけたりしながら、たくさんの玉でお手玉したり、大きな玉に乗ったり、パントマイムしたりし、人々を笑顔にしています。


もぐらくんとひまわりくんも、そのピエロさんのところに行きます。


二人もピエロさんの芸を面白く見てます。


芸が終わって、みんなが去った後に、もぐらくんとひまわりくんはピエロさんに話かけます。


もぐらくんはピエロさんに言います。


「ピエロさんはすごいね。たくさんの人を笑顔にしている。」


ですが、ピエロさんは沈んだ顔で答えます。


「ありがとう。でもね、僕にも笑顔にできない人がいるんだ。」


そういうと、道路向こうのベンチに座っている女の子を指さします。


そしてピエロさんは話しました。


「僕はもともと違うところで芸をしていたんだけど、あの女の子がいつ見ても悲しい顔をしているから、何とか笑顔にしたいと思って個々の場所に移って芸をするようになったんだ。」


「でもね、もう何日もあの子に見えるところで芸をしているけど、まったく笑顔になってくれないんだ。」


ひまわりくんがピエロさんに聞きます。


「ピエロさんはあの子が好きなのかい?」


すると、ピエロさんは顔を赤くしていいます。


「恥ずかしいこと聞かないでくれよ。」


と照れて笑いました。


もぐらくんはピエロさんに聞きます。


「あの子はいつもあそこのベンチにいるの?」


ピエロさんは答えます。


「そうなんだ。毎日あのベンチに座っていて、夕方になるとため息をついて帰っていく。」


「だから、僕も毎日ここで芸をするようになったんだ。でも全然笑ってくれない。」


そう言うピエロさんを見てもぐらくんとひまわりくんはピエロさんの為に何かしてあげたくなりました。


翌日、またいつものベンチにいる女の子に、もぐらくんとひまわりくんは話しかけました。


もぐらくんは言います。


「きみはいつもこのベンチで何をしているんですか?」


女の子は答えます。


「私は、人を待っているの。」


「私の好きな兵隊さんのことを待っているの。」


「1年で戻ってくる約束で、この街を出て行ったんだけど、もう何年も戻ってこないわ。」


「彼は、戻ってきたら私と結婚する約束しているのに。私のこと忘れちゃったのかな。」


そう言うと女の子は泣き出してしまいました。


もぐらくんとひまわりくんは、女の子の話をピエロさんに教えました。


するとピエロさんは怒っていいました。


「女の子を悲しませるなんて、なんてひどい彼氏だ。」


「そんな彼氏より、僕の方がずっと彼女のこと考えてるし、幸せにできる。」


そういうと、いつもより、楽し気に芸をして彼女に届くようにがんばります。


しかし、彼女はいつものように悲しい顔しかしてません。


雨の日も、風の日も、女の子はベンチにきます。


ピエロさんも、自分のことに気付いてもらうために毎日芸をします。


いつか、ベンチの女の子が笑ってくれるように頑張って芸をします。


それから何日もたっても、やっぱり女の子は笑ってくれませんでした。


ピエロさんは落ち込みました。


ピエロさんはもぐらくんとひまわりくんに言います。


「どうしたら笑ってくれないんだろう。」


「どうしたら僕のことに気付いてくれるんだろう。」


ひまわりくんは、種を取り出してピエロさんに言います。


「そんなに彼女のことが好きなら、僕の種を食べるといいよ。」


「僕の種は、一つだけ願いことを叶えてくれるチカラがあるから。本当にピエロさんが女の子のこと好きなら、種を食べて願えば叶うはずだよ。」


ピエロさんは、驚いた顔をしてひまわりくんに言います。


「そんな魔法みたいなことが出来るのかい?」


「ありがとう。」


ひまわりくんはピエロさんに言います。


「ピエロさんは優しいピエロさんだから、ピエロさんの為にしてあげたいだけさ。」


そういうとニッコリ笑いました。


次の日、いつもの道にピエロさんはいませんでした。


もぐらくんとひまわりくんは、「種を食べて願いが叶ったんだろう」とおもいました。


ですが、いつものベンチには女の子が座っています。


もぐらくんとひまわりくんは不思議な顔をしています。


すると、女の子のベンチの前に1台のバスが止まり、一人の兵隊さんが降りてきました。


兵隊さんは女の子に話かけます。


「ずいぶん待たせてしまったね。」


女の子は兵隊さんを見て泣いてしまいます。


でもその顔は嬉しさにあふれた笑顔です。


女の子は幸せそうにその兵隊さんと一緒におうちに帰っていきました。


ピエロさんは、違う道で芸をしていました。


もぐらくんとひまわりくんはピエロさんに聞きます。


「ピエロさんは種を食べなかったの?」


ピエロさんは答えます。


「食べたさ。」


「そして、願ったんだ。あの子が好きな人と会えて幸せになって、とびっきりの笑顔になるように、ってさ。」


「僕は失恋してしまったよ。」


そういうと、悲しい顔で笑いました。


そしてピエロさんは一呼吸ついて言います。


「でも、いつも悲しい顔をしていた彼女を見ていたころより、ずっとすがすがしい気持ちでいっぱいだ。」


「ありがとうひまわりくん。もぐらくん。」


ひまわりくんはニッコリ笑いながら言います。


「やっぱりピエロさんは、心の優しいピエロさんだった。」


ピエロさんも、ニッコリ笑いました。


もぐらくんとひまわりくんは、ピエロさんに旅立つことを伝えました。


ピエロさんは、一つの地図を渡し言いました。


「その地図に書いてあるところに行ってごらん。」


そこはたくさんの道が交差している峠で、地図の宿にはいろんなところから来た人が泊まりに来る。きっとおもしろい話もたくさん聞けると思うよ。」


もぐらくんは、ピエロさんにお礼をしながら言います。


「ありがとう。ピエロさん。きっとここに行ったら行ったことの無い場所を教えてもらえる。」


そういうと、ピエロさんに見送られながらもぐらくんとひまわりくんは旅立ちました。


心優しいピエロさんは、今日も道で芸をしています。


たくさんの人たちを笑顔にしています。


きっと、心優しいピエロさんだから、すぐにかわいい彼女はできることでしょう。


ほら、


息を切らしながら、一人の女の子がやってきます。


その女の子はピエロさんが前に芸をやっていた頃に毎日ピエロさんに会いに来ていた子です。


ですが、ピエロさんはきっと気付いてないでしょうね。


ピエロさんが前に芸をしていたところにいなくなって、その子はピエロさんをずっと探していたようです。


ピエロさんを見つけて女の子は嬉しそうに笑いました。


そして少し離れたところから、モジモジしながらピエロさんを見ていますよ。


小さな花束を握って。


今日はピエロさんに渡せるでしょうか?


つづく。


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