無理でしょ!!
2日間私の頭の中を駆け巡りまくった乙女ゲーム、、『フラワーロマンス』は、16歳時点で一定程度の魔力を持つ者が入学を義務付けられている『王都魔法学園』がストーリーの主なステージです。ああ、言い忘れてましたがこのフラン王国は魔法も使えます。前世の日本という所では一切そういうものは無さそうでしたから、魔法のない世界には少し驚きましたわ。
テンプレの如く庶民ながら強い魔力の持ち主という事でヒロインちゃんは周囲に注目されながらの登場となる訳です。『一定程度の』魔力というのは主に貴族に現れるもので、そういった意味でも庶民ながらに強い魔力を有するヒロインちゃんは、注目の的、というより好奇の目にさらされる事になります。ただ、ヒロインちゃんがヒロインちゃんたる所以とも言えるのが、彼女の魔力属性が『光』であるという事ですわ。強い光属性の庶民など、王都魔法学園においてひっそり暮らせる訳がありません。そしてそんな人は100年に1人現れるかどうか、という確率らしいですわ。ちなみに魔力属性には『土』、『水』、『火』、『闇』、『光』の5つが存在していて、私は水属性です。まあ、これまでワガママ三昧で生きてきた私ですから、碌に魔力発揮などできませんが・・・。話が逸れましたわね。つまり、ヒロインちゃんはあらゆる意味において特別で珍しい存在だった、という事です。そしてそんなヒロインちゃんを心配し、手助けを行おうと現れるのが、この乙女ゲームにおける攻略対象者様の皆さんですわ。全員で5人でしたね。攻略対象者ごとにライバルポジションとなるご令嬢は違いましたので、今は私の登場するシナリオをご紹介します。
メインストーリーとも呼ばれるような、つまり1番人気の高い、王道のシナリオにおいて、この私が悪役令嬢として登場するのです。という事は皆さんお分かりですね?王道のヒーローは私の婚約者様、という事ですわ。現状からしてララリアである私と、婚約者様であるハロルド・コスモ様の仲は至って最悪、という所ですからね・・。私は一方的に大好きなんですが、そういえばもう1年ほどお会いしていないような気がしますわ。えっ、私嫌われすぎではなくて?まあ、昨日までの私であれば当たり前かもしれませんが・・。と、まあこんな調子でハロルド様のお心がララリアに無い事は明白であり、ヒロインちゃんと出会ったハロルド様は初めて恋というものを自覚するのですわ。そしてララリアはもちろんヒロインちゃんに嫉妬して嫌がらせをするのです。シナリオ上でもララリアは癪気体に襲われて余命宣告もされていましたから、そんな状況を逆手に取って、周囲に同情をあおりながらヒロインちゃんをいじめぬきます。そんな事をしていたら好かれてもいないハロルド様からはますます嫌われる訳で。最終的に、国外追放、となるのですが・・・。
問題なのはここからです。嫌ですけど、国外追放はまだ良いです(良くないですけど!)。皆様ご存知の通り、乙女ゲームのストーリーに沿うならば、私はこの後お医者様から余命宣告をされる予定です。それはお医者様から詳しく聞くとして、私の体の中に癪気体がある事は避けられない事実です。そして乙女ゲームでは国外追放直前、おそらく寿命だと宣告されている年齢で、癪気体が私の魂を吸い取り、その時点でララリア・ガーベルという人間が消滅します。1人の人間の魂を奪った癪気体は巨大化し、そこから王都全体の破壊を始めるのです。
つまり?
癪気体がこの体の中に存在する以上、いつか自動的に、物理的に『私』の人生が終了し、あろう事か、あの恐ろしい癪気体にこの平和な王都を破壊されてしまうと?
「どう考えても、無理ですわ!!!!!」
無理ですけれど、というより、無理だからこそ、私は万が一にもそんな事が起こらぬよう、変わらなければならない、対策を練らなければいけない、そう思いましたの。私がそんなものになるなんて考えるだけで眩暈がします。やばいって事ですわ。ですがここで登場する解決策とも言えるのが、そう、ヒロインちゃんの存在です。私は彼女と仲良しにならなければいけないと、諸々の理由から理解しました。仲良しの第一歩として、『ちゃん』付けで呼んでいますし。(ただしまだ出会っていない)(ヒロインの名前は知らない)
なぜ仲良しになる必要があるのか、それはこの後来て下さるお医者様のお話で分かると思いますわ。