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入学します


 王都魔法学園。ここで過ごす3年間のうち、乙女ゲーム『フラワーロマンス』では2年生~卒業までの2年間を軸に描かれています。主人公であるヒロインちゃんは、入学時から学園で注目を浴びるんですわ。その美貌と魔力の物珍しさも相まって、学園での有名人となります。入学式で攻略対象者と言葉を交わす描写は僅かにありましたが、最初の1年間は所謂ナレーションベースという感じで、これといったイベントは無く2年生へと進級します。そしてようやく『フラワーロマンス』の幕開けとも言えるような出来事を発端に、ヒロインちゃんは攻略対象者と交流を深めていき、3年生進級時に1人のルートを選ぶのです。


 ここで5人の攻略対象者の皆様のうち、3人を紹介しますわ。1人は皆様ご存知のハロルド・コスモ様です。公爵位を持つ王宮医師団長の息子であり、ハロルド様ご自身も特別な光魔法を有しておられます。私自身、ハロルド様の魔力に何度も助けて頂いておりますわ。そして言わずと知れたあの容姿!輝く金の髪に青の瞳、優しそうでありながらしっかりと鍛えられた体躯には力強さも感じられます。がっしりしているようには見えませんのに不思議ですわ・・最高です、かっこ良いですわ!・・あら、話が逸れましたわ。続いて、2人目の攻略対象者は、ウィルネスター・コスモ様です。そう、このフラン王国の第二王子様であり、私のお友達であるミイナの婚約者様ですわ。ウィルネスター様の持つエメラルドグリーンの瞳は王族の証であり、シルバーの髪もとても素敵ですわ。ウィルネスター様は優しい王子様の具現化といっても差し支えない程に思慮深いお方です。そんなウィルネスター様はミイナの事をとても大事にされていて本当に幸せそうですから、ヒロインちゃんがウィルネスター様のルートに入るのはやめて頂けると嬉しいですね・・。いえ、ハロルド様のルートもやめて頂きたいですが。また、不幸中の幸いと言って良いのか分かりませんが、ヒロインちゃんがウィルネスター様のルートに入ったとしてもミイナが国外追放されたり家族と縁を切られたり、といった事は一切ありませんわ。というか、国外追放されるのは私だけでしたわね・・。結局国外追放直前に化け物になるんですけれど・・。うう、思い出すだけで冷や汗が止まりませんわ・・。次に行きましょう・・。3人目の攻略対象者はビトレイ・サーン様という方です。彼は王都騎士団長の息子で、私達と同学年です。彼には婚約者はいませんでしたが、女性好きと噂される方ですので、ライバルポジションには不特定多数の女生徒が登場しますわ。彼のルートで軽く10人は彼の1番を名乗るお嬢様がいらっしゃいましたわね・・。何人もの女生徒をたぶらかすなんて、個人的に好きになれません。4人目と5人目の攻略対象者は私達が2年生になってからの登場予定ですので、今は関係ありませんね。


 そんな事を思いながら、王都魔法学園の正門を見上げておりました。今日は入学式です。


「いよいよですわ・・。幸い最初の1年は特にイベントはありませんもの。この1年でヒロインちゃんと親友になってみせますわ!」


「何を1人でぶつぶつ言ってるんだ、ララリア。早く中に入ろう」


「ハロルド様!おはようございます。今日もとてもかっこ良いわ!」


「はいはい、ありがとう」


 待ち合わせていた正門で時間ぴったりにハロルド様とお会い出来ましたので、2人で入学式の会場まで向かいました。それにしても、私7年間ほど『両想いになればオールオッケー☆作戦』を実行しているんですけれど・・全く効果がありませんわ・・。私自身も何だか当たり前になってしまい、身に付きすぎて話の途中でも無意識に『好きです!』とか言うようになってしまいましたわ。


「そういえば、ここに来る途中でマリーナ・ロマンヌ嬢と会った」


「えっ?マリーナ・ロマンヌじょう、、?どなたです?」


「まさか、知らないのか?あの、光属性で100年に1人と言える程の魔力量が確認されたと注目されていた・・」


「ひ、ヒロインちゃん!!」


「・・?ひろいん?」


「あ、いえ。何でもありません。もちろん知っていますわ!ただ、お名前を存知あげなかったので・・。そう・・マリーナ・ロマンヌ様というのね・・。って、もうお会いしたの?」


「ああ。道に迷っていたようだったから」


「教えて差し上げたのね!さすがハロルド様、お優しいです。そんな所も好きですわ!・・・マリーナ様のお姿が無いという事は、ご一緒ではないのね?」


「ああ。ララリアを待たせてはいけないし。婚約者がいる身の上であまり軽率な行動はするべきではないだろう」


「・・そうね。・・・あの、ずっと言えなかったんだけれど、私達は今は婚約者だけれど、ハロルド様が嫌になったらいつでも婚約破棄して良いからね?」


「・・・は?」


 私は、ずっと考えていた事を、ようやく入学式の会場前でハロルド様に伝える事が出来ました。会場では男女別に席が用意されていましたのですぐにハロルド様とは別れ、その時のハロルド様がどんな表情をしていたのか、私には分かりませんでしたわ。


 7年間、決して短くはない時間をハロルド様と一緒に過ごさせて頂きました。色々な話をしましたのでお互いの好みは知り尽くしていますわ。敬語もほぼ消え、魔力供給という形でたくさん助けて頂いています。私からの好意は会うたびにお伝えしてきました。ですが、ハロルド様が私に好意を伝えて下さった事はこの7年間で一度もありませんわ。もちろん嫌われてはいないと信じていますし、それはハロルド様の雰囲気からも理解できますわ。そして、恋愛感情が無いという事もハロルド様の雰囲気から理解できてしまったのです。


 現状、見込みがあるとは言え、私が癪気体うんぬんから完全に開放され完治に至る保証はありません。考えたくもありませんが、万が一にもヒロインちゃ・・いえ、マリーナ様と仲良くなれなかった場合、私は最終的に私ではなくなります。ハロルド様は私と婚約を破棄すれば、もっと普通の、幸せで将来が約束された婚約が出来るはずですわ。私との婚約は結婚も視野に入れてはいるようですが、年齢が上がるにつれ、私の病状が思わしくありませんからね・・。絶対という将来の約束は出来ません。ですからハロルド様が今、そしてこれから先、私との婚約を不満に思えばいつでも破棄して頂けるよう、両親に頼みました。両親は複雑そうな顔をしていましたが、結果的に理解して頂けましたし、それ故、いつハロルド様が私の傍を離れても何とかなるように、学園入学条件として『王宮医師団の誰かが医務室に常勤する事』という無謀極まりない条件を出したのです。アーケイン先生には感謝ですわ。


 私は片思いで良いですわ。これから先、もしかするとすぐに婚約破棄されてしまうかもしれませんが、それは仕方のない事です。この7年間、本当に良い思い出がたくさんできましたから、片思いでも十分ですわ。ヒロイ・・いえ、マリーナ様と仲良くなって完治した際、もしまだハロルド様が他の方と婚約などされていなければ、その時に私はハロルド様に告白をしますわ。


 ですから『両想いになればオールオッケー☆作戦』は中止、ハロルド様にむやみに好意を伝える事もやめましょう。今は、これから出会うヒロ・・いえ、マリーナ様と仲良くなる事を第一に考えますわ!!


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