初対面
私の癪気体関連の詳細はあまり口外されていませんので、この学園で知っているのは先生方とウィルネスター様、ミイナ、ハロルド様くらいです。ですが私が体調を考慮してあまりお茶会等に参加してこなかった為、いつからか『ララリア・ガーベル嬢は病弱であるようだ』という噂が流れ、『深窓のご令嬢』と表現されるようになってしまいましたわ。噂は事実ですので良いですが、、深窓の令嬢というのは・・恥ずかしいですね。『想像と違った』なんて言われても責任取れませんよ?
1年A組で最初に行われた自己紹介ではクラスメート30人の名前を覚えきる事は出来ませんでしたが、私が伺った事のある数少ないお茶会で知り合ったご令嬢も数名おり、この1年間が更に楽しみになりました。
そんな私は自己紹介で、
「初めまして、ララリア・ガーベルと申します。魔力属性は水ですわ。それと、私は少しだけ体調が崩れやすいのでご迷惑をおかけするかもしれませんが、仲良くして頂けますと嬉しいです。よろしくお願いします」
と、話しました。他の方と同様に拍手を頂けましたので、ほっとしましたわ。
同じクラスにウィルネスター様がいらっしゃる為か緊張されている方が多いように感じましたが、学生身分である事に変わりはなく、家格等に縛られるべきではないと先生からもお話があった事で、幾分か落ち着いた空気になったように感じます。私とウィルネスター様、実は3~4年程前から少し交流があるんですよね。ミイナの婚約者である事とハロルド様のご友人である事が関係して、4人でお茶会をしたり、なんて事もありましたわ。
今日は入学式とクラス発表、学園での簡単な諸注意説明で終わりです。まだお昼前ですので、マリーナ様をお昼ごはんに誘うチャンスですわ!クラスは違えど想いは変わりません!先生からの諸注意説明が終わり、解散の指示が出ましたので私はC組へ向かおうと教室を出ました。
「ララリア、どこに行くんだ。食堂?寮?・・どっちにしろ反対方向だ」
「違いますわ!C組に少し用があって・・。あっ、ハロルド様は来なくて大丈夫よ!」
「C組・・?知り合いでもいた?」
「まだ知り合いとは言えないけれど・・。とにかく!ハロルド様とは関係のない事ですから!」
「関係ない、ねえ・・。それでも俺は、ララリアの傍にいるって約束してるんだよ。・・・一応の確認だけど、会いに行こうとしてる相手って、男じゃないよね?」
「女の子よ!当たり前です!」
「そう、でも1人はダメだから」
何度話してもハロルド様には私1人で行く、という選択肢は無いようで、譲歩の結果、絶対に会話が聞こえない程度には離れた場所にいる事を約束してくれました。
そして私は今、C組の教室前にいます。ハロルド様には少し距離を取って頂きました。緊張します・・やっとお会い出来るんですね・・。色々な感情がありますが、私は思い切って教室を覗きました。マリーナ様のお顔は先程の入学式の際に確認しましたわ。
教室を見渡してすぐに、マリーナ様を見つける事が出来ました。ピンクブロンドのふわふわとした髪、そして大きくて潤んだ黄緑色の瞳。間違いありません。マリーナ様はお1人で荷物を整理されているようでしたので、声をかけるなら今ですわ!
「あの、マリーナ・ロマンヌ様でいらっしゃいますよね?私、ララリア・ガーベルと申します!」
「・・・・・え?えっと、はい。マリーナ・ロマンヌです。初めまして・・??」
「ええ!初めまして!いきなりですが、私とお友達になってください!」
「・・・え?・・えっと・・・」
それから約3分間、マリーナ様は困った表情をされ、何か考えているようにも見えましたが、実際のところは分かりません。いきなり知らない他クラスの生徒が『友達になろう』なんて言うのも変でしたかね・・。ですが現状それしか方法が無かったんです!あわよくばお昼ごはんを一緒に食べたかったですけど無理そうですわ・・。これは前途多難ですね・・。
「あの、マリーナ様、すみません。困らせてしまいましたね。お友達になりたい気持ちは変わりませんので、また来ますわ!」
私がそう言ってマリーナ様の元を離れようとした時、何故か、傍にハロルド様がいましたわ。つまり、マリーナ様の目の前に、ハロルド様がいる、という状況な訳です。・・・何故???!!!
「は、は・・ハロルド様??・・何故ですか、何故ここにいるんですの。先ほど約束したじゃないですか?!!」
「いや、会話が聞こえなくても明らかにララリアが相手を困らせてるみたいだったから。何言ってるんだろうと思って。それに・・マリーナ・ロマンヌ嬢、ですよね?」
「あ、今朝の・・。本当に、ありがとうございました。おかげで迷わず辿り着けました」
「それは良かったです」
ああ、もう!!!会話しちゃってるじゃないですか!!しかも、今朝の話ですわ。
「本当に・・。私、迷ってしまっていて・・あの地図を頂けてありがたかったです」
「地図・・?ハロルド様、地図って何ですか?」
「ララリア・・流石に地図くらい知っておいてくれ・・。礼儀作法は出来るんだから勉強も頑張った方が良いぞ?」
「違いますわ!!そうではなくて!・・道に迷ったマリーナ様を、馬車に乗せてあげたのではないの?」
「何でそう考えたのか分からないけど・・。そんな事はしていない。簡単な地図を書いて渡しただけだ」
結局、その後すぐにハロルド様にA組まで連れ戻されました。ですので、マリーナ様との距離は・・全然縮まってないですわ!!むしろハロルド様とマリーナ様の距離の方が縮まったような気さえします!ですがまだ初日、まだまだ時間はありますわ!頑張ります!!




