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斑鳩書店の開店
スラム街のはずれにその書店はできた。
店構えは変わっていて、内開きのドアを両方とも開け放って上方風の長い暖簾がつってある。
店の上には異国の文字で「斑鳩書店」と書いてある。
場所はグルーン帝国の帝都。帝国民はスライムのように他文化を自分達の生活に取り入れるのが上手いと言われている。何よりも識字率が高く、初代皇帝の御世より皇帝府は試験をしないといくら帝国貴族の子女だの縁戚だのと言っても門前払い、もしくは期間雇いが精々である。そんな国の皇都だ、本の需要は多い。
「んんー、いい天気ですねぇ」
奥から眼鏡をかけた濃紺の狩衣の男が出てきて伸びをした。ただ、周りは西洋風なので違和感がすごい。
「新しい店が出来たのかい?」
腰の曲がった老婆が寄ってきた。
「本日から開店ですよ、ご婦人。書店です。もしも良かったら中をご覧になりますか?」
「少し見てみようかねぇ。安くしとくれよ?」
「勉強させていただきます」
狩衣の男は老婆の手を取って中に案内した。
「申し遅れました。私は店主をしております、斑鳩と申します。こちらへどうぞ。」