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人を見かけで判断するな。先入観はあるかもしれないけど。

 体育祭の準備とか練習とか色々あったけどその辺は省略して、あっという間に体育祭当日となった。


 当日は晴天に恵まれた。日差しが激しく肌に突き刺さってくるため、日焼け止めクリームを何度か塗り直す必要がありそうである。

 高校の体育祭となれば、学校にも親が見に来ることも稀になるのではないかと思う。

 去年もうちの親が来ることはなかったし、私も別になんの不満もなかった。

 だが今年は何故か両親とも来るという。

 弟が入学したからかと私は思うのだが、弟も子供というわけではないので、ますますよく分からない。


 体育祭で生徒達はブロック別で座ることになる。

 各々親しい友達と座っていたりするのだが、ヒロインちゃんはサポートキャラの子と座っていた。

 サポートキャラの子はイメチェン前まで結構仲良くしていたのだが、私がギャル化すると離れていってしまった。

 仕方がないことだが少し寂しい。

 その代わり私にはギャル系の友達ができた。

 以前の私なら関わるようなタイプではないのだが、意外といい子達が多く、いい交友関係を築けていると思う。


「あれ、アヤ少し痩せた?」

「わかる? ミニスカが似合う足になりたくてさー」

 ギャル友と暑い~と文句を垂れたり、最近の流行の話をしたりして、体育祭のプログラムを眺めているとあちこちから『きゃぁぁぁぁぁ!!』と黄色い声が上がった。うるさくて私は思わず眉をしかめる。


 なんだと思えば我が弟が棒綱引きで二本一気に持って自分の陣地に向かって爆走している姿があった。

 あちこちで弟の名を叫ぶ女子がおり、早くもファンクラブなんてものが存在するのか弟よ。と弟の美貌に嫉妬通り越して末恐ろしさを感じていた。


「あれー? あの子ってアヤの弟だよね?」

「似てないでしょ?」

「アハハ、でもアヤの方が親しみ湧くけどねー」

「どうせ平凡ですよ」


 唇をへの時にして不貞腐れていると、「あやめ」と後ろから呼ばれた。振り返るとそこには中年の男女。


「あれ…本当に来たんだ…」


 私はそこにいる両親に呆れた視線を送る。


「えっ!? アヤのパパママ?!」

「ホントだ! 姉弟そっくり!」


 私の両親を見てなぜかギャル友達は興奮し出す。


 おい見てみろ、両親が怯えてるじゃないか。

 やっぱりギャルは存在するだけで相手を圧倒する存在なんだな。


 自分の格好は棚に置いた上でそんな事を考えていたが、未だキャーキャーと黄色い声があちこちで響いていたので、我に返って私は手のひらを上にあげて、グラウンドのトラックの中で対戦相手と棒引き対決をしている和真を示す。

 自分でやっておいて思った。私はバスガイドさんか。でも指差すのは良くないとしつけられてるから仕方ないだろう。


「カズならあそこにいるよ。青ブロックだから私とは別」

「あぁ、うん、後で行くよ」

「あやめがいつもお世話になっております」


 両親は私の友人らに頭を下げる。

 教えてあげたのにそこから離れない。

 しかも私の両親ときたら友人達を観察するように見ていたので私はイラッとして、両親を睨む。

 

 こら、人の友人を観察してんじゃないよ。親と言ってもやって良いことと悪いことがあるだろ。

 私の無言の圧力に気づいたらしい両親は慌てて踵を返す。よし、勝った。


「あやめ、また後でな。」

「お弁当作ってきたからね。一緒に食べましょ」


 と、私は小学生でもないのに、体育祭のお昼を両親と食べることが決定された。

 なんなんだ一体。



 私の出番は午後である。

 二年女子全員参加のブロック別の創作ダンスとラストを飾る例の混合リレー。

 ダンスは無難に終えた。特筆することもないくらい普通に。

 高校生になるとある程度自由にダンスを選べるのがありがたい。流行りのアーティストの曲を使ったかっこいい系のダンスだ。

 小中学生の時は教師の指示で踊らされたから、思春期に踊らされる地元の伝統的な踊りは気恥ずかしさもあり、とても苦痛だった覚えがある。

 ブロックによってはアイドルソングや、洋楽を使ってそれぞれ個性を出していた。思うんだけどこの種目の得点って見てる人の趣味嗜好によって変わるんじゃないかと。

 まぁ、たいした得点にならないだろうけども。

 

 ブロック席に戻ってきた私にまたまた両親が声をかけてきて、「かっこよかったぞ!」と感想を言われたときは「お、おう」と吃ってしまった。

 最後まで見てくつもりか両親よ。



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