絶対に
入学式ではウィルネスター様が新入生代表として挨拶をされていました。ウィルネスター様のお兄様である第一王子様は既に卒業されておりますので、王都魔法学園で唯一の王族となりますわ。
少し座席は離れていましたが、ミイナを見つけ手を振り合いました。この後発表されるクラスが同じである事を祈ります。そして私の決心も聞いて頂かなければ・・!!ミイナには申し訳ないですが、あの作戦は何年経っても効果なかったですからね・・もう中止です。この1年は特にマリーナ様との仲を深める事を第一に考えますわ。ああ、そう考えるとマリーナ様も同じクラスであって欲しいですね、早くお友達になってキャッキャウフフなんて青春も味わい、癪気体を消し去って下されば最高ですわ!!私が私でいられる事、当たり前のようですけれど、私はそうではなくなる可能性がありますので、マリーナ様が必要不可欠です。
先生方の有難いお話を聞きながらも、私は先ほどのハロルド様との会話を思い出していました。
・・・・・・・マリーナ様とお会いしたとおっしゃってましたね???
それ、出会いイベントじゃないですか!!!
マリーナ様が私の救世主である事にばかり気を取られていましたが、しっかりヒロインでしたわ!!攻略対象者の名前や主なイベントは7年前から脳に刷り込まれたように記憶がしっかりしているので、間違いないです・・今朝、しっかりハロルド様との出会いイベントが達成されたんですわ・・。あら?ですが私の記憶では、ハロルド様はマリーナ様を学園近くまで公爵家の馬車に乗せてあげるはずですわ。寮に入るのは今日からですので、今朝は家、もしくは近くの宿から馬車等で登校しています。マリーナ様は庶民設定ですから徒歩で登校、しかし道に迷って困っている所をハロルド様が見つけ、馬車に乗せてあげるんですわ。メインヒーロー、流石です。
という事は、ハロルド様とマリーナ様は途中までご一緒だったのでしょうか?『軽率な行動はするべきではないだろう』とおっしゃっていましたが・・・これ、乙女ゲームですからね。私、設定上悪役令嬢ですからね・・。もしかするとマリーナ様に一目ぼれしたって可能性もゼロではないですし・・。婚約者という立場の私を想って本当の事を言わなかった可能性も十分ありますね・・。
うーーん、この1年は出会いイベント以外特に何も起こらないはずですが、出来ればハロルド様のルートは外して頂きたいです。ハロルド様がマリーナ様に一目ぼれしちゃって婚約破棄を申し出た場合は仕方ないですが、私がまともな体になったらハロルド様と将来を約束したいのです。本当の本当に、しっかりと、未来のある婚約、結婚がしたいです。・・・・その為にはマリーナ様と仲良くならなければ!!一緒に登校してきたかどうか、勝手な疑問を持っても仕方ないですわ!そんな事はもう忘れましょう!ハロルド様に婚約破棄され新たなお相手が出来ない事を祈りつつ、私はマリーナ様と仲良くなる事を使命としますわ!
結局行き着く考えは『マリーナ様と仲良くなる』という分かり切ったもので、思考が堂々巡りになっている事にララリアが気づく前に、入学式は終了した。
入学式が終わると会場内の掲示板にクラスが発表されており、私とミイナ、そしてハロルド様、ウィルネスター様の4人が同じA組で、マリーナ様はC組でした。クラスは全部で5クラスあります。最初の1年間は専門的な授業というよりも一般的な基礎知識を満遍なく理解しよう、といったカリキュラムですので、どんな魔力属性であったとしてもほぼ関係なく5クラスに割り振られているようですわ。ちなみに、ビトレイ・サーン様はD組でした。マリーナ様とクラスが離れてしまった事はとてつもなく残念ですが、ビトレイ・サーン様と違うクラスなのは朗報です。記憶と同様の人物であるかは分かりませんが設定を知っている分、出来れば関わりたくありませんもの。
「ララリア!私達同じクラスよ!嬉しい!」
「ミイナ!ええ、本当に!改めてよろしくね」
「もちろん!ハロルド様も同じクラスのようですわね!よろしくお願いいたします」
掲示板の傍でミイナと合流し一緒にA組まで向かっているんですけれど、私の右隣にはハロルド様もいます。
「ああ、こちらこそ。ララリアの事情を知っていると思いますが、万が一にもララリアが俺のいない所で倒れたりしたらすぐに知らせて下さい。そんな事態にならない様、努めますが」
「ええ、分かりましたわ。私の大事な友人ですもの、いつでも力になります」
「ミイナ、本当にありがとう。ハロルド様も、両親の条件を飲んで下さってありがとうございます。でも、あまり気にしなくて良いの、ここには両親もいないんだから。アーケイン先生だっていらっしゃる事だし、私は大丈夫だから、ハロルド様は自由になさってね?」
ハロルド様が私の傍にいる事がこの学園の入学条件でしたけれど、考えてみれば何とも自己中心的な条件ですわ。私に付きっきりではハロルド様の自由がありません。いざとなればアーケイン先生がいらっしゃる事ですし、魔力供給が必要になった時だけ申し訳ないですけれど呼び出せば良いんです。それに、私がマリーナ様と仲良しになる過程のほとんどにハロルド様が付き添うなんて嫌ですからね!悪役令嬢自ら攻略対象者を連れてくるなんて、私が接点を作ってあげるようなものじゃないですか、絶対嫌です!
そんな気持ちでハロルド様に話すと、入学式後に会ってから少し顰めていた眉がさらに中央に寄って、いかにも機嫌が悪いといった表情をされました。
「ララリアは全然自分の体の事を分かってない。何が大丈夫なんだ。今だっていつ倒れてもおかしくない状態だからな?・・・自由にしてって言うなら、婚約は続けるしララリアの傍にいるから」
ミイナが『なんで婚約の話が?』と言うようなポカンとした顔をしましたが、すぐに
「そうよ!自分の事をもっと大切にしてくれないと困りますわ!それにハロルド様がいて下さるなんて頼もしいじゃない」
と、ハロルド様の言葉に同意しましたわ。
私が何と返事をすれば良いのか考えているうちに教室に到着し、私達はそれぞれの席に着きました。
ハロルド様が私の体調を気にかけて下さっているのは分かります。ですが、恋愛感情は無いはずです。何故婚約も続けたいんでしょうか・・ああ、もしかしてまだ『つなぎ』期間だったりします?7年前、まだ9歳なのに結婚前提の婚約なんて嫌だから出来るだけ長く私を『つなぎ』に使いたいって言ってたアレ、まだ続いてたりします?でも現状、私と結婚前提の婚約が結ばれているんですけれど・・ご存知ですよね?
ハロルド様が何を考えているのか、全く分かりません。
って、あれ??!このままだとハロルド様を連れてマリーナ様の元へ向かわなければならないって事ですか??!絶対に、嫌ですよ??!!!




