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私はあやめである。存在感が薄い姉役だ。

「はじめまして。本橋もとはし花恋かれんです。父の転勤でT市から来ました。よろしくおねがいします」 


 突然現れた美少女にクラスメイト達がざわめいた。

 男子はかわいい女の子の登場にテンションが上がり歓声をあげ、女子はそんな男子に眉をひそめたり、転校生を複雑そうに見つめたりしていた。

 私は別の意味で驚き、目を大きく開いたままフリーズしていた。

 その子を見た瞬間、今までの違和感が解けた気がした。

 それと同時に“前世のわたし”の記憶を思い出したのだ。


(ちょっと待って待って。私、モブ役よね? 攻略対象の田端和真の姉ってここの高校受験落ちて別の女子高に通ってるはずだし)


 …もしも、悪役とか主人公とかサポート役とかなら話の流れから読み取って行動できるけど、舞台に存在しないはずのモブってどうしたらいいの?



 桜咲く四月、高校二年になったその日は始業式。

 二日後が入学式で弟が入学してくる予定だ。


 父似で平凡な私と、母似で華やかな弟。

 人並みな姉と、優秀な弟は幼い頃から周りに比べられてきた。

 教師やクラスメイトにご近所、親戚達に何かにつけて比較されたもんだ。


 弟は美人なのにそれに比べて姉は…とか

 弟は成績優秀なのにねぇ、本当に姉弟?とか


 他にも色々言われたけど、あの乙女ゲームの田端和真の姉、あやめはよくグレなかったものだ。

 その代わり卑屈な性格になって自信なさげな女の子になったのだろうが。ゲームでも影が薄くてちょっとしか出ていない。存在意義を問いかけたくなるくらいのキャラであった。

 

 幸い、田端姉弟の両親は姉弟を比較することなく、男女の区別はあるものの、差別なく育ててくれていた。現実の私の両親もそうである。

 何でこんな平凡な父が美人な母を射止めることが出来たのかたまに不思議にはなるが、私にとって尊敬すべき両親だ。


 それもあってか、私は幼い頃から感じていた違和感と持ち合わせていた精神年齢もあってか、人々の心ない言葉にハイハイと流していた。

 最初は何でそんなことを言われなきゃならんのだ!! と腹を立てていたが、段々どうでもよくなった。ていうか自分がどうでもいいと思ってる人間にどう思われてもどうってことないと開き直ったのだ。

 全員に好かれるなんて無理な話だし、私がしんどいだけだ。

 

 だから聞き流していたのだが、その時いつも弟の和真が私を見てひきつった顔をしているのが未だに解せない。


 



 私は目の前で転入生が生徒達に自己紹介している姿をぼんやりと眺めながらとあることを考える。


(…しかし、地味な姉がいると弟は恥ずかしいんじゃなかろうか。しかも私が存在することで、転入生・本橋花恋がヒロインである乙女ゲームのストーリーになにか支障が出るんじゃ……)


 脱色していないだろうに、窓から差し込む陽の光に当たると琥珀色に輝くヒロインのセミロングのツヤサラ髪を見てとあることを思い付いた。



(そうだ、イメチェンしよう)



 高校二年春、遅すぎる高校デビューをすることにしました。

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