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学園生活4

楽しそうにしている侑季を見ていると、流星から聞いている侑季のイメージが嘘のようだ。

よく喋るし、表情豊か、何より心から楽しそうしてくれていることで、ついつい恋夜も嬉しくなってくる。他愛のない会話だが、恋夜自身もこんなに気兼ねなく話せる相手は生まれて初めて、思わず恋夜自身もこの状況を楽しんでいる。

「あそこ!あそこのソフトクリームがすごくおいしんだって!」

「そうなんですか、ちょっと待っててくださいね。」

当然カードなどは使えないと、恋夜は歩きながら財布を確認する。

何とかそれくらいのお金は持っている。

「あの、恋夜君、私の、」

「これくらい自分におごらせてください。」

「でも、恋夜君お金。」

「楽しませてもらったお礼です。それに女の子にお金を出してもらうなんて、せっかくのデートですよ。すみません、ソフトクリーム二つ。」

デートそれは本気でも何でもない、その場の空気に合わせたただの冗談。

恋夜は商品を受け取ると片手で器用にお金を財布から取り出す。

「お嬢ちゃんの分は特別だ。特別の大盛りすごいだろ。」

確かに持つのが難しい程山盛りのソフトクリーム、恋夜は崩さないように侑季に渡す。

「それにしても、お兄さん休みの日に妹さんの面倒見てあげるなんて見かけによらないね。」

「いえ、妹じゃなくて、……どうもありがとうございました。」

ここで説明してもなんになるわけでもない。

恋夜はお礼を言いその場から離れ、二人で座れる場所を探す。

今日は休日、家族連れも多く空いているベンチはなく、恋夜は、噴水のふちに腰かけ、溶けかけのソフトに手をつかない様に気を付ける。が、味がわからないほど気になることが、

それは侑季の様子。先ほどとは違い、無言。

楽しみにしていたソフトクリームには手を付けず。辺りを目を気にしている様子だ。

そんなに子供と思われたことがショックなのだろうか、

「溶けてしまいますよ。アイス。」

「あ、ごめんなさい、あ!」

恋夜の言葉に慌てた侑季は手にしたアイスを落としてしまう。

「ごめんなさい。」

「謝ることじゃないですよ。元々バランス悪いですし。ちょっと待っててくださいね。新しいのを、」

新しいのを解に行こうとする恋夜を侑季は引き止める。

「いい、別にいい。です。」

「どうかしましたか?楽しみにしていたんじゃないんですか?」

「……」

俯き、無言のまま、数分が経過する。これは深刻だな。

そう判断した恋夜は、両手で、侑季顔を掴むと、無理やり口角を上げる。

突然の事に何が起こったのかわからない侑季は、きょとんとした目で恋夜を見つめる。

「侑季さん、笑っている方が可愛いですよ。子供っぽく思われるの嫌いですか?」

「……」

「僕は羨ましいですよ。僕はいつも年上に見られて、ないもの強請りは人の常、でも、僕がこれ以上若く見られることはありませんけど、侑季さんが大人にみられるのはこれから先きっといくらだってあります。気にするだけ損ですよ。」

「……恋夜君。私の事、気持ち悪くないの?」

「?どうしてですか?」

「私ね、ずっと身長も伸びてないし、何も変わらない普通じゃない。」

「……少なくとも僕は今の侑季さんも好きですよ。」

それは恋夜にとっては他意のない言葉だ。イロハが恋夜に言ったように、

同じことを彼女に言った。でも恋夜自身がそうであったように、

「ほんと?」

「本当ですよ。見かけがどうであっても侑季さんは侑季さんです。」

「嘘じゃない。本当にそう言ってくれるのは恋夜君が初めて、」

「?」

「ううん、なんでもない。ありがとう」

何のことだかさっぱりわからないが、とりあえず、立ち直ってくれたみたいだ

「とりあえず、べとべとになった手でも洗いましょうか。」

恋夜はすっと手をだし、侑季の手を握る。

何の抵抗もなく、触れてくれている、当たり前のように怖がらず、気持ち悪がらず、何より、少しも嫌そうな顔をせずに、

手袋越しに分かるごつごつしてて、少し痛いと思うくらいに力強く、でも温かくて優しい。

手を繋ぐ。もし恋夜の相手がイロハや葵、凛清相手だったらこんなことはできなかっただろう。彼女を年上と、理屈では理解しているが、容姿に引っ張られてしまっている。

そしてそのまま楽しい二人の時間が過ぎていった。

「プリクラ、こんな所にも恐るべし、長年どこにでも存在するこれは一つの文化ですね。」

「やっぱり嫌?」

「いや、とかではなく、どうしても入るのに抵抗が、」

侑季の希望で連れてこられたゲームセンターのプリクラコーナー、自分の知っているゲームセンターとは一線を画す、明るく煌びやかな、照明と、楽しそうな女性陣、もしくはカップルのみで構成された客層に思わず引いてしまう。

そしてトドメが男性だけでの入場お断りのプリクラコーナーの看板。つまりは本来であれば、自分は立ち入れない場所。

「どうして。」

「どうしてと言われましても、」

恋夜は戸惑いながらも、侑季に連れられ、筐体の中に入っていく。

表情を作り、一生懸命ポーズを考える侑季を、がっがりさせまいと、この異様な雰囲気に負けないよう覚悟を決め、振り切れ笑顔で応える恋夜。これは仕事だと暗示をかけ仕事モードをオンにし、自分の感情を殺し役に徹する。

そしてその事に集中するあまり、最後の一枚を取るときに何が起きたのか理解が遅れた。

撮影が終わり、外で待っていてという侑季の指示に従い。

侑季が落書きをしている間に、恋夜は外で一息をつく。

これで終わりと今の一からゲームセンターの外に目線をやる。

少し前に葵から、何とか話が終わったので合流すると連絡があった。引っかかるものはあるが、別れた際の緊迫感は感じられない、どうやらうまくいったようで一安心だ。

場所に不慣れな恋夜と、あまり外出しない侑季にどこかに来てくれというより、二人の場所に行く方が早いと、このゲームセンターで待ち合わせることになっている。

そこで侑季が慌てるように入ったこのプリクラ。それも終わり後は、待っていればいい。

「終わったよ。」

侑季は満足げにシールが完成するのを待っている。

こういうものの価値が全く理解できない恋夜だったが、まぁ喜んでくれてなによりだ。

流星の話だと普段彼女は引きこもり気味、今日の出来事で少しは好転すれば、と

侑季はシールが出てくると鋏で半分に切り恋夜に差し出す。

「私、一生の宝ものにするね。」

「そんな大げさな、こんなのでよければいつで、」

恋夜は手にしたシールを目にし、思わず、言葉に詰まってしまう。

そこにはハートや絵、言葉でデコレーションされたシールが、これではまるで犯罪、いや恋人だ。それにトドメは最後に取ったあの写真。頬に何かがふれたような気がした、指が触れている物だと思っていたが、触れたのは指ではなく唇。

「侑季さん!これはまずいですって!」

「え、何が?」

「何がって、」

侑季は恋夜の気など知らず満足げに何度も写真を眺める。

「とにかく、この写真は、」

「あ、いた!」

その時だ、二人を見つけたイロハたちがこっちに向かって近づいてくる。

「プリクラ?なに、デートでもしてたの」

葵の冗談が冗談になっていない。

「葵ちゃん、見て!これ!」

マズイ!恋夜はプリクラを見せようとする侑季の手からプリクラを奪う。

「恋夜君?」

まずい、何と言い訳する。そのままいうか、いやそれでは彼女の傷つけかねない表情だ。

冗談で、他意はないのかもしれない。いやそうだろう。だが、それを冗談として済ませられない自分がいる。恋夜は彼女を傷つけない、言葉を選ぶ。

「あの、こういうのを見せるのはちょっと、恥ずかしいというか、こういう親密な写真はあまり見せびらかすものではありません。二人だけの秘密にしてもらえませんか、

時期が来ればいいのかもしれませんが、」

どういうべきか、うまく言葉が思いつかない。

「……そうだね。そうする。」

恋夜の困った表情を察したのか、侑季は皆に見えない角度でそっと恋夜からプリクラを受け取る。

「二人だけの秘密。」

最初にあった時の大人しい侑季とも、明るい侑季とも違う。

耳元で、冷静に大人びた雰囲気を感じさせるような声で、体を密着させ侑季はそう囁き、何事もなかったかのように、侑季は葵の後ろの定位置に戻っていった。


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