死亡フラグまみれの転生者~異世界召喚されてチートになったけど、やっぱり人間だった~【side黒】
思い付くままに書きました。悔いはない。
この世界が、物語であると気が付いたのはいつだったか。
俺と言う存在が塗り替わったのは、いつだったか。
あれは、確か中一の夏頃だった筈だ。
当時、とある同級生に恋をしていた俺は、その日、意を決して彼女を校舎裏と言う何ともベターな場所に呼び出し、告白した。
否、告白しようとした。
「好きだ……!!」
バクバクと五月蠅く鼓動を刻む心臓を押さえつけ、告げた想い。そして、それと同時に俺は思い出したのだ。
ここが、この世界が、RPG『散らぬ花を、誰ぞ愛でるか?』の世界である事を。
「え……?」
俺の突然の告白に、彼女が目を白黒させ、呆気に取られたような表情と声を零す。
俺は、俺の頭は、彼女の声を遠くに聞きながらも、忙しなく映像を駆け巡らせた。
まずい、まずい、まずい……!!
塗り替わる頭の中で、警鐘が鳴る。
思い出されてゆく感情が、人格が、俺を造り変えてゆく。
その中で、俺は警鐘に従うように、無意識に口を開いた。
彼女は顔を俯かせ、ぼそぼそと何事かを呟いており、彼女からの返事はまだ聞いていない。
故に、今ならまだ――間に合う、筈。
「ッッ白崎さんが……!!!」
や、ちょ、待て、俺っ?!
取って付けたように吐き出された補足は、意味の分からない言葉だった。
自分でも何故そうなったか分からない。
何故か口走ったのは、彼女以外のクラスメイトの名前。
何で、ここで他の女子の名前を出すッ?!
何がしたいんだ、俺は?!
事態が悪化するだろ、これっ?
余計にややこしくだな……?!
まだ治まらない記憶の激流と、今しがた口走った失言への自己批判で脳内を埋めていると、彼女が不意に顔をばっと上げる。
そして、俺の意味の分からなくなった告白に、「え? は、はぁ? 黒磐君、貴方……白崎さんが好きなの?」と怪訝な表情を浮かべた。
「なら、本人に告りなさい。何で、あたしにそれを言うのよ?」
「…………」
あー、そうだよな。ごもっとも。
俺だって、何言ってるか分かんないんだ。
無言を肯定と見做したらしい彼女は、煩わしそうに目を細め、何処か呆れたように言う。
ああ、変な奴だと思われている。
けれど、仕方ない。仕方ないんだ。
本当は白崎さんじゃなくて、君が好きだから呼び出したんだ、と素直に言えたら楽なのだろうに。
そうは問屋が卸さない。
今ここで、彼女が好きなのが本人に露呈すれば三年後に響く事になる。
俺が三年後を生き残る為には、原作道理に進んでたまるものか。
「あ、あー、悪い。あれだ、白崎さんの情報が欲しくてだな……」
頬を掻きながら、苦し紛れの言い訳を、しどろもどろ零す。
ようやっと落ち着き、静かに定着した記憶達を脳内で整理しながら、俺は話す。
「ふーん。なら、あたしに声掛けたのは間違いよ。あたしが白崎さんと話した回数なんて片手で数える程度しかないんだから。白崎さんの事が知りたいなら本人に直接聞くか、もっと仲の良さそうな子に聞く事ね」
彼女は早口でそう捲し立てるように告げた後、「あたし、用事があるから。話が終わったのならもう行くわ」と、何処か不機嫌そうに学校の校舎へと踵を返す。
俺はそれを引き止める事も出来ずに、ただただ去って行くその背中を見送った。
と、まあ、こんな感じで今世の俺は前世の俺を取り戻したのである。
因みに、俺が白崎さんが好きだ、と言う口から出まかせは今だに当時好きだった彼女の中で生きているらしい。
非常に憂鬱である。
あの告白事故により、俺は前世を取り戻した。
俺は所謂、転生者である。
前世の俺は無職だった。
自宅警備員、ニート等と呼ばれている、親のすねかじり。就職難に負けて、負けて、負けた引き籠もりだ。
そんな俺はあの日、三カ月振りに外に出ていた。
今になって思えば、気紛れに外になんて出るもんじゃなかったのだろう。
コンビニを目的地とした俺は、信号無視をして突っ込んできたトラックに跳ね飛ばされ、呆気なく死んだ。
そして、ここ、このRPGの世界に転生を果たしたのだ。
何ともテンプレな展開である。
トラックに轢かれて転生、転移はラノベの常套手段だろう。
まあ、百歩譲ってここまでは良いとしよう。
だが、何故この世界なのか、何故俺は黒磐暗夜に成り代わってしまったのか。
そこが問題である。
俺の記憶が正しければ、この世界は、赤神焔と言う男子高生を主人公とした、異世界召喚系ファンタジーRPG『散らぬ花を、誰ぞ愛でるか?』、略して散花の世界だ。
突然の異世界召喚、集団転移からの、王国防衛、悪者退治、戦争、世界救済。
物語的展開は物語だからこそ、楽しめるのであって、それが現実になるなんて、まっぴらごめんだ。
誰が好き好んで、死地に飛び込みたがる?
例え、召喚された事により、特殊な力を手に入れられるんだとしても、俺はお断りだ。
おまけに、今生の俺は黒磐暗夜だなんて。
根暗な脇役、おまけに主人公を引き立たせる為のいじめられ役から、闇堕ちして、悪役に寝返り、死亡するキャラじゃないか、おい。
彼女が好き過ぎた結果、痴情のもつれで、主人公裏切って殺されるとか、有り得ない。
絶対に嫌だ。
ハブも、嫌われも嫌だ。
主人公の引き立て役も嫌だ。
いじめ、裏切り、闇堕ち、ダメ、絶対。
いじめっ子絶対殺すマンになんて、なりたくはない。
報復の末、正義による断罪とか、シャレにならない。
俺はそれを回避する為にはどうするべきか。
取り敢えず、今の俺は根暗って程、根暗はしてないから、周囲に優しくすればOK?
いや、そんな単純でもないのか。
召喚されないように、登校拒否は無理だし、通う高校を変えるのも無理。
こんな事になるなら、エスカレーター式の学校になんて通うんじゃなかった。
なんて、後悔も今更だ。はぁ。
プロット及び、キャラ設定制作中。
冒頭をメモしようとしていたら、勢い余って一話書き上げてしまったので、お試し版として上げてみました。