学園生活2
「おはよう。」
「おはようございます。」
「ん、何その恰好、またスーツ?」
「これしか服をもってきていませんから、」
「寝る時はどうしてるの?」
「パンツとシャツですけど。」
「そんな当たり前のように、女の子を前に、言わないでください。まさか流星も、」
「俺がなんでそんな隙だらけの格好をしないといけないんだ。」
「流星さんはジャージです。すぐに動けるようにと」
燕尾服に素早く着替えているが胸がはだけたままだ。完璧主義の流星だが、ネクタイは嫌いなようで、ネクタイはつけず、ボタンも留めていない休日ならではの格好だ。
「まぁ、いいわ、今日はイロハちゃんの服を買いに行くついでに恋夜君の服もみよう。」
「自分は結構ですよ。」
「いいじゃない、年相応な格好もいいでしょ。君たちは堅苦しい。」
「そうですよ、恋夜さん。きっとスーツ以外も素敵ですよ。」
恋夜の中に、イロハの提案なら受け入れたい気持ちはある。だが、
「……すみません。実はお金が、」
「お金って、恋夜君もイロハちゃんと同じく、身柄は神託委員会の管理下。菅野監視官にIDカードもらっているでしょ。それを使えば閲覧されるけど、買い物できるでしょ」
「それは聞きましたけど、必要には迫られてないですし。」
「まぁ、いいわ。とりあえず、欲しいのがなければ見るだけでもいいし」
「ちなみに葵さん、そちらの可愛らしいお嬢さんは?」
恋夜は葵の陰に隠れ、じっと自分の事を見続ける女の子に注目する。
「私のルームメイトの紀伊坂侑李。幼稚園の頃から幼馴染名。普段は体調不良で休んでるけど、今日はどうしてもついていくって聞かなくって。いいでしょ。」
「おっ……始めまして」
一瞬何かを言いかけた侑季は恋夜から視線をずらし、小さくお辞儀する。
「人見知りがすごいの、ごめんね。」
「いいえ、全然、ちょっと待っててくださいね。」
恋夜は一旦自分の部屋に戻ると。ピンク色の風船を持ってくる。それに小さなポンプで空気を入れると、あっという間に、ウサギを作り、膝をつき、笑顔で侑季に渡す
葵と同い年という事に驚き、それ相応の対応をしなければと思いつつも、ビジュアルイメージに押され、いつも仕事で子供に親しみを持ってもらうのと同じ方法をとってしまう。
恋夜は自分の事を怖がらない子供が大好きだ。どうしても子供相手と思い笑顔が出てくる。
「スーツのポケットにまだ残っていました。はいどうぞ、日内恋夜と言います。以後お見知りおきを、っていくらなんでも子供っぽすぎましたか?はは。」
「以外ね。こんな特技。他にも作れるの」
「犬にプードル、ライオン、象、剣、花、くらいなら。基本的には作り方一緒ですから。」
「今度私にも何か作ってくださいよ。」
「いいですよ。何がいいですか、あ、今から町に行くのにこれは邪魔でしたね。」
恋夜は邪魔にならないように、侑季から返してもらおうとするが、侑季はそれを拒絶する。
「……いい、あの、ありがとう。かわいい」
「どういたしまして。」
気に入ってくれたのか、恋夜は喜んでくれたことが嬉しかったのが素直な笑顔を見せる。
「あの、狐、狐さんは作れる?」
「狐か、ごめんなさい。自分の技量ではなかなか、あるのかな、狐。狐、好きなんですか」
「もふもふゴロゴロですごくかわいかった。おかな見せて尻尾振って」
「そうだ、それならいいのがいる。小太郎っていうんですけど、一応自分の家族の狐が、
小太郎、女性にはすぐに懐くからきっと侑季さんの事も気に入ってくれますよ。」
「小太郎君に会っていいの?」
「小太郎を知っているんですか?」
「あ、あぁ、そうだ。私が話したのよ。小太郎君の事、それで、ね。」
「……うん、そう」
「でも侑季さんが私や葵さん以外に気を許すなんて珍しい、流星にも慣れていないのに」
「気に入っていただけたのなら、至極光栄です。姫君。」
「……恋夜君、変わってるわね。流星君よりも執事っぽい」
「性分ですから、ちなみに侑季さんは葵さんと同じく3年生ですか?」
「年齢はそうだけど、学年は君たちの一つ下の1年。でも、きっと恋夜君より頭いいわよ。」
「それを言いますか、はは、そうですね。よければ今度勉強を教えてください、侑季さん。」
「うん、分かった。約束」
「……侑季、あなた」
恋夜と普通に話す事ができている侑季に葵は驚きの表情を見せる。
「さて、ここでいつまで話してても仕方ありませんし、そろそろ行きましょうか、意外に広いんですよ。この町。さぁ、出発。イロハさんも早く。」
凛清に引っ張られ、全員がついていく。
イロハも、恋夜も魔法はさっぱりのおかげか、彼らが賢者の石の所有者だと気付くものはなく、今までの学校よりも溶け込み、学園生活を満喫している。
「おい、恋夜、ちょっと、」
「何ですか、」
一番後ろをついて歩く流星の指招きに従い恋夜が歩く速度を落とし、流星の小声が届く範囲にまで下がっていく
「紀伊坂さんの事なんだけどな、あんまり、こっちから話しかけるなよ。」
「話しかけるなって、いじめですか?ほら、あんなに可愛らしいじゃないですか」
歩きながら、何かが気になるのか時々こちらを見る侑季に笑顔で手を振る。
「そうじゃねぇよ。彼女体調不良って言ってるだろ、原因は、病気とかじゃなく精神的なものだ。そのせいでずっと学校も休んでいるんだ。」
「まぁ、なんとなくそんな感じはしますね。でもだからって、いい子じゃないですか」
「彼女は男性恐怖症でもある」
「そうなんですか、そうは見えませんでしたけど、」
「今はたまたまそう思えているだけだ、兎に角、それだけじゃなく、彼女は色々な精神の弱点を抱えている。突然パニック状態になった事も多々ある。それに、夜中にいつの間にか一人で出歩いて町中で保護されたり、奇行も目立つ。唯一、まともに相手が出来るのが会長だ、お前が迂闊に話しかけて悪化すると困るから、会長に任せておけ。いいな。」
「あまり納得できないけど、了解しました。そういえば薬袋会長と言えば、ブルーゲイルさんは?あれ以降お見かけしてませんけど。」
「ミスターブルーゲイルは神出鬼没。普段はこの学園の中で見かけることはない。ただピンチの時には颯爽と現れる、基本的には高い所だな、神速のブルーゲイルの異名に恥じない高速移動で、俺も何度も救ってもらった。あの装甲の宝剣は俺の箒とは別格だな」
「そうなんですね。そういえば聞こうと思ってたんですけど、宝剣って何なんですか?」
「そうか、お前ガーディアンになったばかりだから使えないのか、」
「それがなにかも知りません。」
はぁ、と蔑んだような眼で恋夜を侮蔑すると、前を見ながら説明を始める
「……宝剣っていうのは、こうやって自由に出し入れできる、魔道武器。」
流星は器用に箒を何度も出し入れして見せる。
「ガーディアンが主からもらう力の象徴だ。一般的な魔法は定型がない、それはそうだ魔法は魔力とエレメントの反応だからだ。
中には魔法陣という形でその反応を留めたり、エンチャントという形で実際の物に魔力を付与することがある。だが、こうして触れられる物質で存在できる魔法は宝剣くらいだ。」
「宝剣と言いますが箒ですよ。」
「形はその人間に最もふさわしい形になる、昔は戦う武器として顕現させるのが一般的で、剣の形をとるものが多かったからそう呼ばれているらしい。
形無き死霊を切り裂く剣、水の刃先を持つ剣、魂を刈り取る剣、魔法を切り裂く刀、魔を封じる刃。宝剣にはそういった固有の特別な力が備わっている。」
「流星さんの箒は空が飛べる。」
「違う、あれは俺の風魔法だ。この箒特有の力それは、」
流星は歩きながら箒で空中を撫でる。
「どうだ?」
「は?」
「見てわからなかったのか、それじゃ、今度は分かりやすく、」
今度は地面を掃くが何も変わらない。
「えっと、綺麗にするとか。」
「馬鹿、そんな普通の箒と一緒にするな、いいか一回目は空中の埃を一塵も残さず掃き、二回目は、ダニを含め俺が邪魔だと思うものだけを掃いたんだよ。」
「えっと、つまり、何でも掃除できると」
「馬鹿か、俺が指定するものだけだ。つまりはゴミじゃないものは掃わけなくもできるし、ウイルスなんか俺の認識できないものも、俺が有害なものを掃わきたいと思えばは分けるんだ。しかも、この箒の先にはそれらが残らない。どうだ?」
「どうだ、と言われましても、魔法も掃けて避けられるとか、風を掃いて早く飛べるとか」
「そんな事はしたことはないし、する気もない、何でもかんでも戦いに結び付けるな。
全く、どいつもこいつも。この凄さが分からないとは愚か者ばかりだな。
兎に角宝剣はそういう特別なものだ。ミスターブルーゲイルのあの装甲は、その硬度はもとより反応速度、体感時間を所有者の限界以上に高めることができる。」
武器として自分に向けた癖に、と口にしかけた言葉を飲み込み、同じ力なのにと、流星の力に同情してしまう。
「お前もガーディアンだったら普通すぐに使えるものだけどな。」
(それは使えませんよ。だってガーディアンじゃないですもん。)
「でも、まぁ、必要に迫られたらおのずと使えるようになる、主のためにそれが宝剣だ。」
必要に迫られて、その箒が現れたのはどういった経緯なのだろう。
「ほら、オスども、いつまでも二人でいちゃついてんじゃないの、さっさと降りるわよ。」
「別にいちゃついてないでしょ、何ですか、俺が他人と話したことに対して嫉妬ですか。つらいですね。モテる男は、でも勘弁してください。俺は仕事優先なんで」
「その下半身についた矮小なもの、小さいとはいえ邪魔でしょ。潰してあげようか」
「流星、最低。下品」
「ちょ、今のは俺じゃなくて、葵先輩でしょ!凛清!ちょっと、聞いて、ねぇ!」
嫌味を見事に返したつもりだったが、葵からは本気で怒られ、凛清からは本気にさた。




