優等生と不良
僕は天才だ。優等生だ。
そしてその僕の目の前にいる男は、
バカで、不良だ。
この『身分の差』とも言える関係がある僕らは、
実は親友なのである。
僕→天才、名は【御上タクヤ】
俺→不良、名は【高村ソウスケ】
ここ→裏野市
タクヤ「人生とは悲劇のように見えるが、遠目に見れば喜劇である…か。チャップリンの人生もそうだったのかもしれないな」
僕、御上タクヤは本が好きだ。
本にはたくさんの事柄が書いてある。
それらを自分の知識に出来るのが好きだ。
今日はチャールズ・チャップリン関連の本を読み終わった。彼は『三大喜劇王の一人』と呼ばれていた。確かに彼はコメディー映画の王だと僕は思う。だが彼の最も注目するべき所は…
ソウスケ「おー、また考え中か?」
タクヤ「…邪魔が来たか」
〔これから長考に入る所だったのに〕
ソウスケ「お前は難しい本ばっか読んでんな」
「これ…英語じゃねーか」
タクヤ「何が悪い!」
ソウスケ「お、おい」
「そう怒んなよ…頼みがあるだけだぜ、急用なんだ、ちょっと来てくんねーか?」
タクヤ「僕は今チャールズ感が抜けてしまって、とっても機嫌が悪い!」
ソウスケ「ごめんって!(チャールズ感…)」
タクヤ「…んン?なんだって?」
ソウスケ「ごーめんって!笑」
タクヤ「んン?もう一度大声で!」
ソウスケ「ふざけんなてめえ!」
「ちょっとこっちこいゴラァ!」
…と、ここまでが『不良の番長としての威厳』そして『学園一の優等生としての威厳』を保つための演技である。
クラスの者たちは、
「タクヤが連れてかれたぞ…大丈夫か?」
と、ささやく。
だが、それは間違いである。
前記の通り、僕たちは親友。
『お互いがお互いになりたい』のだ。
実は、僕はワルになりたい。
ソウスケは、賢くなりたい。
僕には、頭はあるがソウスケのような『行動力』や『人心掌握』はできない…
ソウスケは、最近祖父が『ガン』で亡くなったそんで、医者になりたくなったらしい。
それをお互いが知ってしまって、
親友になったのである。
タクヤ「で?急用ってなんだ?」
ソウスケ「ああ…これなんだがな」
タクヤ「なんだこの資料…『裏野市における18歳以下の男女子の行方不明事件件数』?」
ソウスケ「その表の1番下の欄見てみ…」
タクヤ「…これは?」
ソウスケ「な!おかしいだろ?『怪奇現象』による『行方不明件数』だなんてよ…」
タクヤ「遭難、誘拐、家出、その他諸々…ときて、『原因不明』の下に『怪奇現象』…?」
ソウスケ「実はその資料、警察の極秘で公式な物なんだ。父さんと組長さんからもらった。」
タクヤ〔ソウスケの父はこのあたりを仕切るヤクザの幹部…この裏野市の行方不明件数も必要な情報のうちか。まあ、ツテはあるのだろう。〕
「極秘資料をヤクザが持ってたのは分かったが」
「なんでそれを今、お前が持ってる?」
ソウスケ「簡単に言うとだな…依頼されたんだ」
「組長さんから直々に、『行って見てきてほしい所』があると…」
そういうと、ソウスケは一枚のチラシを見せた。
「『裏野ドリームランド』…ほぼ10年前に開園、しかし、3年前に廃園している」
タクヤ「…」
ソウスケ「原因は経営難…なんでも、『子どもの誘拐事件』が多発するもんだから、特に証拠も無いのに裁判を何回も起こされて、そのニュースが毎日のように食卓に流れるもんだから、親子人気がガッツリなくなったらしい…」
タクヤ「?そんなニュース聞いたこともないが…?」
ソウスケ「俺もだ。うちの幹部も、ヤクザの連中も、つい3年前の事なのに、誰も覚えちゃいない。」
タクヤ「…?」
ソウスケ「だが、『裏野ドリームランドの廃墟』は確かに存在する。そして…」
タクヤ「そして?」
ソウスケ「7つの噂があるんだ。」




