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攻略対象の影薄い姉になったけど、モブってなにしたらいいの?  作者: スズキアカネ
続編

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106/303

まだ梅雨の時期なのに早くも夏休みの計画。忘れてないよ私が灰色受験生であることは。

 体育祭が終わるといよいよ、中休みだった梅雨が本格的になってきて雨の日が増えた気がする。

 空気がジメジメしてなんだか気分までジメジメしてきそうだ。


 くせ毛のリンは雨になると髪の毛が広がってテンションがだだ下がり。

 爆発してるみたいでみっともないからと、現在リンはポニーテールにしてるがそれはそれで可愛いと思う。


「雨だと気が沈むなぁ」

「日に焼けるのは嫌だけど、太陽見えないと調子でないよね」


 梅雨の事を愚痴っていた私とリン。

 湿気がすごくて体がベタベタするのが本当に不快だよね。


「ねぇねぇ二人共、夏休みにさ海行かない?」

「「海?」」

 

 テンションの低い私達に対して、夏先取りの水着カタログを眺めていたユカが突然「海に行こう!」と言ってきた。

 でも夏休みは一ヶ月くらい先だし、今年私ら受験生なのよ?


「…あたしはいいけど二人共受験生じゃないの?」


 リンもそれは思ったらしい。

 リンは就職組だから多少はゆとりはあるものの、夏休みを活用して自動車の免許を取りに行く予定らしい。

 ユカだって私と同じ進学組なのにその余裕は何なのか。


「一日くらい大丈夫だって! 息抜き! 息抜きは大事でしょ?」

「それはそうだけど…私…腹の肉が…」

「アヤ、大丈夫。一ヶ月もあればイケる!」

「何が!?」

「それにほら~この水着可愛くない?」


 カタログをちらつかせてくるユカ。

 ええいやめろ。私は灰色の受験生なんだからな。

 ビ、ビキニなんて絶対無理だ。タンキニしか着ないからな私は。

 あぁ、でもこの水着かわいい……フリルがついてて可愛いけど…でもお腹丸見えじゃないの。私には無理だな。

 …いいなぁこれ。かわいい…


 私がカタログのある水着に釘付けになっているのに気づいたユカは私の視線を辿ってノリノリで声を掛けてきた。


「これ? アヤこれいっちゃう?」

「いやいやいや! 無理無理」

「目標があれば痩せるって! 今度水着買いに行こ!」


 ユカの勢いに流され、海に行くことは決定された。

 ……高校最後だし思い出として海に行くのは賛成なんだけどね。その分他の日に勉強頑張ればいいし。


 だけどビキニは無理。ホント無理。腹の肉があるからお腹の露出はちょっと厳しい。

 なんだけど、ユカとリンに早速今日の放課後に水着見に行こう! と誘われ、私達は学校帰りにショッピングモールに向かったのだった。




「じゃーん!」

「おー! いいねいいね! アヤは着たー?」

「…やっぱ無理、タンキニに変更…」

「アヤ! そんなんじゃ永遠に痩せられないんだからね!」


 私は鏡に映る自分の水着姿を見て項垂れていた。

 この脂肪が憎い……やはり私にはハードルが高すぎたのだ… 

 堂々と水着姿を晒す勇気がない私はまだギャルになりきれていないのだな。チキンなハートがこんな時邪魔をする…


「出ておいでって〜」

「!?」


 ユカに試着室のカーテンをシャッと開かれてしまった。それによって、私のわがままボディをユカに見られてしまう。


「ノォォオ!!」

「なーんだ! そのくらいならすぐ痩せるって! それにちょっと肉がある方がかわいいよ!」

「痩せてるユカに言われても嬉しくないよ!!」


 お腹を隠してユカの視界から隠す。隠していると、隣の試着室で着替えていたリンも覗き込んできた。


「いいじゃん似合う似合う。アヤは黒より明るい色のほうが似合うね」


 じゃあこれに決定ねと二人の独断で私の水着が決定された。

 いや私もこの水着かわいいなぁ欲しいなぁとは思ったよ? …ただ私のわがままボディがね?


 言い訳している間に会計は終わり、私のお財布から諭吉が旅立って行った。水着薄っぺらいのになんであんなに高いの。

 諭吉よ、戻ってきなさい。

 今年はバイトできないのに出費してしまった!!


 なんだか購入した水着が入った袋がずしりと手に重く感じた……

  






「あれ…植草さん?」

「あっ田端先輩!」


 水着購入してすぐ帰るのも何なのでギャル服専門店で洋服を見ていた私達だったが、ふと通路を見ると誰かと一緒に歩く植草さんを見つけて声を掛けた。

 彼女と一緒にいたのは私立高校の制服を着た男子。この制服セレブ校の制服じゃなかったっけ。

 身長は高校生男子の平均身長である沢渡君よりも低いくらいかもしれない。

 優男系のイケメンの腕に抱きついて照れくさそうに笑う植草さんが相手を紹介してくれた。


「えへへー彼氏ですー!」

「おー付き合うことになったんだ。おめでとう。」

「そうなんです~かっこいいでしょー? しかもすごく優しいんですよ〜」


 すごい。こんなデレデレの植草さんを見たことがないよ私。

 いつも男を侍らして女王のような笑みを浮かべていた彼女とは比べ物にならないぞ。

 私が植草さんの変化に目を剥いていると、彼氏くんが植草さんに「誰?」と質問をしていた。

 

「……?」


 今一瞬、彼氏くんの表情が険しくなったように見えたのは気のせいだろうか。


「同じ高校の田端先輩! 仲良くしてもらってるんだ!」

「そう…どうも」

「どうも田端です。はじめまして」


 ……なんだか、あまり友好的じゃないな。 

 …人見知りなのかな?


 名乗った私に自己紹介を返すわけでもなく、植草さんの腕を引っ張って「もう行こうぜ」と彼氏くんは植草さんを急かしていた。


「え!? もう…すいません! 先輩また!」

「あ…うん……」


 彼らが去っていくのを見送りながら私は少々渋い顔をしてしまっていた。


 うーん。人の彼氏のことをどうこう言うわけじゃないけど、大丈夫かな彼。 

 だけど、逆ハー形成していたあの植草さんが、恋に恋していた植草さんがようやく自分を愛してくれる彼氏に出会えたのだ。

 先輩として広い心を持って見守ってやろうではないか。


 その時はそう考えていた。




☆★☆



「それで! 夏休みユカとリンと海行くんですよ!」

「…え?」


 先輩のお宅に訪問して勉強会をしていた私は、夏休みに友達と海に行く話をした。

 先輩のお宅? と疑問に思われるかもしれないが、実はあの喧嘩以来解禁になったのだ、先輩のお宅訪問が。

 なので勉強デートをお家でまったりできるようになって私は幸せである。

 

 私の家に招いてもいいけど、彼氏の存在にいい顔しない父と、亮介先輩を超気に入っている母が鬱陶しいので、たまにしか招かない。

 あ、父が彼氏を気に入ってないのは亮介先輩だからじゃない。彼氏という存在が気に入らないみたいだ。父親というものはそんなもんらしい。


 海には行くけど、遊ぶだけでなくてその分勉強はちゃんとしますから! と先輩を安心させようと思って言ったのだが、彼は渋い顔をしていらっしゃる。

 もしかして水難事故に遭うと思われている?


「あ、大丈夫ですよ? 私泳げますし、そもそも遠泳はしないつもりなんで。波打ち際で遊んでます!」

「いやそうじゃなくて……危ないだろう。女三人だけで海なんて」

「あーいえいえ、ユカの彼氏が車を出してくれるんで女子だけじゃないんですよ」

「井上の…?」

「都合が付けば友達連れてくるらしいですけど……ユカの彼氏は変な人じゃないから心配しなくても大丈夫ですよ」


 ユカの彼氏の友達がどんな人かは知らないけど、ユカの彼氏と同じ大学生なんだろうか。

 

「……俺も行く」

「………えっ?」

「心配だから俺も行く」

「大丈夫ですって。心配しすぎですよ」

「他の男がいるのに安心なんて出来るか」


 先輩のお顔はムスッとしていた。

 ヤダ、先輩ったらヤキモチ焼いてる。可愛い。

 …だけど、それはだめなのだ。


「ダメです! 私は先輩に水着姿なんて見せられません!!」

「……は?」

「あんな薄着で身体を露出した姿、先輩に見せるなんて恥ずかしくてできません!!」


 自分の体を隠すように腕をクロスさせて覆うと、私は先輩から顔を背けた。

 水着買っちゃったから何が何でも痩せるけど、あの格好を先輩に見られるとなると恥ずかしくて仕方がない。

 ちらりと先輩を伺い見ると、先輩はジト目で私を睨んでいた。


「……おい、俺はお前のなんなんだ」

「か、彼氏ですよ! 今更なんですか!」

「…それならお前のその言い分はおかしいと思うんだが。他の男は平気で俺はダメってどういう事だ」

「だって好きな人に見られるって特別なんですよ!? 恥ずかしくって死ねます!!」


 一人できゃーきゃー騒いでいると、いつの間にか側に寄ってきていた先輩に身体を引かれ、ベッドの上に押し倒された。


「せ、せんぱい…?」

「もう黙れ」


 これ以上言葉が紡げないように唇を塞がれた私は目を閉じて先輩に身を任せる。

 待たせに待たせてしまったからには覚悟を決める。


 亮介先輩の大きな手のひらが私の身体を服の上から撫でてきて、私は恥ずかしさから顔を背けていたが、きっと真っ赤になった頬は先輩にバレていると思う。

 耳に頬に首にとあちこちにキスをされ、いよいよ服の下に手が差し込まれた。お腹が丸見えになりそうになったので私は先輩の手を阻止する。


 私は切実な顔をして先輩にお願いした。


「…お腹は見ないで下さい…」

「……努力はする」


 そう返事を返してくれたが、本当に見てない? お腹めっちゃ見てる気がするんだけど。

 先輩の手によって服を脱がされていく。

 

 あぁ、とうとう私は先輩のものになるのだ。

 まるで少女漫画のヒロインみたいなロマンチックな事を私は考えていた。




【ピンポーン!】


「………」

「……先輩、誰か来ましたよ」

「……何かのセールスだろ」


 インターホンのチャイムが鳴った瞬間先輩の動きは一旦止まったが、すぐに再開した。

 無視で行くらしい。



【ピンポン、ピンポーン! ピーンポーン! ピポッピンポーン!】


 だけどそれでも尚しつこいチャイムの音に先輩は苛立つように私の上から退いて、早歩きでインターホンのモニターを見に行った。

 相手の姿をカメラ越しに確認するなり、先輩らしくもなく舌打ちをして応答ボタンを押した。

 そして地に這うような声で相手の名を呼ぶ。


「………何の用だ…健一郎……」


 なんと。

 大久保先輩だったらしい。

 ドアの向こうにいると思うと妙に気恥ずかしくなった私は先輩に脱がされた服を慌てて着用する。


 二人のやり取りを聞いていると、どうやら大久保先輩は夕飯を一緒に食べようと誘いに来たらしい。

 相変わらず二人は仲がいいな。


 だけど先輩のご機嫌は宜しくなく、モニター越しに大久保先輩を睨んでいらっしゃる。


「……そういうことは連絡を先に取れと」

「あの、先輩…あれだったら私帰りますよ? 今ならまだ明るいから私一人でも大丈夫ですし」


 恐る恐る声を掛ける私を見て亮介先輩はなんとも言えない表情をしていた。

 どうせこの状況じゃさっきの空気に戻りそうにないし、仕切り直したほうがいいと思うんだ。


 その後空気をわざと読まない大久保先輩が要らんことを言って亮介先輩にアイアンクローされているのを眺めた私は、少し門限には早いけど帰宅したのである。


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