わくわくの新生活の始まり。なんだけど波乱の予感。
「かっ、カッコいいです亮介先輩!!」
「…そうか?」
「おい田端姉、俺には何かねぇのか」
「写真、写真撮っていいですか!? 待ち受けにします!!」
「シカトか」
丁度地元では桜が開花して桜が満開になった四月一日。亮介先輩は大学の入学式を迎えた。
彼が入学式を終えて諸々終えた頃に私はバイトが終わる予定だったので、その後会う約束をしていたのだけど……
駅で待ち合わせた入学式後のスーツ姿の彼の姿に惚れ直していた。
マンガであれば私の目にはハートマークが浮かんでいることであろう。超かっこいい…!
自分の周りに美形な弟とイケメンな幼馴染がいたので私にはイケメン耐性がついていたはずなのだが、亮介先輩だと元々イケメンな上、惚れた欲目で割増格好良く見えて辛い。…もう好き。
私の反応に亮介先輩は照れくさそうに苦笑いしていたけども私はそんな彼を連写させてもらった。
高校卒業の時も学生服姿を撮らせてもらったけども、スーツ姿は大人度マシマシでカッコいい!!
「でもなんだか大学生となると大人な感じがしますね。ちょっと置いてけぼり食らった心境になります」
「そうか? 俺はまだ高校生気分が抜けてないんだが」
私達を冷やかすだけ冷やかした大久保先輩が帰っていき、私は亮介先輩と二人で公園を散歩していた。
私は彼を見上げ、これからの大学生活について話を振ってみた。
「これから専門教科を習うことになるんですよね。新生活も何だかワクワクしますね」
「それもだが…早速剣道のサークルにも申し込んできたから早く腕鳴らしがしたい」
「あっ! 先輩が大学に慣れた頃に、先輩が剣道してる姿を見に行きたいんですけどいいですか!?」
私はかねてよりの願望を吐き出した。
剣道ってお面してるけど、先輩ならそれでも絶対にかっこいい。絶対に惚れ直す自信がある!
見たい見たいオーラを出している私に先輩は「別にいいが…」と頷いた。
「だけど見慣れてない人にはつまらないと思うぞ?」
「いいんです! 静かに先輩を見てますんで!」
よっしゃー楽しみができたー!
私は受験生になるので、その分息抜きも大切にしたいと考えている。勉強漬けじゃパンクしちゃうからね。めっちゃ楽しみ〜。
あ、そう言えば進路決めたことを話していなかったな。
春休み前にいろんな大学に資料請求をしてみて、自分なりに学部についてリサーチして将来について悩み考えてみたんだけど…
ようやく決心ついた。
「そうだ、亮介先輩。私進路決めました」
私の言葉に先輩は目を少し丸くしていた。
私が悩んで悩んで決め兼ねているのを知っていたので、思ったよりも早い決断だと感じたのだろう。
「そうなのか。結局就職にするのか?」
「いえ、私食べ物を作るのが好きなので食品メーカーの開発を目標にしようと思って。…国公立の理工学部を目指そうと思ってます」
「…意外だな」
「そうですか? まぁ私理系ではないんでちょっと険しい道なんですけどね。それに決断が遅すぎました。まだ大学も具体的に決めてないので、国公立のオープンキャンパス前ですけど色々見学してみようと思ってます」
色々資料請求してみたら見学だけなら予約すれば大学入れるって書いてたし、合間見て足を伸ばすつもりだ。
オープンキャンパスのある夏休みは逆にこっちが受験勉強で忙しくなるから一学期中に志望校を決めてしまいたい。
「そういえば理工学部ならウチの大学にもあるぞ」
「はい、知ってます。…だけど下心ありと思われたくないんで、ちゃんと大学吟味して決めますんで!!」
私は拳を握って彼を見上げた。
先輩は「下心?」と首を傾げていたが、なんとなく察したらしく頷いていた。
「…でも学部は違うにしても同じ大学なら楽しいだろうな」
「……やめて下さい私を甘い言葉で誘惑するのは!!」
「誘惑?」
先輩が訝しげに私を見てくる。
別に深い意味はなく先輩は言ったんだろうけど、私にとって誘惑の言葉でしかない!
私は遊びに行くために大学に行くのではない!
親にお金を出してもらうことになるのだからしっかり勉強して将来に役立てると決めているのだ。
だけど、キャンパスライフ…
先輩が隣にいたら増々頑張れそうな気がする。
…はっ! いかんいかん。煩悩よ去れ!
それはともかく、各大学の見学に行かないとな。
☆★☆
「アヤー! リンー! また同じクラスだよー!」
「本当だ!」
「分かれなくてよかったね」
高校三年になってはじめての始業式。新学期が始まった。
クラス替え発表の掲示板を見て私は友人と同じクラスになれたことを喜んでいた。
高校生活も後一年。受験もあるけれど友人達との思い出も大切にしたいからね。
「あやめちゃーん! 私達同じクラスだよー!」
「うっ」
ニコニコした笑顔で私の背中に抱きついてきたのは林道さん。
それにバッと掲示板を見返したら、確かに同じA組に林道さんの名前があった。
いや、うん。彼女に害はないと知ってるんだけどね…
やっぱり苦手意識が抜けないのよ。
「あやめちゃん! また同じクラスだよー!」
「花恋ちゃん。また一年よろしくね」
「うん!」
パタパタと小走りで駆け寄ってきた花恋ちゃんに笑顔でそう返すと彼女は花のような笑顔を返してくれた。
かわぇぇなと私がデレデレしていると、私に抱きついたままの林道さんがしかめっ面になった。
「…なんであやめちゃんこの人と仲がいいの?」
「なんでって…昔遊んだことのある友達だったからとしか」
「えっ!?」
「和真はいなかったから安心して」
その言葉に林道さんはしかめっ面をやめたけどやっぱり警戒心を隠さない。それには花恋ちゃんも戸惑っている様子。
仕方なく腰に回っている林道さんの腕を解いてその腕を自分の肩に掛けるとよいしょっととリュックサックの如く背負った。おんぶでなく、林道さんの腕だけを私の肩に引っ掛けた状態だ。そうすると私より身長が低い林道さんの足が浮いた。
「きゃっ!?」
「クラスいくよ~三年は二階だから楽だねぇ」
「足浮いてる! あやめちゃん!」
私はこういう雰囲気が嫌いだ。この雰囲気が好きな人なんていないとは思うけど。
小学生みたいな振る舞いかもしれないがこれで誤魔化されてもらおう。
せっかくクラスメイトになったのだから終わってしまった乙女ゲームのことは忘れて友好的になってほしいところだ。
そのまま階段を登ろうとしたけど林道さんが暴れるので解放してあげた。
「もうっあやめちゃん子供みたいなことして!」
「子供なのは林道さんでしょ。花恋ちゃんはなんにも悪くないのに敵視して。私ああいうの嫌い」
クラスに入ると出席番号順に座るように黒板に座席表が記入されていた。
…本橋花恋と林道寿々奈はあいうえお順のため前と後ろで席が配置されていて、なんだかあの辺空気が重いんだけど……大丈夫かな。
やゆよの苗字の人不足だ。二人の間に座ってくれる人急募。
私は染川という名字のリンの後ろなので彼女とおしゃべりしていた。去年の始業式の翌日にイメチェンした私に声をかけてくれたのがリンだったんだよ。
イメチェンして登校してきた私にクラスメイトたちはぎょっとして、なぜか腫れ物に触るような感じになった。
仲良くしてた友達も近づかなくなってしまって、仕方がないことなのかなと思ったんだけど、私の前に座っていたリンが振り返って私に話しかけてきたんだ。
『田端さん随分思い切ったね。でも化粧はこうした方がいいと思うな』
そう言ってリンは自分の化粧ポーチから道具を取り出して、そこからメイク教室が始まって。リンと元々友人だったユカが加わってヘアメイクも教わって…
当初の私のメイクは彼女たちに教えてもらったものである。その後は自分で研究したりして色々変えてみているが、色々教えてもらったことは今でも感謝している。
ギャル系だからと今まで敬遠していた部分があったけど心優しくていい子たちだったので私はあっという間に彼女たちと仲良くなれたのだ。
「それでね、めっちゃ格好良くてぇ。もう死にそう」
「はいはいごちそうさま」
「お前らー席つけー」
リン相手に惚気けていたら担任が入ってきた。去年と同じ担任である。そこも変わらないのか。
三年になった事の心得とか受験とか就職とかの話になり、皆が緊張の面持ちで担任の話を聞いていた。
私も同様で春休み中に決めたことを担任に相談しないとなとは思っていた。
高校生活最後だからとはしゃぐだけではいられない。最後だからこそ悔いのないようにしないと。
「せんせー席替えっていつすんのー?」
真面目な話を終えた瞬間、早速そんな質問をする男子がいた。
早くない? 始業式だよ今日。
「一ヶ月はこのままだぞ。何だ不満なのか?」
「山浦の後ろ黒板見えねーんだよ」
「あー…山浦、席移動できるか?」
「わかりましたー」
何の因果か今年も同じクラスになってしまった幼馴染・山ぴょんは慣れたように荷物を持って後ろの席に移動した。
図体でかいと大変だな。
ぐるりと教室を見渡してみれば、全く代わり映えのないメンバーというわけではない。
サポキャラポジの美希ちゃんはいないし、ドッジで共に戦った皆川さんもいない。
そのかわり林道さんがいたり、山ぴょんの元カノがいたりする。
この場合真優ちゃんじゃなくて、バスケバカを見限った前の前の彼女なんだけどね。
彼女はきっぱりした性格をしている。初対面の人は彼女の言うことがきつく感じるかもしれないけど、実は優しいところがある人なんだよね。
そんなに親しくはないけど、山ぴょんと交際している期間、幼馴染の私にも気持ちのいい対応をしてくれたから私は嫌いじゃない。
…幼馴染ってだけで敵対視してきた歴代彼女がいたから余計にね。
友人と同じクラスになれて嬉しいんだけど、このクラスメイトの組み合わせ……なんだかとても波乱の予感がするのは私だけなのだろうか?




