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「お父様、お母様!」


 婚約を続けるならば、善は急げです。私達はまさに婚約破棄のお話が進んでいるであろう応接間へと向かい、両親に声をかけましたわ。


「リア。それにハロルド君も。どうしたんだい?庭園は見飽きてしまったかな?」


「そんな事はありませんわ。あの・・あのね・・?私、今日ハロルド様と久しぶりにお会いして、本当に・・えっと、嬉しいんです!それで、ハロルド様の近くにいると辛い事も忘れてしまえるような、そんな気持ちになるんです!だから、お願いですわ!もう少しだけ、もう少しだけで良いですから、ハロルド様との婚約を続けさせて下さい!」


「僕からもお願いです。正直、これまでララリア嬢とはあまり関わりを持たなかったので、お互いに知らない部分が多かったのだと思います。僕は、ララリア嬢の病状の全てを理解する事は出来ないかもしれませんが、これからはお互いを深く知り、支えになりたいと考えます。どうか、婚約破棄のお話は取り消して頂けませんか?」


 言葉を詰まらせながらも何とか準備した言葉を並べる事が出来、ほっとしましたわ。そして私に続いたハロルド様の、さっきまでとはまるで別人のような言葉に驚き、うっかりまた惚れそうになっていると、私達の両親は全員ポカンとした表情をしていました。やはり婚約破棄の取り消しなど、不可能なんですね・・私の病状では仕方ありません、ハロルド様のお役には立てそうもありませんわ・・。そんな風に思っていると、お母様が言葉を発されました。


「リア、それにハロルド様。あなた達の婚約は今現在も続いていますわ。そして、今のところ婚約破棄は考えていませんわ」


「え??」


 聞き間違いでしょうか・・?婚約破棄は考えていないと?本当に??


「え・・?何故ですか?私の体は癪気体を取り込んでいます。普通ではありませんわ。それに、寿命だって・・。今日まで私にコスモ家の皆様が来られる事を言わなかったのも、婚約破棄をする為という事を言い辛かったからではないのですか・・?」


 私が純粋に疑問をぶつけると、ハロルド様のお母様が答えてくださいました。


「ララリアちゃん。ごめんなさいね。今日はルドの意思を確かめる為にガーベル家の皆様に協力してもらったの。ほら、ルドったらララリアちゃんと婚約してるのに全然会いに行かなかったでしょう?その上ララリアちゃんが倒れて大変な状態だって知らせも来たのに、『大変ですね』ってそれだけだったのよ。そんな状態でどの口が婚約者なんて言えるのかってね、本当にララリアちゃんやガーベル家の皆様に申し訳なくて仕方がなかったんですの。だからルドとララリアちゃんには当日まで内緒にして、ガーベル家にお邪魔させてもらって、ルドがララリアちゃんとどう向き合うか拝見させてもらおうと思ったの。これでもしルドがララリアちゃんを侮辱でもしていたらどうしてやろうか、なんて考えていたのよ。ねえ、旦那様?」


「ああ。だが、そんな事を考えなくて済みそうで良かった」


「あの・・ですが私は・・」


「癪気体が体の中にいて、寿命が20歳?だったかしら?・・あのね、ララリアちゃん。あなたは今、誰とどうしたいか、それだけを考えれば良いのよ。こんな状態じゃ結婚なんて出来ない、とか、婚約もきっと破棄される、とかそんな事は考えなくて良いのよ。少なくとも今はね。だって、隣をご覧なさい。あなたには今もハロルドっていう婚約者がいるわ。気も使えないような不出来な婚約者かもしれないけれど、きっとララリアちゃんを支えてあげられるはずよ。やる時はやる男に育てましたからね。私達はララリアちゃんの味方よ。うちは王族では無いし、病気になったようなのでさようなら、なんて余りにも悲しいわ。あなたが今、ハロルドと一緒にいたいと思ってくれた事が全てだわ」


「ほ、本当によろしいのですか・・?」


 思わずお父様の方に確認の意味も込めて目を向けました。


「私達も、コスモ家の皆様がここに来られるまで、何を思っていらっしゃるかまでは分からなくてね。それこそリアと同じように婚約破棄を申し入れられるのではないかと思っていたから少し拍子抜けしてるんだ。でも、リアは幸運だね。ハロルド君との婚約は今の通り、続くようだ」


「「ありがとうございます」」


 あら、ハロルド様と声が揃いましたわ。息がピッタリだと思って大丈夫でしょうか?更に言ってしまえば2人共、『ありがとうございます』と言った際の笑顔の引きつり方までピッタリでしたわ。


 ええ、そりゃ笑顔も引きつるでしょうよ。両親から婚約のお許し(?)は頂けましたが、肝心の私達、全ッッ然、心も通わせられていませんからね!!!!悲しい事に!!!




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